長く期間が開いてしまいましたが、今日は咬合調整に関して触れて置きたい事がありましたので、その事に関して書きます。
被せモノや義歯、インプラント上の被せモノ、全てに置いて咬合調整は非常に重要な治療行為になります。
最期の最後でのツメ、仏師が仏像に瞳を書き入れて魂を込める、それが咬合調整だ、と言えるのです。
非常に重要なことは、咬合調整は1回では終了してはいけない、出来れば装着日の翌日にも来ていただいて調整をするべきである、と言うことなのです。
それが無理なら、出来るだけ早く来て貰って、咬合調整をする。
これは鉄則です。
患者さんの体は治療に来る前までの人生の中で、歯を悪くし、それを庇って咬む、咀嚼する、と言う行為を繰り返し、徐々に顎の安定する位置もずれて行き、又、歯を悪くして咬める所で咬んで、となって顎の位置はずれてしまっている、と考えるべきなのです。
それで、総義歯始めとする歯科治療で咬める位置を新しく構築することになるのです。
これは重要な概念です。
時間軸の中で考える。
この視点は凄く凄く重要です。
しかし、患者さんは時間軸の中で考えられる方は殆んどいません。
患者さんは自分の体が変化している、それは理解しても、咬み合わせ、咬み方が変化していることを理解いなかったりするのです。
この視点、考え方は凄く、医療人と患者さんの間で温度差、認識力の差が生じる所です。
その事を患者さんにしっかりとチャンと伝えられるかどうか、ここに今回の治療の要諦が関わって来るのです。
そこで、結論から言いますが、咬み合わせの状態が安定するまで追い掛け続ける、患者さん自身が気が付かない事が殆んどなので、我々の方で説明をして協力いただいて、治療に、咬合調整に来て貰う。
これが鉄則なのです。
歯茎に関しても、メインテナンスと歯磨き指導を繰り返し、自分で自分を守れる状態に患者さん自身が変わるまで続くのです。
これが鉄則です。
このたった2つのことが出来てしまえば、その後の人生で患者さんは歯の事で悩まされる可能性はグンと低くなります。
歯磨きは虫歯、歯周病を予防出来ます。
しかし、咬合調整だけは、患者さんは自分では絶対に出来ません。
それどころか、患者さんは自分では絶対に気が付きません。
患者さんが、自分で気が付いている状態が起きているとしたら、それはかなりの異常事態が発生している、と患者さんご本人に知って欲しいし、それは急に起きたことではなく伏線があって、それを見過ごして来たから起きている事なのです。
だから定期的なメインテナンス、専門家によるチェックが常に必要なのです。
根底にこの概念があって、患者さん、医療人の共通認識を持つ事、実は私も中々全ての患者さんに出来ていませんし、それどころか、少数派の患者さんしか出来ていませんが、これは真実の知識であり、未来永劫変わらないものだと確信しているので、頑張って伝えるようにしています。
さて、この根底概念があって治療上の注意点になります。
総義歯治療では、現在治療用義歯を用いて、最終的な義歯に仕上げて行く治療方法がゴールデンルール化しています。
ここでの要諦が、咬合調整になります。
最初の話に戻ります。
装着して、内面調整、咬合調整をして、患者さんは何となく大丈夫そうだな、で帰られます。
しかし、実際に1日使うことで、当たりが出る、要するに痛い部分が出て来る訳です。
それを必ず、内面の不適合なのか、咬合由来なのかを診断して正しく調整することが重要なんです。
この答えを得る方法は簡単です。
義歯だけ装着して術者が指で正しい方向へ押す。
これだけです。
痛いと言われたら、そこを削るのではなく、内面の歪みなのか、咬合から来るのか、を区別しないといけません。
咬合調整は、痛みを与えたら出来ません。
痛かったら、患者さんは必ず痛い所を避けて、痛くないようにズラして咬みます。
痛がらせない、これが非常に重要です。
