フリードリヒの日記

日常の出来事を、やさしい気持ちで書いていきたい

ある名もない野良猫の話

2013年09月13日 18時03分55秒 | 日々の出来事・雑記

 昼休みに野良猫に餌をあげている。河川沿いにある鉄鋼関係の工場にたむろしている猫である。もちろん、工場の人達の許可を得て餌をあげている。工場の人達も随分その猫たちをかわいがっている。
 猫は三匹いて、写真はそのうちの二匹である。

 
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 この猫は、最近になってやっと触らせてくれるようになった。ちょっと警戒心が強い。とりあえず、猫一と呼ぼう。

 

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 こっちの猫ちゃんは、私にかなり慣れていて、頭を撫でると喜ぶ。こっちを、猫二と呼ぼう。

 
 写真はないが、もう一匹、黒い猫がいた。今日はこの猫の話である。うまく話せるか分からないが、頑張ってみる。
 そもそも、この猫たちは生まれてまだ一年も経っていない子猫みたいなものなのだが、写真に写っていない黒い猫には子供がいたようだ。そのため、警戒心が強く、どん欲だった。
 私に慣れている猫二は、好き嫌いが激しく、肉とか魚とかわかりやすいものしか口にしない。フライみたいなのだと、なんじゃこりゃ、みたいな顔をして、匂いだけ嗅いで食べない。たぶん、人懐っこいから皆に可愛がられ、美味しいものをたくさん食べているのだろう。贅沢な野郎である。しかし、かわいいから一番上等な肉みたいなものを、ついついあげてしまう。わがままだけど、いつも得する可愛い子ちゃんだ。
 これに対して、黒い猫は揚げ物だろうがなんだろうが、なんでもバクバク食べる。見ていて気持ちがいい。一回、人参の煮たやつを投げてみたら、それも食べた。たぶん、子供に乳をあげなくてはならないから、栄養を付けなくてはいけないのだろう。
 そして、この黒い猫は遠くから私のことをよく見ていて、私がやってくるとどの猫よりも速く、元気いっぱいに駆け寄ってくる。
 しかし、絶対に触らせない。というか、触る気もあまりしない。なぜなら、前に手を差し出したら、強烈な猫パンチをくらい、そのひっかきキズで、手から血がでるくらいの怪我を負ってしまったからである。危なくて仕方がない。
 だけど、一生懸命駆け寄ってくる姿が健気なので、ついつい多めに餌をあげてしまう。ただし、あまり猫が食べそうもない外道っぽい餌だけど。
 猫一は、ちょっと警戒心が強いのだけど、私が来るとゴロンと寝転がり、明らかに甘えるポーズをとる。いわゆるツンデレである。このツンデレちゃんも、親密になったら随分かわいい猫になるだろう。

 三、四日前にこの黒い猫が、車に轢かれて死んでしまった。
 道に黒い猫がぺちゃんこになって死んでいたので、もしかしたらあの黒い猫なのではないかと心配していた。案の定、いつもいの一番に飛んでくる黒い猫の姿を見なくなった。
 特別、この黒い猫が好きなわけではなかった。だから、魚とか肉とか美味しい餌じゃなくて、面白がって変な餌を与えたりしていた。
 だけど、他の猫たちと違って、私のことをよく覚えてくれていた。本当に文字通り、遠くのほうで首を長く伸ばして私の来るのを待っていた。
 ここ何日か餌をあげにいくと、そうだ黒い猫はもういないんだ、と思ってしまう。そのたびに餌欲しさに一生懸命走ってくる姿が目に浮かぶ。もうすこし肉とか魚とか美味しい餌をあげてればよかったなぁと思う。
 名もなく生まれ、名もなく死んでいく。誰もこの猫のことなんか気にかけない。
 だから、せめて文章にして、この黒い猫がいたことを、残してあげようと思ったのだ。
 俺はお前のことを覚えてるよと。

 今日、黒い猫が轢かれて死んでいたことを、工場の人たちに話した。最近見なくなったと思ったら、そういうことかと納得していた。
 ぺちゃんこになって、毛皮だけになってしまった猫が、道の端にまだ残されていた。工場の人達は、それを拾ってきて埋めてあげるといった。
 みんな自分の心のなかにある愛情を、どうにか処理しないと前に進めないのだ。そういうとき、人間って悪く無いなぁと思う。

コメント
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