アートセラピー「心のお絵かき」の世界

アートセラピストで妻で母で女の、楽しく豊かでゆるい人生後半日記。

親子でアートセラピー体験

2020-11-07 16:07:11 | アートセラピー
今日は、今年度初めて、平塚市美術館で体験アートセラピーの親子ワークショップを開催させていただきました。

コロナウイルス感染防止のため、普段は10組20人が定員なのですが、半分の5組10人で行いました。

きっと、来てくれた参加者の方々も、こういう場は久しぶりだったでしょうね。
最初は緊張気味でしたが、すぐにそれもほどけて、穏やかな楽しい時間を皆で過ごしました。

オンラインも、遠方の人も参加できるとか安全とかの利点はたくさんありますが、やはりリアルならではの空気感はありますね。

絵は、生で見ると、映像で見るのとは違う「体温」みたいなものが伝わってきます。なんだろうね、なんかあったかいのですよ。

なにより、描いている人の嬉しそうな気持ちが伝わるのが一番嬉しいです。

参加者も、描く楽しさと共に、他の人たちの作品を直接見る楽しさが味わえるのが、良かったみたいです。

もちろん、コロナ対策は気をつけなければなりません。
これからは、インフルエンザにも気をつけなければなりません。

でも、帰って行く親子さんたちの晴れ晴れした笑顔を見て、
こういう場も、少しずつ増やしていきたいものだなぁ、必要だよねぇ、とつくずく思いました。

ひたすらに円を描くアートセラピー

2019-04-26 13:59:29 | アートセラピー
昨日は、地元の子育て広場で、子育てママたちとアートセラピーのワークでした。

パステルを使って、ひたすら円を描いたのですよ。

アートセラピーって何?どんなもの?あたし絵苦手なんだけど・・・という方も大丈夫!なのが
私の講座です。(自慢)

まず、沢山並んだパステルの中から、その時いいなと思った色を何色か選んで、自由に円を描きます。

ウォーミングアップもかねて、ゆっくりゆっくり。

いつも子育てでめまぐるしい時間を過ごしているはずですから、ゆっくり円を描くことで
落ち着いた時間を取り戻していただければ、という思いです。

「わー!きれい!」と、これだけでも気持ちがほぐれて華やいでいきます。

次は「今の自分を表すとしたら、どんな色のどんな円になるかな?」というお題で描いていきました。

最初は「えー?難しい!」などおっしゃっていましたが、少し考えた後は、皆さんスムーズに楽しげに
描き始めました。

1枚目の時より集中度が高い気がする。

自分のことを考え感じて向き合う時間ですもの。集中しますよね。

そして次は二人一組のペアになってもらい、お互いのことを知るための時間をとりました。

好きな季節は? 海と山ならどっちが好き? どんな食べ物が好き?

お互い自由に聞いた後、その印象を元に相手の方のイメージで円を描き、描き終えたら相手の方にプレゼント。

全員が初対面だったのですが、とても良い時間になったのですよ、これが。


上がウォーミングアップの絵。右が自分で描いた自分のイメージの円。左がプレゼントされた円。


上がウォーミングアップの絵。左が自分で描いた自分のイメージの円。右がプレゼントされた円。


上がウォーミングアップの絵。右が自分で描いた自分のイメージの円。左がプレゼントされた円。


左がウォーミングアップの絵。右がプレゼントされた円。(授乳のため1枚描けなかったので)

みなさん、プレゼントされた円をとても喜んでいました。

インタビューの後に描いてもらった自分イメージの絵が、自分にしては思いがけないような絵だったり
「ああ。自分こんな感じ」と思えたり。

自分のことって、一番わからなかったりしますから、そして言葉で言われてもピンと来なかったりしますから、
こんなふうにきれいな絵になってくると、すんなり入ってくるのかもしれませんね。

みんなでたくさんしゃべったり聞いたりして、豊かな時間となりました。

子育て中のお母さんが集まれば、どうしても子育ての話題ばかりになると思いますが、たまにはこうして
子育てとは全く違う話題、自分自身のことを考えたり感じたりする時間も大切じゃないかって思うのです。

