ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅        遠い道・・・・・1

2013-10-06 | 4章 遠い道・逃亡
 大使館の執務室にはBさんだけが残って仕事をされていた。大使館に預けていた荷物を受取り、Bさんとぼくは支払い等の事務的な作業を始めた。病院への支払いは25日で64000ルピー、1日の入院費用は2500ルピーと思った以上の高額である。ぼくはちょっと嫌味に
「随分と高い入院費用ですね」
「君が使っていた薬物の値段と比較すれば、高くはないでしょう」
と嫌味で切り返された。病院から持ってきた着替えや本をバッグに入れた。袋に入れられた残りのお金をBさんから受取りこれで全ては終った。もう2度とBさんに会う事はない。
「長い間、大変お世話になり有り難うございました」
ぼくは深く頭を下げた。
「無事を祈っています」
顔を上げたぼくの目とBさんの強い視線が合った。
「必ず日本へ帰ります。失礼します」
ぼくは大使館を出てデリー駅へ向かった。何度も何度も有り難うございます、と心の中でぼくは呟いた。
 デリー駅前は大混雑していた。何かあったのか、ぼくはオート力車を駅の手前で降りメインバザールの通りまで歩いた。夕方の最も人出の多い時間帯ではあるが、まともに真直ぐには歩けない。バザール入口のゲートが閉められる事はないのだが、半分閉められ3名の警察官が立っている、スリや盗みの警備だろう。駅前はいつもこんなに混雑していたのだろうか、通りに入ると道がどこまでも続いているように見え、大勢のインド人が忙しく行き来していた。両側の商店も大きく見える、ぼくはいつもスタッフをやってバザールを歩いていた、素面で街を見るのは久し振りだ。
コメント
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