昨夜は、IOMインプラント勉強会(白鳥先生インプラント勉強会)がLuz大森の5階会議室で開催されました。
最初の演者は、若手の先生が、ご自身の臨床を提示され、今後のご活躍が楽しみなお話でした。
2番目は、口腔外科の先生のお話で、誤嚥の事故の話でした。
これも、非常に珍しいお話で、インプラントに使う器具を間違えて手を滑らせて誤嚥させてしまった、と言う怖いお話でした。
レントゲン写真を見たら、肺の気管に入り込んでいて、なのに患者さんは全く咳き込むこともなく、一応念の為と思って胸部レントゲンを撮影したら、誤嚥させてしまっていた、と言う話でした。
今回の症例の患者さんの場合は、実はその後患者さん自身が咳をしてくれたら、なんと出てきたと言う、ビックリするような幸運なケースで、何事もなく解決したそうです。
しかし、こう言うことが稀でも起きる可能性はあるんだ、と言うこと、それに対する正しい対処方法を学ぶべきだ、と言う示唆に富んだ役に立つお話でした。
3番目の演者は、天王洲で開業されている、インプラテックスのインストラクターもされている小川先生で、インプラントをする前にこう言うことを知っていて欲しい、と言う内容でした。
小川先生は少しだけ年上の先生ですが、ほぼ同世代と言って差し支えないと思います。
先生は、一番最初に歯を削る治療、被せる治療がまず学ぶべき治療なんだ、と強調されていました。
インプラントと言うと外科手術、と言う側面が強調されがちですが、歯をちゃんと削れる技術、型取りをできる歯茎への配慮がそのままインプラント治療に生きる、炎症のコントロール、支台歯形成、基礎の基礎と思えるものこそがインプラント治療を支える、と講演をされました。
実際のケースプレゼンでは、接着性ブリッジの症例を沢山見せて下さり、先生がインプラント医として高名なのにもかかわらず、と言うお話で、とても意外な感じがしたのですが、非常に為になるお話でした。
接着性ブリッジをされて5年以上になられるそうですが、脱落はない、と明言されていましたので、流石だなと思いました。
私自身は接着性ブリッジは稀にしかしませんが、確かに意外に良いものだ、と感触を得ています。
ここでしか言えない、と言う内容のお話で、凄く面白く役に立ちました。
やはり、時代の風潮なのでしょうか、インプラントが流行り過ぎて、その反動と言うか、安易な蔓延が怖い、と言う感覚が我々同世代にあるんだなー、と思います。
私もフローラルインプラントセミナーのプレセミナーで、ビフォーインプラント、アフターインプラント、ビフォーの前のビフォーのお話とさせていただいて来ていて、同じような危機感を持っているんだなーと共感を強く持つからです。
我々はインプラントが出始めた時に歯科医になった世代です。
ですから、まだまだインプラントに対して懐疑的と言うか、用心深いと言うか、そんな簡単なモノじゃないと言う感覚があります。
これは嗅覚とも言うべきもので、今の時代の行き方に反省をすべきだろう、とヒシヒシと感じているのではないでしょうか。
ところが、今の時代はインプラントは大丈夫、インプラントにすれば万事OK,のような行き過ぎた感じが垣間見える気がするのです。
代表的例が、激安インプラントでしょう。
インプラントがモノとして考えられ、同じものなら安く売ることが出来るだろう、そうなれば患者さんが沢山来て、結果的にダイエー商法のように儲かる、と言う発想に至るのではないか、と思うのです。
しかし、あくまでインプラントはモノであって、扱う人、DRで全く違ってしまうんだ、我々がしているのは”インプラント治療”と言う医療なんだと言う視点が何よりも大切なんだ、と何時までも強調したいのです。
心臓移植手術、脳外科手術滔々、激安!、安全、安心ですよ!すぐやすますよ!で患者さんは信じることが出来るでしょうか?
なのに、現実ではインプラント業界では似たようなことが起きているのです。
インプラントは単なるチタンのネジですから、何処の会社の製品でも体への拒否反応とかは出ないでしょう。
しかし、外科手術を伴う医療なんですから、激安、混んでます、沢山患者さんが来ています、すぐやります!で安心出来るでしょうか?
大量生産、大量消費のような電化製品とインプラントが、同列に考えられている事態に、我々は凄く違和感を持つのです。
そして昨日も書きましたが、歯チャンネル88のW先生がHPで書かれているように、インプラントの成功率は巷間言われているほど高いものではない、と言う事実。
こう言う現状に、我々中堅どころの実力あるDR達が、危機感を訴える、訴えなければいけないのだ、と思います。
きしくも、小川先生がやはりインプラント治療の前に、と言う講演をされ、非常に強く共感し、このことを患者さん達にも知っていただかなければ、と思ってブログにした次第です。
インプラントはモノではない”インプラント治療”と言う医療なんだ、と繰り返し強調して締め括ります。