そして、患者さん自身に痛い原因が、床内面の問題なのか、咬合から来るのか、を区別出来て理解出来るように説明する、協力出来るのが大切です。
その為にも、装着して余り時間が経たないうちに調整することが凄く重要です。
そうしていると咬み合せは少しずつ安定して来ます。
これで良いかな、と思える時点が訪れます。
しかし、ここからが実は本当の勝負、なんです。
勉強不足なのかも知れませんが、この先の話を書いてあるもの、を私は見た事が有りません。
咬合調整をチャンとして、具合が良くなると患者さんは嬉しくてどんどん使います。
それは決して間違っていませんし、それで良いのです。
ところが、具合が良くなると、人の体はもっと具合が良い状態に治ろうとし始めます。
これは真理です。
人の体は、常に自分が良い状態に戻ろう戻ろうと望んでいるんです。
これで良いや、と思うのは面倒臭いからでその人の頭脳が考えることで、人の自然な体の反応、細胞、臓器、組織は常に治ること良くなることが願っていることなんです。
人は面倒臭がりです。
そう言う患者さんが、総義歯で1回状態が良い状態になって、良かったに成っていたのが、ある日急に又痛くなる。
そうなると、患者さんは自分の体が治ろうと言う反応をして、咬む位置、咬み方がずれている、それで痛みが出ている、と言うことが理解できないのです。
殆んどの場合、患者さんはただ素直に入歯が痛くなった、と先生に話すだけです。
又悪くなってしまった、と患者さんは考えています。
そうではなく、治ろうとしている途上の反応なんだ、と理解していただく、これが非常に重要な概念です。
悪くなった、と思うのか、良く成って来ているんだ、と言う理解をするのか、全く違って来るんです。
これをチャンと患者さんに良く説明して理解いただく、凄く重要、今日の最大のポイントです。
術者側は追い掛けて調整続ければ良い、シンプルな事です。
だから、患者さん側にはその重要性、大事さが伝わり難い、ここが問題なんです。
分りますか。
私は、普段から患者さんと良く話しますが、総義歯の患者さんとは特に良く会話します。
そうすると必ず言われることが、ここまで色々と話してくれる先生は初めてです、と言うことなのです。
要するに先生方は患者さんと会話していない。
重要地点毎に必ず説明をする、これは重要過ぎる位重要なポイントです。
治療内容としては、咬み合わせ、義歯が安定するまで追い掛け続ければ良い、実に単純です。
これを決して疎かにしないで下さい。
総義歯でこれが体得できていると、他の補綴物、被せモノでも、同じ概念で対応できるようになります。
これが以外に、先生皆さん方出来ていません。
患者さんから聞き取りしている限りに置いて、私と同じように治療している先生がいた、と言うお話は聞いたことが全くありません。
全くです。
やることは簡単です。
補綴物、被せモノとか歯を入れたら、翌日とか早い時期に来て貰って、チャンと精密に調整する、これだけです。
やれば分かります。
装着日その日に完全に調整出来ていないことが。
殆んどの場合、微調整で済みます。
でも、この微調整を見過ごさない。
チャンと調整することで、患者さんは更に具合が良くなります。
この良い状態を追い求める事で、安定が築かれます。
特にインプラント治療で凄く生きて来ます。
インプラントは感覚が乏しいので、こちら側の感性、感覚が凄く重要で、不思議なのですが、この治療に総義歯が生きて来るんです。
その理由は、総義歯の咬合調整は天然歯の感覚の10倍位の感性、感覚が必要です。
それが、そのままインプラントに応用できる、と言う実に単純な理由なのです。
ある意味、天然歯は歯根膜がある事で緩衝作用があって誤魔化される、と言うことなんです。
分って下さい。
微妙な感覚、精密で緻密な世界、とても重要です。
今日は思う所があって、咬合調整のことを詳しく書きました。
具体的手技等に関しては、今後又解説して行きます。
では又再会致しましょう。
ツァイチェン!
シーユーアゲイン!