アートセラピー「心のお絵かき」の世界

アートセラピストで妻で母で女の、楽しく豊かでゆるい人生後半日記。

速水御舟展

2019-07-01 13:54:08 | 美術・芸術
昨日は、山種美術館で速水御舟展を見てきました。

いやぁ、驚きました。いろいろと。

まず、けっこう混んでたこと。

やはり「炎舞」を見たいもんね。美術の教科書に必ず載ってるもんね。

それから御舟の残した言葉の数々に驚きました。感動を通り越して驚き。

「梯子の頂上に登る勇気は貴い
 更にそこから降りて来て 再び登り返す勇気を持つものは更に貴い」

御舟は常に、完成と破壊を繰り返していました。


画像だと残念ながらわかりにくいのですが、花びらがひび割れているようなすごいチャレンジ感ある描写なのです。

いわゆる「御舟スタイル」みたいなものができてしまうことを、とても嫌い怖れていたような感じです。

えーっ?て思いました。

普通作家は、その人らしい画風や、誰が見ても「○○の作品」とわかるようなスタイル、
他の誰でも無いその人独自のスタイルを確立することに熱心に取り組むものだと思っていたのに。

その時点で満足いく出来映えまで描ききったら、つまり梯子の頂上まで登り切ったら、さっさと梯子を降りて、
それまでのスタイルをさっさと破壊し、新たな決意で作品作りを始める・・・

その作業を、生涯何度も繰り返した希有な画家でした。

だからなのか、「炎舞」なんて仏画みたいに見えるし、画家というより求道者という感じです。

なんかもう圧倒されてしまいました、どの作品を見ても。

それから、けっこう晩年(といっても四十才で亡くなりましたから年齢的には若い)の言葉でも
驚かされましてね。

言葉は正確ではありませんが、こんな意味。

「自分は美しいものを描かねばならない。そのためには醜いものを見て、それを描くことが必要だと思う。
しかし、醜いとか美しいとかは比較の問題であり、本当はそんなものは存在していないのではないか。
醜いと美しいは本来は同じもので、本当は美しか存在しないのではないか?」

驚きました。

だって、最近でしょう、スピリチュアル系の人達の間でも、また心の世界を扱う人達の間でも、
美と醜や善い悪いといった両極にあったものを統合していくという、新しいものの見方考え方が広まってきたのは。

百年近く昔に、絵を描くことをとことん極めていく過程で、いわゆる次元上昇のカギになる真実を見つけてしまったら、
もうその人生はゴールに着いちゃったみたいなもんで、だからあんなに早くに亡くなっちゃったのかしらね-、
絵も人格もすごい人だわ-、とつくづく思ったのでした。

ドライビング・ミス・デイジー

2019-06-27 11:44:05 | 美術・芸術
昨日、紀伊國屋ホールで、市村正親さんと草笛光子さん主演の「ドライビング・ミス・デイジー」を見てきました。

う~ん、素晴らしかったです!!

草笛光子さん、85才とは思えない美しさと声の張り。
あんな風に年をとりたい、という目標ができましたわ。

市村正親さんも、相変わらずの声量と、おかしさと哀しみの混ざった素晴らしい演技でした。

数年前に美輪明宏さんのエディット・ピアフを見たのが最後でしたが、入口ホールに山のように飾られた花かごを見て
「ああ、これがお芝居よね」と、一気に華やいだ気分になりました。





ユダヤ人のお金持ちの未亡人とその息子、そして未亡人に雇われることになった黒人運転手の人間模様の物語です。

不当な人種差別を受ける黒人、雇い主でお金はあるけれど、やはり人種差別の標的になっているユダヤ人親子、
価値観の違い、誰にでもやってくる老い、とけっこう重いテーマが終始漂い続けます。

