午後、近くのバザールへ買物に行く、高級住宅地のバザールへ行くのは初めてだ。野菜やフルーツ類は一般のバザールと同じ様に屋台で売っているが中心には何と大きなスーパーマーケットがあった。生鮮食品は扱っていないが保存できる食品、飲料、日用品等の品揃えは豊富だった。インド人との値段交渉は神経を使うが此処では値札が貼ってありレジで清算出来るようになっている。肉、魚類はやはりバザールの外れに店を出していた。冷蔵設備がないので悪臭が漂い蝿が飛び回っている。マリーはあれこれと注文を付けてマトンを買っていたが今日の夕食に使うのだろう。ぼくはライター、煙草とビリそれに歯ブラシを買った。
「トミー、明日は裁判所への出頭日よ」 とマリー。
九月二十五日の出頭は以前から決まっていた事だ、彼女が同行してくれる。大使館行きについて話し合ったがオールドデリーのティスハザール裁判所から大使館へ回るには無理がある、取り敢えず電話でアポイントを取って翌日、大使館へ行った方がベターだろうという事になった。スタッフとチャラスは二~三日以内で準備出来るだろうとフィリップス、その時点で大使館に預けていたお金はぼくの手許にあるので刑務所内の支払いも含めて清算するつもりだ。帰り際の彼を呼び止めてショッカンの居場所を調べてくれるよう頼んだ。ショッカンはぼくより二週間程前に釈放されていた。ぼくの逮捕に深く関わっていたのは奴しかいない。インド人のマフィアを使ってでも奴を締め上げ腕の一本でも叩き折ってやりたい。キシトーの近況について知りたいと思ったが彼には聞けなかった。