で、最後に私はこう伝えました。

「おうちに帰れば、また忙しくて大変な生活になり、イライラしたり疲れたりすることも当然あると思います。
そんな時には、今日描いたりプレゼントされたりした絵をどこかに貼って眺めてみてくださいね。
きっとこの穏やかな時間を思い出して、気持ちが落ち着くと思います。」

みなさんとても納得されて、作品を大事に持って帰りました。

良かった良かった。

これぞアートセラピー。




「なんかイイ」とか「なんかイヤ」という感覚

2019-03-17 14:52:25 | アートセラピー
コラージュにしろコラージュボックスにしろ、切り抜いたモチーフをどこに貼るか決める作業は
けっこう大変です。

すごく迷う場合もあるし、一発で「ここ!」と決まることもあります。

モチーフを切っている段階から「これは真ん中に貼ろう」と思うこともあります。

なぜそのモチーフをその場所に貼るのか?

理由は、たぶん理屈ではありません。

そこに貼るのが「なんかイイ」と感じたからです。

そして、他のモチーフを置いたとき「なんかイヤ」と感じたからです。

「なんかいいなー」と感じたものを「なんかいいなー」と感じた場所に貼れる。

あるいは「なんかよくないなー」と感じたら、その場所には貼らない。

なんと、心のまま、素直な行動でしょう。

そんなのあたりまえ、と思いますか?

でも、日常生活の中で、このコラージュのプロセスと全く同じような行動はなかなかとれないのでは
ないでしょうか?

「なんかいいなー、これ欲しい。」と思った時、心のまま素直に買えますか?

私は、まず無理。

値段をまず見ます。次いで、それの置き場所があるかとか、本当に今必要かとか、いろいろ考えます。

考えると言うより、私の場合は買わない理由をあれこれ探している感じ。

ただ単に「いいなー」と思うだけなら簡単なのですが、「いいなー」と思ったものを手に入れるとか
「いいなー」と思った場所に実際出かける、となると、そうしない理由、そうできない理由を
自動的にあれこれ考えてしまう自分がいるのを常に感じてしまう。

逆もまた然りで、「なんかいやだなー」と思っても
「でも、普通こういう場合はこうしなくてはいけないもんだろう」みたいな理屈がいっぱい出てきて
「やらない」という選択、コラージュでいえば「貼らない」という選択をするのはなかなか難しい。

つまり、私の場合、たいがいは何故か本心と裏腹な思考が始まって、本心と行動がねじれてしまったりするのです。

ほとんどの大人は、こんな感じで日々を送っているのではないでしょうか。

コラージュをすると、すごくすっきり感があり、参加者の皆さんも異口同音にそうおっしゃいます。

理由はいくつかあると思いますが、大きな理由の一つが、この「いいなー」と思ったものを「いいなー」
と思った場所に貼り「なんかいやだな」と思った所には貼らない・・・自分の思ったとおりに
素直にストレートに行動でき表現できる、という快感にあるのではないかと思います。

画用紙の上は、ホントに自由で安全ですものね。

なんでも思い通りにできます。

んんー、実生活はけっこう不自由でけっこう危険てことですよねぇ・・・。

だから、ついつい本心とねじれた言動をしてしまうのか・・・。

画用紙の上で、自由に選択し表現することを練習してさ、実生活でも不要な思い込みや思考の絡まりみたいなものを
「なんかいやだ。なんか違う」とスルーし排除して、少しでも楽に生活できるようになれればいいよねぇ。

ママたちのコラージュ・ボックス

2019-03-15 16:45:30 | アートセラピー
先日、地元の子育て広場で「コラージュ・ボックス」のワークをいたしました。

コラージュ・ボックスは、画用紙に貼るコラージュと違い、空き箱に切り抜いたモチーフを
貼っていきます。

箱は立体ですから、上も横も底もあります。

外側だけでなく、蓋を開ければ内側もあり、その内側もさらに、目につきやすい場所と目につきにくい
場所があります。

誰にでもすぐに見える場所に何を貼ろうか?

私しか知らない場所に何を貼ろうか?

