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岡田啓介回顧録 - 4 ( 昭和と、平成の違い )

2017-07-01 23:35:11 | 徒然の記

 昭和 7年の5・15事件、昭和10年の国体明徴事件と、話が進みます。

 誰もが知る通り、武装した海軍の青年将校が総理官邸に乱入し、犬養総理を殺害したのが、5・15事件事件です。軍縮を支持した犬養首相が、海軍の将校たちに狙われていたのが一因だといわれています。事件をキッカケにわが国から政党政治が消え、軍人出身者が総理大臣となっていきます。

 ネットでは、当時の世相が次のように語られています。

 「大正デモクラシーに代表される、民主主義機運の盛り上がりによって、知識階級やマルクス主義者などの革新派は、あからさまに軍縮を支持し軍隊批判をし、それが一般市民にも波及した。」

 「軍服姿で電車に乗ると罵声を浴びるなど、当時の軍人は、肩身の狭い思いをしていたといわれる。」

  事実だとすれば軍人が、現在の自衛隊員より酷い仕打ちを受けていたことになります。電車で罵声を浴びせられるなど、本当にそのようなことがあったのでしょうか。
 
 次に語られているのは、国体明徴事件です。

 「昭和10年、美濃部達吉の天皇機関説を攻撃することで、政治の主導権を握ろうとした立憲政友会、軍部、右翼等の諸団体が、時の岡田内閣に迫って出させた政府声明 である。」

 「天皇機関説が、天皇を統治機構の一機関としているのに対し、国体明徴声明では、天皇が統治権の主体であることを明示し、日本が天皇の統治する国家であると宣言した。」

 これについて、岡田首相が意見を述べています。

 「総理大臣という立場にあって、しかも当時の国内の情勢からすると、まことにこういう問題は扱いにくいものだった。」「自分の心の中はともかくとして、言葉を表に出す時は慎重に構えて、些細なことで、言葉尻を捉えられないようにしなければならなかった。」

 「内閣の本来の任務を遂行する道で、こういう攻撃にあって中断するのは残念なことだし、むしろ自分のやるべきことは、こういう独裁的な動きを抑えて、立憲政治を守っていくことにあったのだから。」

 元海軍大将だった岡田首相でも、軍部の動きを、独裁的という言葉で表現しています。国会答弁で、言葉尻を捉えられないよう苦労しているところは、平成の今も同じです。野党の議員の質が低いと私たちは批判しますが、国会質疑のレベルは、百年一日の如しで、変わっていないと教えられます。

 5・15事件以来、軍部の若手将校のテロを恐れ、政治家はものが言えなくなったと、言われています。海軍出身の岡田首相も、結局は意に反し、「私は機関説には賛成していない。」と答えさせられています。

 「これが、議会だけを相手にする問題ならば、信念通りハッキリしたことも言えるのだが、閣内の軍部大臣が機関説否定のほうへ賛成しているので、この方面と衝突を起こさず、それでいて、愛国尊皇の仮面をかぶった右傾勢力に対抗していくためには、自分の意にそわぬことも口にしなければならなかった。」

 野党だけでなく、閣内の軍部反対勢力にも気を使い、少しずつしか政策が進められない首相の姿は、現在の安部総理に似ています。大臣の金権疑惑を野党が攻撃し、偽物の証人まで連れ出し、この嘘がバレるという話も岡田氏がしています。重要問題をスキャンダルですり替え、野党が倒閣に走るところも、今と同じ政治の有様です。

 書き残しておきたいのは、天皇機関説騒ぎに関する昭和天皇です。陛下を知る良い資料だと思いますので、紹介します。

 「陛下は、天皇は国家の最高機関であるから、機関説でいいではないかとおっしゃった。」「そして、困ったことを問題にしておる、というご様子だった。」

 「しかし私はこの御言葉を持ち出して、機関説を排撃する連中を、押さえようとは思わなかった。」「かりそめなことをして、累を皇室に及ぼすようなことは慎まねばならん。」「そう考えて、私の胸におさめておいた。」

 陛下の言葉を軽々しく他言しないという伝統が、平成の世では消滅しました。今上陛下の軽さと、補佐する役人や政治家の思慮のなさに失望いたします。ご学友や、床屋の主人までが、陛下のお気持ちを代弁し語るようでは、何をか言わんやです。

  「開かれた皇室」という言葉を金科玉条とし、雑誌や週刊誌までが、金儲けのため、あることないこと虚実取り混ぜて書き立て、現在の皇室は露出過剰となっています。このまま進めば、国民の「皇室への敬愛」が、霧散霧消するのでないかと思えてなりません。

 「天皇の地位は、国民の総意に基づく」と憲法に規定され、陛下も美智子さまも皇太子殿下も、その憲法を守ると述べれています。けれどもそれは、「国民の総意によって皇室がなくなる日が来る。」という意味にもなります。

 岡田首相の書を読んでいますと、違った昭和天皇のお姿があります。皇室を無くしたがっている共産党や民進党が、現行憲法を順守せよと叫んでいますが、陛下も美智子さまも、本当にそれで良いのでしょうか。

 次回は、2・26事件について述べます。岡田首相が一番力を入れて語っており、日本にとっても最重要事件の一つです。

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