晴耕雨読とか

本読んだり、いきものを見たり。でも、ほんとうは、ずっと仕事してます。

最近の読書 2012年9月~10月

2012年10月10日 | 
総ページが700ページ近い大著、
ポール・セローの『ダーク・スター・サファリ』(英治出版)、読了。



すばらしい本でした。今年ナンバー1かも。
アフリカをバスで縦断する紀行…というとふつうの旅本だが、
この本はずいぶんと趣がちがう。

セローは60年代にマラウイとウガンダで教師をした経歴をもち、
30年以上ぶりに旅をしながらそれぞれの地を再訪する。

当時より悪くなっている国々、変わらない田舎の良さ。
先進国のNGOの支援を批判しながら、悲しみと怒りが交差しながらも、
変わらぬアフリカの良さをかみしめながら旅が続く。

大人の紀行はすばらしい。
旅は若者だけのものじゃない…そんなように感じるところもいいのかな。




『物の怪』(鳥飼否宇/講談社)。
『昆虫探偵』に引き続き生物系ミステリ作家もの。
河童に天狗に鬼を…今風にというか京極風にと言うか、生物学的なミステリに仕立てたもの。
まぁ、おもしろいのですが、ミステリを書こうと思って書いているところに、感動はないかな。




『エストニア紀行』(梨木香歩/新潮社)。
ファンなんで、買いました。『考える人』でもちょっと読んだし。
まぁ、好きかな、この人のエッセイは。

ただ、なぜエストニアなのかはよくわからない。
本人の裏テーマとしては「コウノトリを見る」というのだが、
旅そのものは「仕事の旅」ということになっていて、
田舎をいろいろまわるんだけど、妙に慌ただしくて、目的がはっきりしない…。
旅の目的をはっきりさせる必要はないし、その慌ただしさが、
エストニアの田舎の良さを引き立たせているけれど、ぼんやりとした違和感を感じる。

短い旅を1冊にまとめた感もちょっとあって、
しかも、震災前の取材を震災後に出版するということが
少なからず影響をしているのだと思うけど、
ラストのあたりが、ちょっと、こう…話が大きくと言うか、
ぼんやりなってしまったような気も…。

いや、好きなんだけどね、この人の自然の話は。
鳥とか詳しいし、自然との距離感がいいし。
エストニアにも行ってみたくなったし。。。

お次。

今日、帰りの電車の中でノンフィクション書評サイトHONZで知って、
駅を降りて、本屋に直行して即買い。



『弱くても勝てます』(高橋秀実/新潮社)。
新潮社がすごいのか、この人の本がすごいのか、
前著『ご先祖様はどちら様』も生田の小さなチェーン店系本屋で購入。
新刊とは言え、よくこんな地味な本(おもしろいけど)置いてるよな…。

ま、この人の本も好きですね。妙な空気感というか、モノの考え方がばかばかしくて。
超進学校である開成高校野球部のお話。
今回も妙。この人が書くから妙なのか、妙なモノを取材するから妙なのか?
いっき読みの予感。

ちょっと乱読気味の今日この頃。
ま、秋ですから。

調べて分かるってすばらしい。

2012年09月25日 | 
久しぶりにジュンク堂に行ったら、こんなものを買ってしまいました。


『虫の卵ハンドブック』(鈴木知之著/文一総合出版)。

で、ちょっと気になっていた卵について調べてみました。

それはこれ。


撮影は2007年の5月3日。井の頭動物園内のケヤキの樹皮で見つけたものです。

2009年2月にどういうわけかこのブログで「オレンジ色」の生きものを続けて掲載していたことがあって、
そのときに、デジカメの画像溜まりから引っ張り出した写真です。
自分でもよくそんなに前のことを…と思ったのですが、
「これだけ特徴が明確なんだから何か分かるはず…」と頭の片隅に残っていたのです。

はい、載ってました! ナミテントウの卵のようです。
たとえそれがどんなに普通種でもうれしいものです。

ここ何年かのモヤモヤ(ちょっとおおげさか)がすっきりしました! 
これが分かっただけでも、この本を買った価値がありました。

最近の読書 2012年9月

2012年09月19日 | 


『ダーク・スター・サファリ』(ポール・セロー著/英治出版)。
700ページ近い大著。ベッド本として、ゆっくり読んでます。今、半分ぐらいかな。
旅は、エジプトからウガンダが終わるあたり。
なんで日本にはこういう紀行本がないのかな。
教養と経験をもった大人が無計画(?)に近い旅をする。いい本です。




話題なんで、なんとなく買っちゃいました。
『屍者の帝国』(伊藤計劃+円城塔/河出書房新社)。
ま、読んじゃいました。SFなんですね。普段あまり読まないたぐいなんで、なんといったらいいか。。。
「とりあえず最後まで読んだ」ということですね。
みんながうっすら知ってる名前をちりばめる戦略か。
別にここらで終わってもいいじゃん…というところが何カ所もあったような。
複数回の映画化を狙っているのか?




