村田良平氏著『なぜ外務省はダメになったか』( 平成14年刊 扶桑社 ) を、読了しました。
縦割り行政が日本をダメにしている、省益あって国益なしなど、官僚社会をあらわす言葉として何度も耳にしてきました。日本国内での話だとばかり思っていましたが、国外においても同様になっているとは、予想もしていませんでした。
知らないことというより、知りたかったことを数多く教えてくれた、有意義な本でした。
昭和4年生まれの氏は、今年88才です。京都大学を卒業後に外務省へ入り、外務省のトップである次官となり、駐米大使、駐独大使を務めた人物です。元同僚だった岡崎久彦氏が、推薦文を巻頭に寄せていますので、まずそれを紹介します。
「村田大使の新著出版は、近来にない快挙である。」
「およそ役人が四囲に気兼ねしながら書いた文章ほど、つまらないものはない。」
「私は氏との長いつき合いで、世情の毀誉をおもんばかって筆を曲げることをしない、信念と見識のある人と知っていた。」
「氏は最近の産経新聞で、外務省の後輩を実名で批判した。」
「それを聞いた外務省の、現役・OBの間に衝撃が走った。」
「国家のために必要な時は、西園寺の言う大勇が必要なのであろう。外務省改革問題の嵐の中の現在、私は村田次官の大勇を評価する。」
この本が出版される直接のきっかけとなったのは、当時の世間を騒がせた二つの事件です。
1. 外務省役人による、官房機密費流用事件 ( 平成13年発覚 )
2. 瀋陽総領事館における脱北者への、不当な対応事件 ( 平成14年 )
記憶を辿ってみますと、連日テレビや新聞で騒がれ、外務省が大いに叩かれていた事件だったと思い出します。本題に入る前に、事件の概要を紹介しておきます。
〈 1. 外務省役人による、官房機密費流用事件 ( 平成13年発覚 ) 〉
金高哲一家など5人の亡命者が、日本国総領事館に駆け込んだところを、中国の武装警察官に取り押さえられました。
総領事館の敷地内に、無断で警官が足を踏み入れていたにもかかわらず、応対に出た宮下副領事が亡命者の取り押さえや敷地立ち入りへ抗議を行わず、警官の帽子を拾うなど友好的な態度をとりました。
逮捕された亡命者が、北朝鮮へ送還される可能性があったのに、何も対応しなかった様子が、支援団体NGOによりビデオカメラで撮影されており、これが国内のテレビで報道され、日本と韓国で大きな批判が起きました。
阿南駐中特命全権大使が事件発生直前に、「亡命者が大使館に入ってきた場合は、追い返すよう」にと、指示を出していたことも明らかになり、さらに問題が大きくなりました。