ある日、いつものようにスマホでニュースを見ると…あれ?
「種苗法改正、有名俳優が反対ツイート。反対の声拡がる。」
あらら…またですか…。もうバレバレだから、逆効果だからやめればいいのに…。
先日の「#検察庁法改正案に抗議します」が、調べればすぐわかるようなヤラセであったことは明らかになっているが…
で、一体何のための話題づくりなんだろう、と記事を開いてみると、ありゃ!?何だ山田さんじゃん!?
実は、小豆の不作→花粉とミツバチ→除草剤+遺伝子組み換え産業→TPP
の勉強の流れで、元農林水産大臣の山田正彦さんの「タネはどうなる~種子法廃止と種苗法運行で」という本を、つい最近読んでいたのです。
この本には、種子法廃止の懸念について、TPPとも関連して、今、日本の農産物=食料にどんな動きがあるのか?それにどう対処するべきなのか、などなど、大変勉強になりました。
本を読む限りでは、本当に日本の未来、特に農業の未来を考え、そして実際に行動されていて、こんな立派な(元)政治家もちゃんといるんだなーと尊敬していたのですが…。
その山田さんが、「なにやら不穏な動き」の渦中にあって、種苗法改正への反対コメントを寄せているのです。いわく「種苗法改正は自家採種一律禁止(新品種)の悪法!」。
うーん…。
というわけで、よい機会だったので、種苗法が実際のところどうなのか。うちの自家採種や自家苗づくりはどうなってしまうのか調べてみました。
<驚愕の事実!>
で、二次情報はあてにならないので、農水省に直接聞いてみようと思って、ホームページをひらくと、種苗法改正についてまとめたPDFがあって、それを読んでびっくり!!
なんと…自家採種も自家苗も全然まったく大丈夫でした!!
いや、逆にびっくりしました。
これに反対って何?どこが?どうして?
それにしても今回、農水省の作成した概要PDFが、わかりやすくて良い!
要点がまとまっており、私が聞こうとしていたことや、世間に広まっている誤解や懸念に対しても、はっきりと回答している。
どうせまたあいまいに回答して、のらりくらりと悪いことでもたくらんでいるのかと思ったら、ほんとにばっちり!
文面を読む限りでは、種苗法改正、問題ナシ!!でした。
<種苗法の課題と改正のポイント>
そもそも種苗法とは、新品種を研究開発する人が、その事業を安心して維持継続できるように、つくった人の権利を守るための法律。ようは著作権とかの種苗版な感じのようです。
ところが、その法律が今まであんまり厳しくなかったために、問題が発生していました(基本、日本人は特許とか権利の主張とかには疎い←誉め言葉)。
課題:日本で開発された品種が無作為に海外に流出し、産地化されることで、
1.輸出ビジネスに支障が出る
2.逆輸入されて、国内でのビジネスに支障が出る
3.適切な環境で管理されていない低品質な種苗が広まることで、品種のブランド品質・価値の維持に支障が出る
主にこれらのことを改善・防止するために改正するというわけです。
改正のポイント
1.種の育成者が、国内栽培限定、とかの「利用条件」を付けることができるようにする。
2.これまでは許諾不要だった種苗の自家増殖を「許諾性」にする。
これにより
→海外への流出と利用に法的な制限をかける。
ただし
3.これらのことは、今後新たに登録される「新品種に限る」ことであり、しかもその新品種の許諾も一定期間が過ぎれば無効になる。
つまり
→改正以前に登録された品種に関しては自家採種も自家増殖もこれまでどおり。
というわけで、細かいことは書いてあるので読んでください。
農水省HPより
→● 種苗制度をめぐる現状と課題~種苗法改正法案の趣旨とその背景~
< それでも「自家採種ができなくなって農家が困る」と思っている方へ >