『宗教を生み出す本能 進化論からみたヒトと宗教』(ニコラス・ウェイド/NTT出版)。
第1章「宗教の本質」でストップ。
「我が意を得たり」というか、正直、「うん、そうだよね。知ってた」という感じ。
著者自身も言っているけど、このテーマはたしかに、なかなかはっきり言えない中身ですかね。
それ以外あり得ないのに。
どこかでまた読みはじめるかな。。。

売ってない本。

2012年09月08日 | 



『私的標本 捕まえて食べる話』(玉置豊/自費出版)。
いつもデイリーポータルZで愛読している玉置さんの自費出版本。

玉置さんのサイトはこちら。おそらく今後、購入についても詳細が分かると思います。

それにしても捕って食べるってすばらしい。

アナジャコ、ホタルイカ、ウチダザリガニとかを捕って食べます。
この中に出てくるギンポを釣って、天ぷらにして食べるというのをしたいな。
『もやしもん』にでてくるエイの発酵食品「ホンオフェ」とかは強烈。ぜったいやらない。

この人のいい加減さというか、イージーさが好きです。
事前にあんまり調べなくて、右往左往して最初に1匹をゲットするまでがたまりません。
感覚的によく分かります。

アナジャコとか、食べないけどダンゴウオとかコテングコウモリとか、わたしもだいたいそんな感じだし。

一方、似て非なるものというか本物。



『復刻版 横井庄一のサバイバル極意書』(ビーパル10月号付録)。

いやあ、昔連載でも読んだけど、今読んでもすごいですね。
28年間ジャングルですもんね。たしかに今、付録にするのにも意味がありそう。

コテングコウモリが出てきた!(1日後の追記アリ)

2012年08月15日 | 
知人に「君向けのおバカな本があるよ」と推薦されたのがこれ。



『昆虫探偵』(鳥飼否宇/光文社文庫)。

昆虫の世界の探偵が活躍するミステリー(?)。主人公はクマバチの「シロコパκ(カッパ)」とある日人間がヤマトゴキブリになった「ペリプラ葉古(はぶる)」。この2匹が昆虫界の難事件を解決!

はい?? Xylocopa と Periplanetaですか? クマバチ属とゴキブリ属ということですね。

第一話は、蝶による蛾の殺蛾事件(「さつじんじけん」と読ませます)。が、そこにはなんと愛しのコテングコウモリも出演!
まぁ、若干コテングコウモリを樹洞性というところが気にならなくもないですね。。。
樹洞性というよりは森林性というか、必ずしもやつらのねぐらは樹洞だけじゃないしね。

生態的にもそれなりな描写と思われ、よくもまぁ、こんなバカげた本を。なかなかおもしろいです。

著者プロフィールを見ると、九州大学理学部生物学科卒業で奄美大島在住…。ああ、そういうことですね。

敬意を表して、今日入手したコウモリ柄のブックカバーでくるみました。




★1日後の追記

これは…各章は既存ミステリー作品のオマージュになっているんですね。タイトルも。わたしはミステリーはほとんど読まないのでプロットそのものがちゃんとオマージュになっているのかはわかりませんが。

あ、書き下ろしの「ジョロウグモの拘(こだわり)」は京極の『絡新婦の理(じょろうぐものことわり)』だな。これは読んだので、ちょっとはわかるかな。

最近の漫画 2012年8月

2012年08月12日 | 
最近は『海獣の子供』(五十嵐大介/小学館)を読みました。



途中までは1日1冊ずつ買ってきて読んでました。最後は面倒になって4、5巻をいっき買い。

海ものファンタジーというと、軽めに聞こえますが、本作はちょっと重めで怖い感じです。

人類はどこからきたか…というのは今度公開の映画「プロメテウス」ですが(絶対見に行く)、
『海獣の子供』は、星はどこで生まれるか…という感じです。

よくわかりませんが、どこかの南の島方面の神話をモチーフにしているのでしょうか?

なかなかおもしろかったです。

最近の読書 2012年7月

2012年07月25日 | 
最近のメインはこれ。



『雑食動物のジレンマ 上』(マイケル・ポーラン著/東京経済新聞社)。

今更感あるような気がするのは、これまで何度も何度も本屋で買おうかと思って、「まぁ、いいか…」と買わなかったからか。

そもそもタイトルに引かれて手に取るのだが、第1章が「トウモロコシ」となっていて、なんじゃそりゃ!と思ったから。

つまり、タイトル的には、人類の進化的、生態的有り様を雑食動物という切り口で語ると思ったのですが、それがいきなり「トウモロコシ」じゃあな…と思ったわけです。

でも、まぁ、読むものがなくて買ったわけですが、これはこれでかなりおもしろい感じです。

トウモロコシということで、アメリカ人によるアメリカ人の食べ物の話かよ!と思ったわけですが、現代の日本の食卓にどんだけトウモロコシ由来の食べ物、食品加工物、添加物があるか…ということが改めて認識させられます。

