風は春なのに
あたたかいはずなのに
花は春なのに
恋が咲くはずなのに
待ちくたびれた
まどろみのなか
木の葉を透かす
陽射しだけが
まどっろこしくて
時の流れが
うずまくみたい
だれもいない
庭のベンチ
つけっぱなした
ラジオだけが
なぜか賑やか
うつろなおしゃべり
いつかあなたが
いたずらした
桜の幹に彫った
わたしのイニシャル
永遠の誓いだとばかり
思いこんでいた
あなたを想えば
胸がつまりそう
さびしいとも
つぶやけない
帰るはずもない人を
待っていると
思いたくないけれど
風は春なのに
やさしいはずなのに
光は春なのに
愛を語らうはずなのに