共に民主党と国民の力の政策に大きな差はない。韓米同盟と自由市場経済を根幹とする安保観と経済観にもあまり違いはない。しかも検察改革、非正規労働者の正規労働者化、不動産価格・・

2023-10-19 09:40:42 | 尹大統領は、おかしいね!
 

[コラム]極右化する尹大統領の「裏切り者コンプレックス」

登録:2023-10-18 08:11 修正:2023-10-18 11:15

 

イ・ジェソン|論説委員
 

尹錫悦大統領とキム・ゴンヒ女史が13日、木浦総合競技場で行われた第104回全国体育大会の開会式で言葉を交わしている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、かつて大統領府の特別監察班員を務めたキム・テウ氏を特別赦免した時、キム・テウ氏が与党「国民の力」のソウル江西区長候補に公認されると断言した。その唯一の理由は尹大統領の「裏切り者コンプレックス」だ。

 期数破壊人事を通じてソウル中央地検長や検察総長に任命され、大統領府を直に標的とした捜査を露骨に行ったにもかかわらず、「文在寅(ムン・ジェイン)政権の検察総長」だと言って最後までかばってくれた文在寅前大統領を裏切ったという自意識が、尹大統領の魂の深淵には隠されている。尹大統領は、自らが身を置いていた前政権と戦うという似たような境遇にあるキム・テウに同志的な絆を感じ、彼が区長に復帰するのは当然だと考えたのだろう。でなければ、最高裁で有罪判決を受けてから3カ月もたっていない人物を無理に赦免する必要はなかっただろう。

 尹大統領の極右的な動きも裏切り者コンプレックスで説明できる。裏切り者でないことを納得させるためには、国のための選択だったことを証明しなければならず、文在寅政権との差別化によって実績を示さなければならない。

 しかし、共に民主党と国民の力の政策に大きな差はない。韓米同盟と自由市場経済を根幹とする安保観と経済観にもあまり違いはない。しかも検察改革、非正規労働者の正規労働者化、不動産価格の安定化、所得主導成長、朝米交渉を通じた終戦宣言など、文在寅政権が推進した一連の改革が反発に直面し、水泡に帰したことを受け、民主党は前回の大統領選挙で事実上改革をあきらめた状態だった。両党の違いをあえてあげるなら、検察を私兵のように使える権力を持っているか否かしかないと言えるほどだ。

 海辺にアイスクリーム屋が左端と右端に2軒だけある時、2つの店は客を引き付けるために必然的に真ん中に寄っていくという「民主主義経済理論」(米国の経済学者アンソニー・ダウンズが1957年に主張した合理的選択理論)の整合性を立証でもするかのように、民主党と国民の力は絶えず真ん中へと収れんしてきていた。

 このような中、文在寅政権との差別化が切実に求められていた尹大統領は、右端へと疾走する道を選んだ(アンソニー・ダウンズのアイスクリーム屋理論によれば、この戦略は失敗せざるを得ない)。政治や社会はもとより、経済分野も同様だ。コロナという非常事態に直面し、不可避的に(他国に比べればはるかに小規模に)膨らんだ財政赤字の深刻さを高め、気候変動時代の世界的すう勢である環境親和的な再生可能エネルギーを悪魔化した。過度な減税を敢行し、歴史級な税収不足にさらされると、まず減らしたのは研究開発(R&D)をはじめとする未来への投資だった。人口減少の津波が経済の縮小へとつながる前に、政府が先んじて財政を縮小して経済の縮小を早めている。政権の正当性を示すために選んだ差別化政策が、国の未来を危うくする状況に至っている。理念を前面に掲げれば実用は遠ざかる。

 大統領選挙の過程で、尹大統領は「経済は良かった」と評価する全斗煥(チョン・ドゥファン)時代に触れつつ、経済は専門家に任せる考えだと述べ、経済官僚を大量に登用した。全斗煥政権が「軍人+経済官僚」政権だったとすれば、尹錫悦政権は「検察+経済官僚」政権だ。経済の専門家は経済官僚しかいないという認識は、尹大統領の後進性を示す証拠だ。尹大統領のエリート主義は、開発独裁時代の「考試パス」人材レベルで停滞している。

 しかも尹錫悦は全斗煥ではない。知らないことに対して謙虚だった全斗煥とは異なり、一を聞いて十を知ると考えている尹大統領は、経済政策のガイドラインも自らが提示する。参謀たちは、昨年9月の米国での卑語発言問題のように、大統領の発言の収拾に忙しい。独裁者にも直言できた剛直な官僚はもういない。今や学生時代にいくら勉強ができても追いつけないほど経済は複雑になっており、発展する技術は後になって理解するのも難しい。かつて魔法の知恵袋だった官僚たちのキャビネットは、賞味期限が切れた書類であふれているに過ぎない。李明博(イ・ミョンバク)の資源外交、朴槿恵(パク・クネ)の創造経済のような議題も尹錫悦政権にはない。

 尹大統領の無能さは、自分は有能だという本人の錯覚から来ている。粗暴な性格と権威主義は異なる意見の存在を根本から遮断しており、検察で体得した無謬(むびゅう)主義は自浄機能まで去勢している。江西区長補欠選挙での惨敗に対する大統領と与党の見慣れた対応がすべてを物語っている。

 司法の過剰と政治の欠乏が生んだ後進国型の「官僚連合政権」の運命はすでに定まっている。経済までもが政権とともに押し流されていくのではないか。それだけが心配だ。

 
//ハンギョレ新聞社

イ・ジェソン|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )


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