おもしろいなあ…と思ったのは、本来、草食性である牛にトウモロコシ由来の飼料を与えているわけですが、そうすると反芻の必要がなくて、それが牛の病気の元になっているというあたり。

反芻動物なのに、反芻をしない恐ろしさ。

それが、アメリカの食品会社というか、農政というか、穀物メジャーというか、そういうものの都合にあわせるために、生きものが本来の生態から変えられていくという恐ろしさ。それを人間が食う恐ろしさ。いや、そもそも人間そのものが変えられてる恐ろしさ。

企業という怪物が闊歩しています。まだ上巻の半分ぐらいですが、なかなか、なかなか…。







最近の読書 2012年6月 食わず嫌い編

2012年06月27日 | 
司馬遼太郎は本当に興味がない。興味がないと言うよりは、やや嫌い。1冊も読んだことないのに嫌いとはどういうことか。

むかーし、おもしろかったころの週刊朝日にいつも出ていて、歴史のことで、なんかこう…おまえ見たんか!?という書き方がしてあったことがあって。小説なのかエッセイなのかはっきりせい! みたいな。よく知らないけど。

あと、心酔する人が多過ぎなのもなんかなぁ(天の邪鬼なんで)。一時、おやじ連中のあいだで、好きな作家にこの名前を出しておけばとりあえず知的みたいな感じがなかったですか? 

まぁ、そもそも歴史にまったく興味がないから、シバリョーにも興味がないのは当然かな。

が、対馬に行ったら読まざるを得ません。同行した人からも強く推薦されたし。でも、地元の人は、この本というかシバリョーにはいろいろ不満もあるようで、そんなことを聞くとなおさらヤナ感じ…。



『街道をゆく13 壱岐・対馬の道』(司馬遼太郎/朝日文庫)。

さて、「食わず嫌い」は解消されるのか、食ったけどやっぱり嫌いなのか??? 

ま、読んでますよ。まぁ、ホントにどんだけ文献調べているんだ…と思いますよ。確かに。めんどくさいところは適当に飛ばしちゃうけど。

太占(ふとまに)というシカの肩胛骨を焼く占いの話が出てきて、おおっ!これはこの前読んでおもしろかった『オオカミの護符』に出てくるやつじゃないか!!

対馬が発祥なんだ。。。むむ、シンクロするとちょっとおもしろいかな。

お次の「食わず嫌い」はこれ。



『告白』(湊かなえ/双葉文庫)。

同僚が、本も映画もすごかったですよ。。。というので買ってみました。

うーむ、さわやかな梅雨の晴れ間の朝に読む本じゃないね。確かにすごい…という評価は間違ってはいないかな。好きかどうかは別だけど。

最近の読書 2012年6月

2012年06月23日 | 
『f植物園の巣穴』(梨木香歩/朝日文庫)。



新聞広告を見て、なんか見たことあるような感じだけれど、本屋へ行って、ぱらっと中を見て、うーん、読んだことないよな~と思ったのです。

妻に見せたら「それ、わたしが図書館で借りてきて、途中でおもしろくなくて読まなかったやつ…」と。

たしかに、読み始めるとなんとなく記憶にあるな。今回は、買っちゃったし、つらつらと読み進める。まぁ、奇妙な話。わるくはないな。




久しぶりのベトナム戦争本。

『戦争×文学 ベトナム戦争』(開高健ほか/集英社)。

このシリーズの刊行が始まったときから、ベトナム戦争の巻がでるのをずっと待っていました。

わたしは、なぜかベトナム戦争本フリーク。理由は謎。

けっこういろいろ読んできたと思うけれど、この本には読んだことのない短編がいろいろ入っているみたい。

寝る前に読んでいるのですが、毎晩10分ぐらいでダウン……。


最近の読書 2012年5月

2012年05月16日 | 


『極北』(マーセル・セロー著/村上春樹訳/中央公論新社)。
核と温暖化と炭疽菌? 地球文明の終末、極北の生活。まぁ、おもしろかったかな。そういう結末かあ…。



『流星の絆』(東野圭吾著/講談社文庫)。
対馬へ行くときに何にも読むものがなくて羽田空港の売店で買った。対馬では、結局1ページも読まなかった。
帰ってから比較的いっき読み。まぁ、暇つぶしで、可もなく不可もなく。でも、いっきに読んじゃうんだよね。



『オオカミの護符』(小倉美惠子著/新潮社)。
これは今日買ってきた。んー、これはおもしろいかも!うちの近所でもある川崎市の多摩地区発のお話。昭和30年代のまさに田園地帯であった多摩丘陵の生活と宗教、、、というか信仰か。売れてるだけあるかな。

