ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅         マリー・・・・・8

2011-06-17 | 2部1章 マリー


暫らくするとマリーは小さな声で
「トミー、英語が話せませんと裁判官に言って、後は私が上手くやるから」 とぼくに言った。
ヘロイン所持で逮捕、刑務所に収監され釈放中にも関わらずスタッフを吸って裁判所に出頭するなんて不味いに決まっている。目を直視されたらスタッフをやっている事ぐらい直ぐに感づかれるだろう。それに日常会話くらいは何とか分かっても裁判所の専門用語を使われるとお手上げだ。ぼくは彼女に任せた。法廷の正面は30cmくらい高くなっており、その中央には威厳を感じさせる大きい裁判官の机があり、一段下がった左側に書記官がいた。前に進んで裁判官の正面に立ち審理が行われる。裁判官の声がする、少し上を見ると何か問いかけたような裁判官と目が合った。
「私は英語が分かりません」
そう告げた後、ぼくは黙って真っ直ぐ裁判官の机だけを見ていた。マリーは時々ぼくに確認の為だろう話しかけてきたがそれは英語だった。
審理は終ったのだろう帰りましょうと彼女、今日はただ次回の出頭日と時間が決められただけだと言った後、少し沈黙があり次回だけではなく毎週、月曜日の十時~十一時の間に出頭しなければならないとぼくに告げた。
「それはいつまで続くの?」
というぼくの問いに、彼女は多分三ヶ月で終るだろうと言った。
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