最初はお二人の軽妙な掛け合いが可笑しくてけっこう笑えるのですが、後半になるにつれ、それらのテーマは
避けがたい壁になって表れてくる。

というか、お互いの存在によって、自分がそのような壁に無意識に無自覚に生きてきたことに気づいてしまって、
そこから心の中の葛藤が始まってしまうんだよね。

私たちにもあるでしょう、知らなかった意識していなかった時はのんびりなにごともなく過ごしてきたのに、
何かを知ってしまったわかってしまったことで、心の中にさざ波が立ってしまったことって。

外界はなにも変わらないのだけれど、自分の内側が変化することによって生み出される葛藤です。

なので、非常に苦い場面がたくさん出てくるわけ。

それでも私たちは希望を持って舞台を見続けます。希望を舞台に託すような気分で。

そして最後に、私たちはふっと暖かい涙がにじんでくるのを感じます。

いろんな壁はある。

でも、相手を思いやる気持ち、相手を大切に思う気持ち、そんな非常にシンプルな気持ちが、
壁を粉砕しあるいは溶かしてしまえるのだと、二人の渾身の演技が教えてくれます。

難しい事なんて何にもいらない、素朴な愛情が結局一番強いんだってわかった時、なぜかほっとしたような
暖かい涙がにじんでこぼれました。

ああ、そうなんだ。

やっぱり。

これでいいんだって。

東京都庭園美術館のキスリング展

2019-05-19 16:44:16 | 美術・芸術
先日、東京都庭園美術館のキスリング展に行ってきました。

木曜日の午前中に入りましたが、人も少なくてゆったりと見ることができました。

キスリングはエコールドパリの代表的な作家ですが、日本ではあまり目立ってない気がします。

つるんとした肌、細い眉、繊細に整えられた髪、え?と思うくらい大きな瞳が特徴かな?

私は好きですねー。

あんまり本物を見る機会が無かったですが、本物の前に立つと「こんなにきれいだったんだ!」と
感動しました。

そして、「来て良かったなー」と思ったもう一つの理由が、私が知っているキスリングと同じくらい、
私の知らなかったキスリングを見ることができたことです。

オークションカタログなどを見ると、最も有名でみんなが好むキスリングのパターンの絵が並びますので、
私はそういうキスリングしか知りませんでした。

が、実際の彼は貪欲に、美術の奇跡のようなあの時代のパリの作家たちからさまざまな影響を受け、
自分の絵に取り入れる実験を試みていました。

彼がひたむきに絵を愛し、絵を描くことを愛し、絵の対象となる全てのもの、全ての人を愛し大切にしていた
ことがよくわかり、ジーンときました。

モディリアーニのようなキスリング、セザンヌのようなキスリング・・・いろんなキスリングを見ることができて
楽しかったですよ。

あと、彼は非常に人柄が良かったようで、それも初めて知ったことなので、来て良かったなぁと思いました。

庭園美術館はその名の通り、企画展と同じくらい「庭園」に魅力があります。





広々とした敷地は、洋風庭園、和風庭園、芝生の広場に分かれていて、たっぷりとお散歩が楽しめます。

お花は無いのですが、ぼーっとベンチに座っていると、鬱蒼と茂る木々から何とも言えない良い香りがして
都会の真ん中にいながら森林浴している気分になります。

絵にあまり興味が無くても、じっくりお庭を楽しみリフレッシュすることができる良い場所だと思います。

また、美術館の建物は旧朝香の宮邸なので、邸宅内の装飾なども楽しむことができます。



目黒駅からも近いし、またまったりしにきたいな-。

茅ヶ崎市美術館 創作版画の系譜展

2019-02-21 16:15:25 | 美術・芸術
だいぶ暖かくなり、お出かけもしてみようかしらという感じになってきましたので、
今日は茅ヶ崎市美術館に行ってきました。

前から行ってみたかったのですが、今回「創作版画の系譜展」という、私の大好きな分野での展覧会でしたので
初めての場所でしたが、地図を見ながら行ってみました。

茅ヶ崎駅からまっすぐな道を歩いて8分くらい。わかりやすい場所でした。

高砂緑地という公園の一画にあるような場所で、緑に囲まれた気持ちの良い場所です。

ちょうど梅もいっぱいに咲いていました。



恩地孝四郎、山本鼎、田中恭吉、谷中安規など、日本の創作版画の代表選手みたいな作家達の作品が
静かに並べられ、、それはまるで上質な絵本の中に迷い込んだような心地よさです。

中でも、もうハゲシク感動してしまったのが長谷川潔の木版画。

長谷川潔といえば、あのマニエルノワールの銅版画が有名ですが、こんなにも美しくて愛らしい木版画がたくさん
あったとは!