最近の読書 2012年4月

2012年04月11日 | 
4月の頭に買って読み始めたのですが、いっこうに終わりません。

『免疫の反逆 自己免疫疾患はなぜ急増しているか』(ドナ・ジャクソン・ナカザワ著/ダイヤモンド社)。



構成的にもやや難があるのですが、話がつらいというかなんというか読み進めません。自分の免疫系が自分のカラダを攻撃する「自己免疫疾患」の話。農薬や重金属やワクチン、ウィルスなどが原因みたいな話…。先日なくなった安岡力也さんがギランバレー症候群ということで、ああ、自己免疫疾患なんだと、再び読み始めたり。

なんか、先日読んでなかなかおもしろかった『ハチはなぜ大量死したか』の人間版のような感じ。。。



人類をとりまくあらゆるものがダメみたいな話で、気が滅入る。。。

そうこうしているうちにほかの本に逃げる。



『飼い喰い 三匹の豚とわたし』(内澤旬子/岩波書店)。

ああ、これはおもしろい。2日で読了。名著の誉れ高い『世界屠畜紀行』の内澤旬子さんが、今度は自分で3匹の豚を飼って、食べる話。

いや~、すごい人だ。同い年だ…。実際は意外と上記2冊に関係するような、今の養豚の現実みたいな話も出てくるけれど、否定せず、糾弾せず、淡々と軽やかに受け止めている感じで好印象(逃げている、あるいは鈍感とも言えなくはないか…。わざとかも)。豚の話だけど、人の話だね。いい本だった。

わたしの中では、これまで同学年のエッセイストの酒井順子さんが「同い年で、ぜひ一度会ってみたいけど、でもでも遠くから見るだけでいい」という女性(なんじゃそりゃ?)なのですが、と新たにこの内澤旬子さんもそうなりました。

『飼い喰い』のなかに「秀」(豚の名前)の頭蓋骨といっしょに撮影されたポートレートがあるのですが、お美しい…。酒井順子さんにもちょっと似てないか?

『世界屠畜紀行』は誉れ高すぎて敬遠していたのですが、今日文庫を即買い。。。




『お父やんとオジさん』

2012年03月25日 | 
文庫が出ていたので買いました。





『お父やんとオジさん 上・下』(伊集院静/講談社文庫)。

伊集院静の幼年期から青年期をベースにした『海峡』三部作が好きで、これはその続編というか、アナザーストーリーということでした。

いやー、期せずして朝鮮半島の歴史を学びました。『海峡』では、背景というか、うっすらとしたベースとしての“在日”でしたが、今回はガチンコでしたね。

まぁ、おもしろかったですね。いっきに2冊読みました。でも、『海峡』のほうが好きかな。

雑木林で本を読む

2012年03月20日 | 
天気のよい休日。

あっ、山に行けるかもと思ったのは昨晩の11時過ぎで、丹沢も上はグチャグチャの雪だし、下は花粉地獄だしと、ぐずぐずとして結局山には行かず。

午前中は近所の雑木林で、椅子と本、お菓子と飲み物を持ち込んで読書と決めた。



10時から2時間ぐらい。読んだ本は開高健賞を獲った『日本を捨てた男たち』(集英社/水谷竹秀著)。フィリピンの「困窮邦人」のルポルタージュだ。



昨晩から読み始めて、昼には読了。まぁ、そうだね…。想像していたとおりの本で、その意味では期待通りというか、期待はずれというか。。。



ウグイスが鳴き、エナガやシジュウカラが周りを飛ぶ春の雑木林には似合わない本なのは確かですね。でも、蚊が出るまでの季節は、雑木林で読書は気持ちがいいかも。

牡蠣読了…

2012年03月01日 | 

『牡蠣と紐育』(扶桑社/マーク・カーランスキー)読了。



うーん、第一章の食いつきの割に、最終的には今一歩でした。
当然かもしれませんが主役は「牡蠣」ではなく「紐育(ニューヨーク)」の街。牡蠣は常に出てくるんだけど、基本は街の歴史なんですね。ほぼ1800年代限定の。

生物としてカキ、あるいはニューヨークの自然生態系、せめて漁師さんの視点がもうちょっとあればわたし好みだったんですが。ひたすらニューヨークの街の変遷というか荒廃というか、発展というか、そういう視点がメインだったのです。

さくっと牡蠣の養殖が始まっていて、いやいやどうやって始まったのかとか、今のシステムと同じなのかとか、そういう話もほとんどなくて。

おもしろかったのは時折でてくる1800年代の牡蠣料理のレシピぐらいかな。そこは、いろいろあって楽しい感じでした。

まぁ、それでも牡蠣が食べたくはなりましたね。