僕の住んでいるマンションの道路を挟んだ向こう側のビルには広州でも有名な高級クラブが入っている。高級クラブなので、もちろん一見さんはお断りだ。知り合いがのぞきに行ったことがあるそうだが、入口のところでやんわりと断られたのだとか。
週末の夕方にエレベーターに乗ると、僕よりも背の高いお姉さんがいかにもご出勤という出でたちで立っていたりする。香水の匂いがプンプンする。僕はスタイルがいいなあと感心しながら眺めるだけ。職業柄そんな癖がついているのか、エレベーターが一階につくと、たまにドアを押さえてくれたりするお姉さんもいる。僕にサービスなんてしなくてもいいのに。ご出勤のお姉さま方はハイヒールをこつこつ響かせて、マンションのホールを出てゆく。
夜中、酔っ払いの騒ぎ声が聞こえてくる。高級クラブから出てきた酔っ払いが屋台の麺をつつきながらわいわいと騒ぐのだ。男も騒げば、女も騒ぐ。たまに酔っ払い同士で喧嘩することもあるようだ。
年に何度か、真夜中のクラブで大捕物がある。公安がクラブへ入ってマフィアを捕まえるのだ。
マフィアが逃げまどって叫び声をあげ、公安が拡声器でおとなしくしろといったことを叫ぶ。パトカーのサイレンがひゅんひゅんと唸る。小一時間くらいは騒がしい。目の覚めた僕は騒がしさに寝付けず、ぼおっと騒ぎ声を聞いていたりする。翌日は決まって、クラブの前に公安の車がとまっている。
昼も夜もなかなかにぎやかな国だ。
(2014年12月4日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第312話として投稿しました。
『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/