このような大作の展覧会で、撮影ができるというのはほんとうに嬉しいです。図録で振り返るのも勿論よいですし、その中の作品も十分美しいですが、
自分がそこにいて「本物の作品」と向き合ったという記憶をそのまま残す写真はまた格別です。
撮影可能エリアの5点です。高さ6メートルものスラヴ叙事詩を下から撮るので、16-35mmの広角レンズ(シフトレンズが理想ですが、持っていないので普通
の広角)で歪曲収差を補正しながらできるだけ作品の真ん中から撮影し、その後上窄まりの像を水平に起こす処理を行い、色調などの微調整を施してあります。
実際に会場で見た作品は、もっと柔らかく空間に溶け込むような優しい雰囲気です。沢山の人で混雑した中なので、作品の前に誰も居なくなったごく数秒の間に
サイレントモードで音と手振れを消してサッ、という方法で撮影したコマが殆どです。
作品にはこちらを見ている人物が配置されていますが、彼らの存在により、単なる鑑賞する者と絵画の関係ではなく、こちらも作品の中の出来事に積極的に引き
込まれている、と感じます。それこそがミュシャ(ムハ)の意図だと思います。
ところで、「スラヴ菩提樹でおこなわれるオムラジナ会の誓い」に描かれている女神スラヴィアのお顔ですが、正面から撮影するとディティールがはっきり
しないのですが、斜め左側からだと、キリッとした表情が見て取れます。表情だけでなく女神周辺の様子も同様です。これは肉眼(双眼鏡)でも同じです。
「女神を拝見するときは、斜め左から」がお奨めです。
イヴァンチツェの兄弟団学校
聖アトス山
スラヴ菩提樹でおこなわれるオムラジナ会の誓い (女神像、斜め左と正面の比較)
ロシアの農奴制廃止
スラヴ民族の賛歌
撮影の機会を与えてくれたことに、心から感謝します。