そもそも「今の農家はほとんど自家採種していない」という事実をお伝えしたいと思います。
現在一般的に販売されている種のほとんどはF1種と言って、撒いた一年目だけものすごく品質が良くなる、一代目だけスーパー種。
そのかわり、そこから自家採種して翌年まくと、とたんに品質が暴れだしたり、自家採種自体ができないようになっていたりする、子孫をうまく残せない特殊な種です。
自家採種に向いた固定種(いわゆるフツーの種)は、生育のスピードや形状にバラつきが出るので、出荷に使う農家はかなりの少数派(作物の種類によっては固定種が主流のものもある)。
つまり、自家採種をしているプロ農家自体が少数派(サツマイモや果樹の接ぎ木など、自家増殖する場合が多い作物もある)なのです。
かつての農家は「種は自分で採る」のが当たり前。現在の農家は「種は毎年買う」のが当たり前。
逆に、自家採種が原則禁止になったとしても、あんまり困らないかもしれない今の農業にさみしさを感じる次第です。
関連過去記事→たすくの空中散歩「野口のタネ~いのちのリレー 」
<世にも奇妙な種苗法改正反対運動>
PDFには「誤解に基づく現場の懸念」という項目で、反対派の皆さんがおっしゃっていることの多くも、すでに公式に回答済みで、解決済みのはずなのです。
それなのに、山田さん、改正成立後の最新ブログでも「日本の農業根幹を揺るがす世界に例のない自家 増殖採種一律禁止というとんでもない法律」なんておっしゃってる…。
何が残念って、そうなってくると、本に書いてあることもどこまで信用してよいのかわからなくなってしまうのです。良いこと沢山書いてあるのに…。
さらに珍妙なことに、そのスジの通らない謎の反対意見を、TPP反対でまっとうなことを言っていた人たち、報道各社、果ては農業新聞から、現代農業の最新号まで、まるで、よその記事をそのままコピー&ペーストしたような、似たり寄ったりの中身のない反対意見を述べている。
一体全体、今、日本はどうなっているんだ…?という感じ。
次第に私も、「え?間違っているのは自分なの?」と、自分自身の価値判断を信用できなくなってきてしまいました。
あれ?こんな話どこかで聞いたことがあるぞ…。そう、同調行動だ!!
ーーーーー
『同調行動』
圧倒的多数意見に対して、たとえ真逆の意見を持っていたとしても、自分の価値判断や記憶に自信が持てなくなってしまい、まわりに意見を同調させてしまう現象のこと。
オススメ図書→『ヘンテコノミクス』 佐藤雅彦 (著),菅俊一 (著),高橋秀明 (イラスト)
ーーーーーー
戦争中の日本とか、警察の尋問による冤罪づくりとか、ホント、怖いんだなーと実感しました。
反対運動ってやつも、よっぽど最初に明確な目的を定めておかないと、いつのまにか「反対することが目的」みたいになりがちですよね。
自分の意見を持つこと、主張することは大切だと思うけど、反対運動とかは苦手です。
<種子を「守る」ということ>
タネの流出に関しては、膨大な時間とコストと労力をかけた方が報われるようなしくみをつくることは当然ですが、「旅先で見つけた良い種を、持ち帰って増やす」という行為自体は人間の発展への本能的なもので、人類が世界中でそれをしてきたおかげで、今我々はジャガイモもトウモロコシもなんでも食べられるわけです。
あくまで私見にすぎませんが、今回の種苗法の改正は、
「優良な種苗が社会全体に広まることは阻害せず、かつ、開発者の権利や利益(研究事業の維持・継続資金でもある)が守られる」
そんな理想的な種苗の法律の国内版(国際的にはまだ不完全版?)、な感じなのではないかと思っております。
確かに、今回の改正で、実際にどれだけの効果が上がるかはわからない。
だけど、少なくとも意味ある一歩を踏み出せたのではないでしょうか?
