The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

「ねじれた家」2017年

2020-09-15 | アガサ・クリスティ
”The Crooked House”


もう一年半も前になりますが、この作品の日本公開をご紹介しておきながら(コチラで)、又もや劇
場に行く機会を逸し その後すっかり忘却の彼方になっていました(何時もの得意フレーズ)。

先日Huluで配信されているのに気付き、今更ですがようやく視聴する事が出来た次第です。
物凄く出遅れましたが、そのお陰(?)で殆ど忘れていた原作本の再読もし終わっていたって事で
はまぁ良いタイミングだったかな?と自分の中で言い訳するワタクシで・・・・。

それは兎も角、
前回ご紹介記事に書いた事とダブリますが、念のために概略を。

ミステリの女王アガサ・クリスティーが1949年に発表した「ねじれた家」の映画化作品です。

ギリシャから英国に渡り、無一文から巨万の富を築いた大富豪アリスティド・レオニデスが突然死
亡した。
孫娘であるソフィア・レオニデスがかつての恋人で 私立探偵をしているチャールズを訪れ、祖父
は誰かに毒殺されたに違いないと 捜査を依頼して来たのだった。
レオニデスの屋敷には前妻の姉であるエディスを始め、孫ほど若い後妻のブレンダ、息子(ロジャー
とフィリップ)夫婦、孫達等三世代にわたる一族が住んでおり、巨額の遺産を巡り疑惑、憎悪が入
り乱れていた。
捜査を始めたチャールズはソフィアを含め一族それぞれに殺害動機がある事に気付く。
そして、故レオニデスの遺言書が無効である事が発覚し、真相に近づいて行くうち第二の殺人が
起きてしまう。

※ 尚、映画版では一部のキャラクター設定が原作から変更されています。
例えば、
チャールズは外交官を辞めて私立探偵をしている。
原作では結婚を熱望しているソフィアと別れている。
チャールズの父親でスコットランド・ヤードの副監察官であるアーサーは何らかの事件で殺害さ
れたようで、犯人は見つかっていない。 なので、映画版には登場していません。
他細かい変更も幾つかあります。


監督:ジル・パケ=ブレネール
脚本:ジュリアン・フェロウズ(『ダウントン・アビー』等)他

出演:
グレン・ローズ:エディス・デ・ハヴィランド (レオニデスの前妻の姉)
マックス・ライアンズ:チャールズ・ヘイワード(私立探偵)
クリシティーナ・ヘンドリックス:ブレンダ・レオニデス(レオニデスの後妻)
ソフィア・レオニデス : ステファニー・マルティニ(レオニデスの孫)
テレンス・スタンプ:タヴァナー主任警部
ジリアン・アンダーソン: マグダ・レオニデス (ソフィアの母、フィリップの妻で女優)
アマンダ・アビントン:クレメンシー・レオニデス( ロジャーの妻)


チャールズがレオニデス家を訪れた時、猟銃でモグラ退治をしているエディス、祖父の肖像画の
前でバレーを踊る孫のジョセフィン等強い印象を残しながら散りばめられたヒント、布石になって
いる事に気付かされます。



又、一同が会する夕食シーンでは、卓上で蔑み、罵り、嫌味のぶつけ合いを繰り広げる人々の姿は
それぞれの心に秘めた思いを見せつけられるテンポと緊張感が溢れるシーンです。



以前も書きました様に、”Crooked House”「ねじれた家」は、マザー・グースの童謡からの引用です。
そんな”ねじれた家”に住む”心のねじれた”一族が繰り広げる人間模様を重厚に描き出しています。



衣装、邸宅の内部、インテリアは非常に興味深く、なかでも原作にも描かれている様に、登場人
物達の個室のインテリア、コーディネイトはそれぞれの個性、性格を表していて特に興味深い点
です。
本に囲まれ うす暗い陰鬱なフィリップの部屋。
ピンク色を基調にした華やかなブレンダの部屋。
白を基調にした、殆ど装飾品もない無機質な印象を与えるロジャー夫妻の部屋

それぞれのライフスタイル、イメージを表していて注目点ですね。

アガサ・クリスティーが自らの作品の中でトップ10に入れているこの作品は、他のポアロ物、ミス・
マープル物とは全く赴きを異にする作品で、犯人、エンディングはやや重く好みが別れるところ
ではないかと思われます。

ただ、兎に角グレン・ローズの名演、存在感が素晴らしくこの作品を引き締めています。
久々のテレンス・スタンプは出番場少なく残念で、なんだか勿体ない気が・・・・。





難しいい作品ではあると思うのですが、某TVドラマ化の様に全く解釈を変えてしまう脚本では
なく、殆ど原作に忠実に映像化されているという点で クリスティーファンには好ましい出来
になっているのではないかと感じました。

アガサ・クリスティー原作 『ねじれた家』 日本公開情報




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