ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅         マリー・・・・・9

2011-06-25 | 2部1章 マリー


それはぼくを精神的に落胆させない為の言葉で、インドの裁判は何年かかるか全く分からないという事情を彼女は知っていたから。今回の釈放でぼくのケースが全て終ったとは思っていない、如何いう形の釈放であったのか曖昧にしかぼくは理解していなかった。ぼくの英語力の低さが原因だ。
刑務所内で使われる釈放に対する英語は release だ。
「俺は今夕、リリースされる」
「奴は近い内にリリースされるだろう」
ぼくはフィリップスからの面会があった時、ビィルという発音を何度か聞いたような気がする。釈放の前日、パテラハウス高裁から戻って来たアフリカンからフィリップスの連絡メモを受取った。その中に多分release on bail と書いてあった筈だ。残念な事にぼくはビィルの意味を知らなかった。釈放後、大使館へ行ったとき日本から送られてきた荷物の中にあった英和辞書によって初めて保釈という意味を理解した。保釈による釈放。週一回、裁判所への出頭の主な理由は審理ではなく刑務所外での拘束であり自由の制限であった。
「多分あと三ヶ月で終るだろう」
というマリーの言葉は或る意味に於いて当たっていたのかもしれない。正規の裁判手続きによって終わるというシナリオとは異なっていたが約三ヵ月後、ぼくはぼくなりのやり方で決着をつけようとは、この時点では想像もしていなかった。

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