全国農業協同組合中央会、いわゆるJA全中の組織改革につき、さかんに報道がなされている。
小泉総理の郵政改革と同じような印象で、テレビや新聞をいくら見ても読んでも、正しいのか、いかがわしいのか、さっぱり要領を得ない。
郵政民営化の理由は、税の無駄使いを無くすというものだった。300兆円もある郵便貯金が、官僚や族議員たちの手により、財政投融資の資金に変じ、特殊法人へ渡り、無用の箱物や道路が造られている事実が、毎日のように報道された。
あちこちに作られた豪華なレジャー施設で、閑古鳥が鳴き、田舎の立派な道路や飛行場には、利用者が無かった。そしてみんな赤字。大切な税金をよくもまあ、こんなに浪費したものと、国民はこぞって小泉総理に賛同した。
そして今、郵政改革が実現したというが、どんな結果になったのか。税の無駄遣いが減ったのか、無くなったのか、国民には分からない。あんなに騒いだマスコミも、ただ記事を氾濫させただけで、何のフォローもしない。誤報や捏造などは、果たして慰安婦問題の報道だけだったのかと、そんな気にさせられる。
日本の農業を活性化するため、全国農業協同組合中央会が障碍になっている。このままでは農業の未来が開けないと、安倍総理が力説する。農協が農家のためになっているのかと、疑問になる事実は次のごとしだ。
JA全中には、農産物販売事業と、銀行と同じ金融事業と、保険会社と同じ共済保険事業がある。金融事業をする全中金の総資産は、国内最大の三菱UFJグルーブには及ばないが、りそなホールディングスの45兆円を凌駕する、83兆円と言われる。
しかも農協の会員は、専業農家である正規会員より、金融・保険を利用する非正規会員の方が、多数を占めている。割合で示すと、正規会員46%、非正規会員54%ということで、誰のための組織か、農業振興の目的はどこへ行ったのか、当事者たちにも分からなくなっている。
最近増えてきた大規模農家にとり、JA全中は農業の発展を阻害する、やっかいな壁となっているらしい。やる気のある大規模農家の多くは、採算のとれる経営を工夫し、費用を抑えるため、安い肥料や農機具を購入する。適正価格で売るため、自分で販路を開拓し、消費者に直結しようとする。
こうした農業者に、JA全中は、少々高くても、肥料や器械を農協から購入しろと、文句をつけ、農協を通さず農産物を流通させるなと、苦情を言う。言うことを聞かないと、政府からの補助金交付や、その他もろもろの施策につき、不利益となる仕打ちをするらしい。
下部組織である地域農協から、毎年80億円もの上納金を集め、国会周辺での数千人規模のデモ動員や、政治家への選挙支援活動、あるいは気に入らない政治家への、反対活動資金に回している、というのだから驚く。自民党も恐れる圧力団体だというのは、世間周知の事実である。
平成8年に出版された、土門剛氏の著作「農協大破産」という本を読むと、更に驚くことが書かれていた。
バブルの末期に、住専への融資を増大させ、結果として2兆5000億円の損失を出し、これを全額税金の投入で補ったという不正行為だ。当時の農林中金の理事長だった森本修氏が、農水省経済局長だった堤英隆氏と一緒になり、実行した乱脈融資で、これが銀行なら、頭取以下が経営責任を取らされ、刑事被告人となっているはずの事件だという。
高級官僚と天下りの役人と、利益に群がる政治家や、いかがわしい事業家たちが共謀し、税金を個人的に濫用したという事例だが、こんな本を読まない限り、誰も知らない話だろう。
こうした「腐れ縁」の組織を指し、総理は「岩盤の規制」と抽象的に表現したのか。
金の絡む組織はまさに岩盤であり、これをドリルで穴を空けるというのなら、なるほど竹中平蔵氏のような、高慢な人物を使わなくては出来ない話だ。百戦錬磨の役人や、政治家が相手なのだから、総理の側にだって理論で身を固め、冷酷非情に突進する人間が必要だと、理解する。
農協も改革し、役人の介入も減らして良いと、総理に賛成するものの、小泉氏の例があるため強い不信が残る。「国益」のために改革をしているのか、「アメリカの圧力」に屈しているだけなのか。そこの疑問が解けない。TPPの妥結に向けオバマ大統領が懸命になり、大統領夫人まで訪日させるという話が出てきた。
慰安婦問題でも、尖閣の問題でも、総理を支援せず、韓国や中国に擦り寄った、オバマ氏への怒りと嫌悪が、私には残っている。
総理への冷遇は、そのまま日本国民への冷遇であるから、どうしたってオバマ氏に好感が持てない。腐臭の漂う国内の「岩盤組織」も腹に据えかねるが、本当の敵は軍事力と経済力に任せ「弱肉強食の国益」を押し通す国際社会だ。
つまり現時点では中国であり、アメリカであり・・、ということだ。
何度でも言うが、私が総理を支援するのはただ一点、「憲法改正」だ。
アメリカや中国や韓国などが言う、歴史の修正でなく、歴史の見直しなのだ。自分の国だけが極悪非道の犯罪国家だと、そんな歴史観を脱ぎ捨てるための、憲法改正である。何もかも日本が正しかった、神国日本の再建だと、そうした人々とは一緒にして欲しくないし、私はそんな人間が多数であるとは思っていない。
頑迷固陋の右翼なんて、頑迷固陋の共産党親派と同様、社会での必要悪であり、少数派であると信じている自分だ。それを信じさせてくれる日本に、心から感謝する平和な日々だ。
春らしい晴天の空になり、枝先の莟も、ふくらんできた。