ときどき、「ドイツ製 VS 中国製」だとか「日本製 VS 中国製」といった写真をみかける。たとえば、ドイツ製の自転車と中国製の車がぶつかって、中国製の車はぼこぼこになったのに、ドイツ製の自転車はすこし歪んだだけだとか、日本製のキャベツを切ろうとした中国製の包丁の取っ手がぱっくり割れてしまったといった、中国製の安かろう悪かろうぶりを表現した写真だ。
僕は中国に足かけ九年ほど住んでいるから、中国製の安かろう悪かろうぶりには慣れているつもり、というか日本で買ってきた本、デジカメ、CD、DVD、キンカン、金鳥蚊取り線香以外はほとんどすべてメイド・イン・チャイナに囲まれて暮らしているわけだけど、それでもときどき、中国製の品質の悪さにびっくりさせられることがある。
ある時、事務所の駐車場で運転手さんたちががやがやと騒いでいた。
別の人が社用車にしているホンダ・オデッセイが、僕が社用車として使っている中国国産のワゴン車の前面にコツンとぶつかってしまったらしい。オデッセイの運転手がすこし脇見をして、とまっているワゴン車にあたったようだ。
様子を見てみると、ホンダ・オデッセイはかすり傷ひとつないのに、中国国産のワゴン車はバンパーがぱっくりと割れてしまった。
「しょうがないなあ」
と集まったみんなは大笑いしている。ホンダ・オデッセイも実は中国産で広州本田の工場で生産しているものなのだけど、やっぱり日系車は作りが違う。昔、ジョージ・クルーニーが日本でオデッセイのテレビコマーシャルに出ていたけど、そのときの、
『いい車が好きだ。男ですから』
というコピーを思い出してしまった。
僕がいつも乗っているワゴン車の運転手さんは、
「今の車のバンパーなんて飾りみたいなものだからね。安物のプラスチック製だから割れるよ」
とつぶやくから、
「プラスチックの飾りの下には鉄のバンパーが入ってるんだよね?」
と僕は訊いた。
「ちょこっとね」
運転手は人差し指と親指で一〇センチくらいの幅を指し示す。
「そんなに小さいんだ」
僕はバンパーってもっと太くてごついものだと思っていたのだけど。なんだか頭がくらくらしてきた。そんなバンパーでは、ちょっとした事故でも大怪我になりかねない。
中国はもともと人の命が安い国だから安全というのはあまり重要視されない。見栄えさえよければそれでOK、使えればそれでOKというお国柄だから品質は二の次だ。命が惜しかったら安物のワゴン車ではなく、オデッセイのようないい車に乗るしかないのだけど……。
(2014年5月15日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第298話として投稿しました。
『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/