何を貼りたいか選んで切る段階、どこに貼るか決める段階、けっこう悩みます。

画用紙のコラージュのように「エイヤー!」という勢いとノリではいかないのが、
コラージュボックスだと思います。

たくさん考え、たくさん悩みます。

その時間がとっても大事。

悩む、と書いてしまいましたが、実際は自分と会話している、自分と相談している時間なんです。

だから、とっても大切な時間なんですね。

ですから、このワークは「自分と相談するワーク」であって、それが表現された形がコラージュボックスなので
「自分と相談する」「自分の気持ちを聞いてみる」時間こそが主人公なので、そちらにたくさん時間をかけた結果
箱が途中までしか仕上がらなかったとしても、全く問題ではありません。

むしろ、箱が完成しなかったということは、「自分自身とじっくり時間を掛けてお話しできた」
ということなので、参加者にとってはとても価値ある時間だったということなのです。

ここが、アートセラピーとクラフト作りの決定的違いなのです。

クラフト作りは完成させることが目的。

アートセラピーでは作っているプロセスが大事。

作りながら自分はどこで迷ったか、それは何故か、どこに何を貼った時に喜び、解放感、爽快感などを感じたか・・・

そのひとつひとつのプロセスこそ、その人の宝物になるのです。

ではでは、箱の上面→内側部分の順に載せていきますね。













どうです?

みんなステキでしょ?

ムンク展4 表現という救い

2019-01-12 17:12:09 | アートセラピー
ムンクは言います。
「私の絵は自己告白である。」

まさにそうですよね。

風景を描いても、それは写実ではなく彼の内面の投影です。

それで、妙にぐにょーんとなっていたり、おおっという色使いだったりします。

幼い頃から病気への不安とそれに続く死への恐怖に怯え続け、ひとときでも不安や恐怖から逃れるために、
激しい恋愛をしたように見えます。

私は、ムンクが絵画という表現手段、自己告白の手段を持っていて本当に良かったと思っています。

もし絵を描いていなければ、そして他に自分を表現する手段を持っていなければ、
彼のやりようのない恐怖や鬱屈した感情は、どうなっていたことでしょう。

どんなに、女性やアルコールなど、「自分の外側にある何か」に逃げ込んでも、
いやむしろ逃げ込めば逃げ込むほど、心も体も経済も破綻していくことでしょう。

彼の内側を救えるのは、彼しかいないのです。

その方法が絵画として、自分の内側をひたすら表現することだったのだと思います。

先日も書きましたが、絵に描くことで、心の内側にあったものは外に出て、つまり、
自分と同化していた暗く激しい感情は自分と分離されて、客観視できるようになります。

ああ、こんなに苦しかったんだ、とか、ああ、今こんな感じなんだとか。

私が若い頃からムンクの絵に惹かれていたのは、こういう絵を描いてくれていたからなんだと思います。

口では言わないけど、似た感情は誰しも持っているのではないでしょうか。

それを、自分の代わりに見事に表現してくれて、なにかほっとするような。

ムンク自身だって、赤裸々に自己告白した作品が世間に受け入れられ高い評価を受けたことで、
自分の人生を否定しないですんだんじゃないかって思うのです。

余談になりますが、私はアートセラピストだからたくさんの方のコラージュや塗り絵などの作品を見ますが、
そのまんまの作品、良く見せようなどの作為が無い、気持ちをそのまんま表現した作品は、
どれも無条件に美しいのですよ。

色の組み合わせやモチーフの配置が、えっと思うようなものでも、自分の内側がそのまま表現された作品は
無条件に美しいのです。

だから、ムンクもそう。

どれほどの暗い感情、鬱屈したエネルギーが内側にあったとしても、そのまま自己告白された彼の作品は、
無条件に美しいのです。

病気の不安、死の恐怖、どうしようもない疲労や苦悩、境界線が無くなるほどの、生き血をすすられるみたいな恋愛、
いいとか悪いとか美しいとか醜いとかそんなもの全部乗り越えて、とにかく生きて描いてくれた、
これが愛というものなんじゃないかって、ふっと涙ぐみながら作品鑑賞した私でした。