感動のあまり、行ったり来たりで三回くらい見てしまいました。

以前から、日本の創作版画は詩と同じだなぁ、と感じていたのですが、今回あらためてそう感じました。

つまりね、ポエムの心を文字で表現したのが詩で、絵で表現したのが版画。

そぎ落とされ研ぎ澄まされた表現が、そう感じさせるのだと思います。

こじんまりした美術館なので、全部見てもそれほど時間はかからないのですが、たいへん満足いたしました。

見終えて、ちょうどお昼時でしたので、2回のカフェでひとりランチを楽しみました。

ガラス張りで外の景色もよく見え、店員さんもみなさんとても親切。



私は、トマトグラタンセットを注文。



お味も量も、私にはピッタリでした。(男性や、しっかり食べたい人には物足りないかもですが)

楽しかったなぁ!

また行きたいと思える美術館でした。

根津美術館 酒呑童子絵巻

2019-01-22 13:28:01 | 美術・芸術
先日、お天気が良く比較的暖かい日に、根津美術館に酒呑童子絵巻を見に行ってまいりました。

それほど混雑しておらず、ゆったりと見ることができました。

面白かった~~!!

酒呑童子ってこういうお話だったのね!

これは絵巻が主人公で、絵を観ることがメインですから、ストーリーにばかり気が行ってはいけません。

そういうことを配慮した感じの、簡潔でわかりやすい物語解説がVERY GOODでありました。

同じ酒呑童子絵巻でも、室町時代に描かれたものと江戸時代に描かれたものとはだいぶ感じが違います。



室町時代のは素朴で、鬼のお話なのに、なにかこう邪気が無いというか、鬼の姿になって眠りこけている
酒呑童子の顔なんてカワイイのです。

鬼退治の主役である源頼光の衣装なども、お話がつながっているはずの場面なのにばらばらで、どれが頼光さんかいな?
と探してしまったり。おおらかで良かったわ。

江戸時代の絵巻は住吉弘尚という絵師の作品だそうですが、とても洗練されています。

ロマンティック・ロシア展を見た時は、その自然描写のすばらしさに感銘を受けましたが、
こちらの自然描写もまた、負けず劣らず素晴らしいものがありました。

酒呑童子絵巻の場合、自然描写は、物語の背景にすぎないのでしょうが、
単に背景と片付けてしまうのにはもったいない美しさでした。

やっぱり、日本人は自然の美しさを愛しているから、たとえ背景といってもおろそかにできないのでしょう。

そして、登場する人間や鬼たちの表情やしぐさなどの豊かさ、衣装の細かさなどは面白くて、
いつまで観ていても飽きません。

・・・それで、観ているうちに「おぉっ?」と思ったですよ。

この長ーい絵巻物をA4サイズくらいの幅に切って綴じたら、まるで少年ジャン〇みたいじゃなーい?!

逆に、少年ジャン〇の漫画をコマ割りとか全部はずしてだらーっとつなぎ合わせたら、絵巻になりそうよねぇ?

おお!
世界に誇るニッポンのコミックの原点は、ここにあったのね。

今日一番の発見だわ。

ところで、根津美術館に、今まで気づかず素通りしてしまっていたステキスポットがありました。



どこかわかりますか?

入口入ってすぐの左側です。

入るとすぐ美術館めがけて右側に歩いてしまうので、気がつかなかったのでした。

もっとゆとりを持って歩かなきゃ、ね。