レヴィ=ストロース氏は未開社会についてこのように語る。
未開社会はしきたりや信仰に支えられながら自然資源を保全する。人口増加も抑制され、低コストの社会が実現されている。そのような社会は「ぜんまい仕掛けの機械」に喩えられる。最初に機械に与えたエネルギーを用いて作動し、その機械が摩擦も熱も生じないように作られている。理論的には果てしなく作動する。
しかし、この社会は初期状況を保持しようとする傾向を持っているため、外部から見ると、歴史も進まない社会のように見えてしまう。
一方、近代社会は大量のエネルギーを消費する「熱力学的機械」である。大量の仕事をこなし、大量のエネルギーを消費し、進歩することが運命づけられている。
現代人のこころの問題を考えるとき、未開人がどのような心の動きをしていたかを想像してみることは問題解決にとって有効な手段だと思う。
未開社会は必ずしも劣った社会ではない。力(エネルギー)の闘争には敗れてしまったが、未だにすぐれた社会システムである(省エネ社会として)。もし石油が無くなった未来を想像すればよい。
それどころか、個人個人にとっては、心のトラブルが生じにくいすぐれた社会だともいえる。学ぶべき点は多い。