無事に改正成立して、一安心しました。
<その背後にあるもの>
と、一応種苗法改正に関する記事がなんとかまとまったところで、事態をややこしくしているものについて触れなくてはなりません。
なぜ一見問題なさそうな種苗法改正が、今回こんなにも荒れたのか。
それについて語るには、種苗法改正に先立つこと数年前の出来事、「種子法の廃止」にまで話を遡らなければなりません。
→②へ続く…
「種苗法改正、有名俳優が反対ツイート。反対の声拡がる。」
あらら…またですか…。もうバレバレだから、逆効果だからやめればいいのに…。
先日の「#検察庁法改正案に抗議します」が、調べればすぐわかるようなヤラセであったことは明らかになっているが…
で、一体何のための話題づくりなんだろう、と記事を開いてみると、ありゃ!?何だ山田さんじゃん!?
実は、小豆の不作→花粉とミツバチ→除草剤+遺伝子組み換え産業→TPP
の勉強の流れで、元農林水産大臣の山田正彦さんの「タネはどうなる~種子法廃止と種苗法運行で」という本を、つい最近読んでいたのです。
この本には、種子法廃止の懸念について、TPPとも関連して、今、日本の農産物=食料にどんな動きがあるのか?それにどう対処するべきなのか、などなど、大変勉強になりました。
本を読む限りでは、本当に日本の未来、特に農業の未来を考え、そして実際に行動されていて、こんな立派な(元)政治家もちゃんといるんだなーと尊敬していたのですが…。
その山田さんが、「なにやら不穏な動き」の渦中にあって、種苗法改正への反対コメントを寄せているのです。いわく「種苗法改正は自家採種一律禁止(新品種)の悪法!」。
うーん…。
というわけで、よい機会だったので、種苗法が実際のところどうなのか。うちの自家採種や自家苗づくりはどうなってしまうのか調べてみました。
<驚愕の事実!>
で、二次情報はあてにならないので、農水省に直接聞いてみようと思って、ホームページをひらくと、種苗法改正についてまとめたPDFがあって、それを読んでびっくり!!
なんと…自家採種も自家苗も全然まったく大丈夫でした!!
いや、逆にびっくりしました。
これに反対って何?どこが?どうして?
それにしても今回、農水省の作成した概要PDFが、わかりやすくて良い!
要点がまとまっており、私が聞こうとしていたことや、世間に広まっている誤解や懸念に対しても、はっきりと回答している。
どうせまたあいまいに回答して、のらりくらりと悪いことでもたくらんでいるのかと思ったら、ほんとにばっちり!
文面を読む限りでは、種苗法改正、問題ナシ!!でした。
<種苗法の課題と改正のポイント>
そもそも種苗法とは、新品種を研究開発する人が、その事業を安心して維持継続できるように、つくった人の権利を守るための法律。ようは著作権とかの種苗版な感じのようです。
ところが、その法律が今まであんまり厳しくなかったために、問題が発生していました(基本、日本人は特許とか権利の主張とかには疎い←誉め言葉)。
課題:日本で開発された品種が無作為に海外に流出し、産地化されることで、
1.輸出ビジネスに支障が出る
2.逆輸入されて、国内でのビジネスに支障が出る
3.適切な環境で管理されていない低品質な種苗が広まることで、品種のブランド品質・価値の維持に支障が出る
主にこれらのことを改善・防止するために改正するというわけです。
改正のポイント
1.種の育成者が、国内栽培限定、とかの「利用条件」を付けることができるようにする。
2.これまでは許諾不要だった種苗の自家増殖を「許諾性」にする。
これにより
→海外への流出と利用に法的な制限をかける。
ただし
3.これらのことは、今後新たに登録される「新品種に限る」ことであり、しかもその新品種の許諾も一定期間が過ぎれば無効になる。
つまり
→改正以前に登録された品種に関しては自家採種も自家増殖もこれまでどおり。
というわけで、細かいことは書いてあるので読んでください。
農水省HPより
→● 種苗制度をめぐる現状と課題~種苗法改正法案の趣旨とその背景~
< それでも「自家採種ができなくなって農家が困る」と思っている方へ >
そもそも「今の農家はほとんど自家採種していない」という事実をお伝えしたいと思います。
