ますますグローバル化し同期化するネットワーク環境において、国家が統制するコンテンツとサービス中心の経済が競争力を維持するのはかなり難しいことだ。

2022-03-23 08:49:21 | 真の解決目指して

世界を一つにしたインターネット、

「バベルの塔以降」のように分割されるのか

登録:2022-03-21 09:21 修正:2022-03-21 10:26
 
ウクライナ侵攻とグローバル・インターネット 
巨大IT企業、ロシアでのサービスを制限 
ロシアは自国ネットワークの分離をテスト 
中国、インド、イラン、ベトナム、北朝鮮など 
グローバルネットワークとは別のネットワークが増加傾向 
 
ICANN、「インターネットは中立なプラットフォーム」 
迂回路があり、統制に成功するかは「未知数」
 
 
ウィーンにある美術史美術館が所蔵するオランダの画家ピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」。インターネットの断片化は、神の怒りで共通の言語を失くし分裂と対立に向かったという旧約聖書のバベルの塔の神話を連想させる//ハンギョレ新聞社

 国境を超えるコミュニケーションの道具であるインターネットが、戦争と対立によって分割され、世界の情報通信の環境について、神話のバベルの塔の崩壊のような状況が懸念されている。

 ロシアのウクライナ侵攻が、21世紀の新冷戦と米国主導の一極体制の解体という新たな国際秩序の到来という評価とともに、インターネットに巨大な亀裂を持ち込んでいるという分析が浮上している。インターネットは、全世界の約3万2000のネットワークが結びつけられたネットワークであり、標準化された通信規約を通じて、全人類が障壁なしにコミュニケーションをとることができる技術的な基盤を提供してきた。インターネットはワールドワイドウェブになり、1990年代中盤以後、全世界を一つに結び、今日のグローバル化と情報化を可能にした技術的土台であり、実質的に実現した空間だ。

 超連結環境の情報技術時代に起きた大規模な戦争は類例のない情報戦となり、ネックワークは激しい戦闘の最前線になっている。ロシアの侵攻に対抗したグローバルIT企業による相次ぐサービスの中止と制限、ロシアの独自化政策によって、単一なネットワークを特徴とするグローバル・インターネットが分割され断片化している。

 
 
ロシアのソーシャルメディアの第1位企業はフェイスブックと機能が似ているフコンタクテだ。創業者のパーヴェル・ドゥーロフ氏はテレグラムの創業者でもある=フコンタクテ提供//ハンギョレ新聞社

■分割されるグローバル・インターネット

 外信によると、先月24日のロシアの侵攻以降、フェイスブックとインスタグラムを運営するメタ(Meta)は、ロシアの宣伝とフェイクニュースを広めるために利用されていると指摘されたロシアの国営放送局「RT」と通信社「スプートニク」のアクセスを遮断した。グーグル、アップル、ネットフリックスなども、ロシアで各種サービスの中断と制限に乗りだした。ロシア政府も、自国民のフェイスブック、ツイッター、インスタグラムへのアクセス遮断などで対抗した。ロシアは2019年末、自国のインターネット網をグローバル・インターネットから分離し、国内ネットワーク(ルネット)で運営するインターネット主権の実験を成功裏に終えたと発表している。ロシアでは、すでに検索とソーシャルメディアの分野では、自国のサービスであるヤンデックスとフコンタクテが圧倒的な1位だ。英国サリー大学のコンピューター工学者のアラン・ウッドワード氏は、最近のBBCのインタビューで「ロシアのインターネット主権の実験当時は、その必要性を理解する人は少なかったが、ウクライナ侵攻と関連させてみれば十分理解できる」と述べた。

 ロシア固有の状況でもない。中国は2003年から国家レベルでインターネットを検閲するグレート・ファイアウォール(防火長城)を構築し、サービスとコンテンツを遮断している。中国と対立中のインドは、TikTokや微信(WeChat)、微博(ウェイボー)などの中国製アプリを禁止した。イランは国営通信社がネットワークを流れるすべての情報を統制し、制限的に許容している。 ベトナム、リビア、モロッコなども、中国と類似の検閲システムを導入している。北朝鮮は初めから国家レベルでの内部ネットワークを構築運用し、外国との通信を徹底的に遮断している。2011年のアラブの春など、ソーシャルメディアが活用された民主化デモを経験した独裁国家の一貫した選択だ。

 
 
ロシアでヤンデックスは検索や電子商取引、電子メールなどポータルが提供する様々なサービスを提供し、ロシア国内市場を支配している=ヤンデックス提供//ハンギョレ新聞社

■「断片化はインターネットの終末」

 インターネットは標準化された通信規約による開放と共有の原則を通じて、全世界を結ぶ超国境的なネットワークであり、開発段階から、核戦争などの通信網が麻痺した状況でも迂回路を探して通信が行われるよう設計された超連結手段だ。しかし、最近になり、地政学的な対立と一部の国の政策は、インターネットの基本属性に反する断片化現象(スプリンターネット)をあおり立てている。

 インターネット・ガバナンス国際委員会は、2016年に報告書を発行し、「断片化されたインターネット」が現実化する場合、革新や成長、コミュニケーションを阻害して信頼度を落とし、人類は高い代償を払うことになるはずだと警告している。当時、ハーバード大学の国際政治学者のジョセフ・ナイ氏はこれに言及し、インターネットの断片化はインターネットの終末を意味すると懸念した。エリック・シュミット元グーグル会長も「2028年には、インターネットは米国中心と中国中心に割れているだろう」と2018年のセミナーで発表したことがある。

 インターネットの技術構造上、国家単位のネットワークが相互に連結する地点(ノード)とアドレス割当てに対する統制力を利用すれば、統制は可能だ。ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相が、国際インターネットアドレス管理機構(ICANN)にロシアに対する制裁を要請したのもそのような背景からだ。しかし、ICANNのゲラン・マルビー会長は要請を拒否し、「ICANNはインターネットが十分に動作するよう構築された中立的なプラットフォームであり、インターネットを中断させる調停の役割を果たすためのものではない」と主張した。インターネット協会(ISOC)のアンドリュー・サリバン会長も「インターネットを分裂させようとする試みには、全世界が抵抗しなければならず、開放的な一つのグローバル・インターネットを守らなければならない」と強調した。

 インターネット拡大の初期には、物理的な国境のないサイバー空間が、国家単位の各種制約と慣行を飛びこえる脱領土化体制を作りだすはずだという期待を抱かせたが、インターネットが発達するにつれて、国家レベルの介入と統制が拡大する正反対の現実が広がっている状況だ。コロンビア大学のティム・ウー法学教授は、著書『だれがインターネットを支配するのか:ボーダレスな世界の幻想』(Who Controls the Internet?: Illusion df a Borderless World)で、サイバー空間に対する現実世界の影響力の増大にともない、各国政府がインターネットを統治の範囲内に入れようとする試みが増えたためだと説明した。

 インターネットの影響力の増大を懸念した国家権力の介入が成功するかどうかは未知数だ。ロシアは、オンライン統制を強化するため、何年もの間、暗号化メッセージアプリのテレグラムへのアクセスを妨害してきたが、成功しなかった。また、ますますグローバル化し同期化するネットワーク環境において、国家が統制するコンテンツとサービス中心の経済が競争力を維持するのはかなり難しいことだ。

ク・ボングォン|人とデジタル研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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