どんな分野でもいいからちょっと物事を突っ込んでいくと、たまにびっくりしてしまう事がある。
そういうことだったんだという純粋な「驚き」である。マンガなら口をあんぐり開けているところを想像してもらいたい。あれである。
たとえば、最近驚いたことは熱力学についてである。
熱力学第二法則は熱は高温の物質から低温の物質に移動し、それが元に戻ることはないという法則である。具体的には、熱い湯は放置しておけば次第に冷めて室内の温度と等しくなり、圧縮された気体は解き放たれると周囲に存在する気体と混ざりあい均一化する、などである。エントロピー増大の法則とも関係が深い。
この法則は、閉鎖系の世界では有効だが開放系の世界では成り立たたない。私は地球は閉鎖系だと思っていた。しかし、開放系に近いということである。
エネルギー問題について、地球を閉鎖系と考えれば、これから先の世界のエネルギーはピークオイルにより絶望的状況である。しかし開放系と考えれば必ずしも絶望する必要はない。
今、プリコジンの「混純からの秩序」を読んでいる。
プリコジンの物理化学は、従来の閉鎖系ではなく、エネルギーの出入りがある開放定常状態系を扱っている。
宇宙のある部分は機械のように動くであろうが、それは閉じた系の話しである。
この閉じた系は、実験室のようなほんの小さな部分を占めるにすぎない。
私たちの興味のある現象の大部分は開いた系である。そこでは、環境との間でエネルギーや物質さらに情報の交換が行われている。
私たちは何かを予測するとき、実験室での出来事を機械的にあてはめ、その結果を元に次の事象を予測する。しかし、開いた系でのその予測は失敗する運命にある。実在のほとんどは、規則的で安定で平衡しているのではなく、変化し無秩序状態を含むからである。
プリコジンの言葉を使えば、あらゆる系はたえず「ゆらいでいる」部分系を含んでいる。その「ゆらぎ」が既存の組織を粉砕してしまうことがある。それゆえ、将来の予測は困難になる。
ちょっと難しすぎてわからないとこと多いが、何やら脳みそが刺激される本である。
ただ、ここで私が言いたいことは、世の中の仕組みはまだまだよくわかっておらず、簡単に結論を出してはいけないということである。決めつけは絶望の始まりだということである。
地球を閉鎖系と決めて、エネルギー問題を考えれば、人間の活動は衰え停止し絶望に陥ってしまう。しかし、何が起こるかわからない開放系と考えれば色々と希望が見えてくる。
私たちは絶望すると思考が停止し活動を止めてしまう。未来はないと勝手に絶望し死に至ること、それが自殺である。
しかし、絶望するのはちょっと早い。その考え方を拒否すべきである。ちょっと突っ込んで物事をみてみると、決めつけていた世界はガラリと変わり、全然ちがう景色が見えてくる。
世界は、私たちをいつも驚かせてくれる。
私たちの方でその準備があればだが。