引き続きシャーマニズムについてである。
まず、シャーマニズムを語るには、その中心となるトランス状態について考えなくてはならない。シャーマンは、トランス状態になって霊と交信する。目がうつろになり、頭をぐるぐる回したり、変なうねり声を出したりする、あのおかしな状態である。
このトランス状態は、変性意識の一種である。強い変性意識状態といったほうがいいだろうか。
そもそも、この変性意識とは何なのだろうか。変性意識については前にブログで書いたことがある。
ただ、このブログとは違う視点でかつ深く考えてみたい。
変性意識状態とは、現実の日常世界ではなく、頭の中の仮想世界に意識が集中している状態をいう。
例えば、面白い映画を観ているときは、映画の仮想世界の方に意識が集中しているから、変性意識状態にあるといえる。
シャーマンは、このトランス状態になる技術だともいえる。マジック・マッシュルームや大麻、LSDなどの麻薬を使えば、簡単にトランス状態に陥ることができる。
ただ、そんなに難しく考えなくてもいい。
私たちは当たり前のように、昨日行った場所やこれから行くところ、また過去の出来事や将来の自分などを、頭のなかで想像している。その想像の世界にいる状態が変性意識状態なのである。
この仮想世界をうまく使いこなせなければ、普通の日常生活を送れない。たとえば「昨日貸したお金返して」といって、「昨日のことはわかりません」じゃ、誰からも相手にされない。このように、私たちは、現実世界と仮想世界を行き来しながら、日常生活を送っているのである。
この仮想世界に対する想像力は、人間の脳が、広い空間と長い時間を把握できるようになったときから生まれたのである。
例えば、私はアフリカに行ったことはないが、アフリカの映像や本からその場所が想像できる。また、頭のなかで江戸時代に行くこともできるし、将来日本で行われるオリンピックについても想像できる。
このような仮想空間と過去未来の時間の軸を把握できるからこそ、高度の文明が発達したのである。
アルツハイマーになった人は、現実世界と仮想世界の境界線がわからなくなり、そこを行き来ができなくなった人ともいえる。
この世界に対する想像が脳内のどこで起こるのか、だんだんと明らかになってきている。
ただ変性意識といっても広い概念であるから、すべてについては、まだ正確には分かっていない。
だから、細かいことは、これからの脳科学に委ねるべきである。しかし、変性意識が私たちに与える影響について考えることは重要だろう。
そこで、その機能について考えてみたい。その機能は、大きく3つある。
1つは、この変性意識は共有できるということである。
2つは、体の恒常性維持機能(ホメオスタシス)と密接に関係しているということである。
3つは、変性意識状態では自己保存本能が低下するということである。
この3つについては、後でくわしく説明する。