ぶん殴ってやりたかった、酔っ払いのオッサン・・・

　２３日の月曜日、赤穂へショッピングに行こうと、９時に駅へ。時間があったのでホームの長椅子に座って携帯でメールを打っていた。長い足？ を組んでいたら、その足先すれすれにオッサンが通り過ぎた。顔を上げてみると、角刈りでランニング姿、脱いだシャツを肩に掛け、どことなくヤバイ感じのするオッサンだ。ああ、足が触れなくてよかったとホッとした。
　しかし、私のヤバイ人という印象は当たっていた。電車が入ってくるのが見えると、そのオッサンはホームの端すれすれに座り込み、タバコをふかし始めた。電車は２０ｍ近く手前まで来ると、大きな合図の汽笛？ を鳴らして警告した。オッサンは電車の方を見ているが全く無視、そのままタバコを吸い続けている。どうやら酔っ払っているらしい。「さわらぬ神にたたりなし」で、１０人ほどいた待ち客は遠見に眺めている。　　　　
　だが、１人の中年の男性が近寄っていって、オッサンの肩に手をおきよけるように促したが、「何するんならあー」と今にも殴りかからんばかりの勢いにたじろぐ。酔っ払うと気が大きくなり、いさめたり止めたりすると返っていきり立つものである。その男性の勇気には感心するが、どうやら逆効果のようだった。　　　　　
　電車は停止位置より１５ｍくらい手前で停止、運転士が降りてくると、オッサンはそっちへ歩いて行き、大きな声で怒鳴り始めた。赤穂線は単線で、赤穂―岡山間に２駅だけ複線の駅があり、そこで電車がすれ違うのである。当駅はその１つで、ちょうど入って来た電車の運転士が何事かと窓から身を乗り出して見ていたが、事務所に連絡したらしい。２人しかいない駅員のうち、５０歳すぎの温厚そうな駅員がホームに上がってきて、「他のお客様の迷惑になりますからおとなしくしてください」となだめるが、「どこに客がおるんならあ」とわめきながら駅員に食って掛かる始末。ババは「目の前に１０人ほどいるのが目に入らんのかい！」と心の中で毒づきながら、足は遠のいてゆく。ああ、情けないよなあ。
　よほど１１０番してやろうかと思ったが、１１０番するとあれこれ聞かれるし、パトカーはすぐには来てくれないことを、経験上知っている。それに、電話しているのをオッサンに気付かれたら怖い。いじめもそうだが、悪いことや間違っていることを見てみぬ振りをすることは同罪だということは知っている。見ていると、ぶん殴ってやりたいくらい腹が立つ。が、武道の心得もない非力な人間は怖いのが先に立って、止めたりいさめたりする勇気はとてもじゃないが出ない。　　　　　　　　　　　　　　　
　駅員が体を張って脇に押しやり、ようやく電車がホームに入ってきた。そのオッサンも乗り込んで一番前に腰掛けていたが、体裁が悪くなったのか大声を上げながら発車間際に降りていった。やれやれ、車内でまた大声を出されたらと思うと怖かった。この電車は赤穂が終点なので私はいいが、そこから京阪神へ行く人は乗換え電車の時間が気になってしかたなかっただろう。　　　　

　結局、６分遅れで赤穂駅２番ホームに到着、たしか乗換えは１番ホームで、３分しか時間がないはずだ。出発時間を遅らせたらしく、「お乗換えの方はお早く願います」とのアナウンスに、みんな階段を駆け上がり、１番ホームへ急ぐ。もしこの電車が赤穂止まりでなく京阪神方面への直行便だったら、ＪＲはこの６分の遅れを取り戻すためのダイヤの調整に、たいへんな労力と手間ひまがかかったことだろう。
　連日の暑さで、人間もおかしくなるのだろうか。朝から酒を飲んでいきまいていたあのオッサンも酔いがさめれば、意外と「青菜に塩」でシュンとする小心者だったりして…。だが、このオッサンの行為は立派な威力業務妨害だろう。こういう輩にはきついお仕置きが必要だが、はてさて、どうなっただろうか。