ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・7

2014-11-26 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

「スタッフを入れよ」
「次回、何時間後のスタッフを用意せよ」
その指示を忠実に守った時、ぼくらジャンキー達は何の不安もなく心穏やかに過ごせる。だが一度でもその約束を守らないと厳しい禁断という罰が与えられる。苦しみもがくジャンキーに
「スタッフを入れよ」
という指示が同じく苦しむ擬似脳から連続して出される。スタッフの補給を断たれた擬似脳の中枢は乱れる。禁断に苦しむ擬似脳は肉体を直撃する。体の激しい痛み、下痢、不眠、頭の中を切り裂く電気。耐え切れなくなった肉体はスタッフを手に入れようとする。スタッフの注入は終った。悪夢は去った。
 朝8時頃までに2パケを入れ、ビリをズボンの裾の折り返しに隠して裁判所へ出発した。1本のビリは真中から折れていた。護送車に乗る時インド人は座席を取る為、乗り口で揉み合いぼくもそれに巻き込まれてしまった。留置場に着いてアシアナで知り合ったインド人を見つけ奴にビリを渡す、火がどこにあるのかぼくには分からない、が奴は口から煙を出しながら戻ってきた。ビリを吸っているとインド人が集まってきた。アシアナで一緒だった奴は当然のような顔をしてぼくに近づいて来る。ビリを半分くらい吸って火を点けてくれたインド人にそれを渡し輪から離れた。
 第1刑務所に戻って来たときのチェックは厳しかった。ズボンの折り返しから靴まで徹底的にやられた。ライターの持ち込みを考えていたが無理だろう、精々マッチ棒くらいなら何とかなるかもしれない。マッチを包んだハンカチを手に持って両手を上にあげチェックを受け、終ればハンカチをポケットに入れてしまう。後は靴の調べが終れば中に入れる。見つかれば蹴りとパンチくらいの覚悟は必要だが。午後2時ごろ第5収監区に戻って来た。3時まで施錠されていて房に入ることはできない。大木の台に座って開くのを待っていた。静かだ。暖かい陽が差して鳥の声と木の葉を通り抜ける風の音だけが聞こえた。
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