現在一般的に販売されている種のほとんどはF1種と言って、撒いた一年目だけものすごく品質が良くなる、一代目だけスーパー種。
そのかわり、そこから自家採種して翌年まくと、とたんに品質が暴れだしたり、自家採種自体ができないようになっていたりする、子孫をうまく残せない特殊な種です。
自家採種に向いた固定種(いわゆるフツーの種)は、生育のスピードや形状にバラつきが出るので、出荷に使う農家はかなりの少数派(作物の種類によっては固定種が主流のものもある)。
つまり、自家採種をしているプロ農家自体が少数派(サツマイモや果樹の接ぎ木など、自家増殖する場合が多い作物もある)なのです。
かつての農家は「種は自分で採る」のが当たり前。現在の農家は「種は毎年買う」のが当たり前。
逆に、自家採種が原則禁止になったとしても、あんまり困らないかもしれない今の農業にさみしさを感じる次第です。
関連過去記事→たすくの空中散歩「野口のタネ~いのちのリレー 」
<世にも奇妙な種苗法改正反対運動>
PDFには「誤解に基づく現場の懸念」という項目で、反対派の皆さんがおっしゃっていることの多くも、すでに公式に回答済みで、解決済みのはずなのです。
それなのに、山田さん、改正成立後の最新ブログでも「日本の農業根幹を揺るがす世界に例のない自家 増殖採種一律禁止というとんでもない法律」なんておっしゃってる…。
何が残念って、そうなってくると、本に書いてあることもどこまで信用してよいのかわからなくなってしまうのです。良いこと沢山書いてあるのに…。
さらに珍妙なことに、そのスジの通らない謎の反対意見を、TPP反対でまっとうなことを言っていた人たち、報道各社、果ては農業新聞から、現代農業の最新号まで、まるで、よその記事をそのままコピー&ペーストしたような、似たり寄ったりの中身のない反対意見を述べている。
一体全体、今、日本はどうなっているんだ…?という感じ。
次第に私も、「え?間違っているのは自分なの?」と、自分自身の価値判断を信用できなくなってきてしまいました。
あれ?こんな話どこかで聞いたことがあるぞ…。そう、同調行動だ!!
ーーーーー
『同調行動』
圧倒的多数意見に対して、たとえ真逆の意見を持っていたとしても、自分の価値判断や記憶に自信が持てなくなってしまい、まわりに意見を同調させてしまう現象のこと。
オススメ図書→『ヘンテコノミクス』 佐藤雅彦 (著),菅俊一 (著),高橋秀明 (イラスト)
ーーーーーー
戦争中の日本とか、警察の尋問による冤罪づくりとか、ホント、怖いんだなーと実感しました。
反対運動ってやつも、よっぽど最初に明確な目的を定めておかないと、いつのまにか「反対することが目的」みたいになりがちですよね。
自分の意見を持つこと、主張することは大切だと思うけど、反対運動とかは苦手です。
<種子を「守る」ということ>
タネの流出に関しては、膨大な時間とコストと労力をかけた方が報われるようなしくみをつくることは当然ですが、「旅先で見つけた良い種を、持ち帰って増やす」という行為自体は人間の発展への本能的なもので、人類が世界中でそれをしてきたおかげで、今我々はジャガイモもトウモロコシもなんでも食べられるわけです。
あくまで私見にすぎませんが、今回の種苗法の改正は、
「優良な種苗が社会全体に広まることは阻害せず、かつ、開発者の権利や利益(研究事業の維持・継続資金でもある)が守られる」
そんな理想的な種苗の法律の国内版(国際的にはまだ不完全版?)、な感じなのではないかと思っております。
確かに、今回の改正で、実際にどれだけの効果が上がるかはわからない。
だけど、少なくとも意味ある一歩を踏み出せたのではないでしょうか?
無事に改正成立して、一安心しました。
<その背後にあるもの>
と、一応種苗法改正に関する記事がなんとかまとまったところで、事態をややこしくしているものについて触れなくてはなりません。
なぜ一見問題なさそうな種苗法改正が、今回こんなにも荒れたのか。
それについて語るには、種苗法改正に先立つこと数年前の出来事、「種子法の廃止」にまで話を遡らなければなりません。
→②へ続く…
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