ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

溜まっている千葉日報新聞 - 17 ( 「東京裁判史観」と「コミンテルン史観」 )

2025-01-21 09:14:00 | 徒然の記

  (9)読書に勝る良薬はない。

 保坂氏が、「真正保守」政治家に求めた「十カ条」の9番目の条件です。前回これを氏の嘘と書きましたが、「嘘」というのは言い過ぎだったかもしれません。

 しかし「虚言」でないかという疑いが残ります。読書は有意義ですが、「これに勝る良薬はない」と言うのは言い過ぎです。頭痛、腹痛、胃痛に、読書が良薬になるのかと、つい屁理屈を言いたくなります。漠然と語らず、せめて「知性・教養」のためにとか限定の言葉が必要でしょう。

 平成8年に、藤岡信勝氏が徳間書店から出した『汚辱の近現代史』という著作があります。平成30年に読んで、「ねこ庭」で紹介しました。

 参考になったのは、「東京裁判史観」と「コミンテルン史観」という二つの「史観」の説明でした。

  ・「東京裁判史観」で、一番効果があったのは南京事件です。

  ・東京裁判という場を利用して、日本軍が南京で20万人もの中国人を虐殺したとし、日本は悪逆無道の国であるとの印象を、国民に植え付ける作業が大々的に行われました。

 この話は多くの人が知っていますが、次の事実は知りませんでした。

  ・ただし東京裁判が扱ったのは、昭和 3年 ( 1928年 ) 以降の時期です。

  ・明治維新の時期にまでさかのぼって、日本が侵略国家であるという歴史認識を完成させたのは、マルクス主義者たちでした。

  ・それはどういうことかと言うと、昭和 2年 ( 1927年 ) と昭和 7年 ( 1932年 ) に、国際共産党組織・コミンテルンが、日本に対しテーゼを出し、

  ・日本の天皇制は絶対主義的天皇制であると、分析しました。つまり日本は、基本的にはまだ封建制の社会であると規定した訳です。

  ・なぜそうしたのか。

  ・当時の日本共産党は、資本主義打倒を基本方針としていましたが、ソ連は、自らの国家利益のために、日本そのものを解体しなければならないと考え、資本主義打倒の前に天皇制を倒さねばならないというテーゼを打ち出したのです。

  ・日本は、近代国家を形成するために、天皇を中心に国民を統合してきましたから、天皇制打倒は日本国家の解体を意味します。

  ・ソ連は天皇制を廃止して日本を解体し、ソ連の占領下に置こうとしたのです。

 藤岡氏はかって共産党員でしたから、説明には信憑性があります。

  ・こうして、アメリカとソ連という二つの国家の国益に基づく、二つの史観 ( 「東京裁判史観」と「コミンテルン史観」 ) が占領下にドッキングして、

  ・日本には一貫して暗黒の時代があり、国内的には圧政の歴史、対外的には侵略の歴史であったというストーリーが作られた訳です。

 息子たちと「ねこ庭」を訪問された方々の参考のため、藤岡氏の略歴をウィキペディアから転記します。

〈 藤岡信勝氏 〉

  ・昭和18年北海道川上郡生まれ、82才  元共産党員

  ・日本の教育者、教育評論家、社会科学・ディベート教育 専門

  ・元東京大学、拓殖大学教授

  ・「新しい教科書を作る会」副会長、産経新聞「正論」メンバー

 年令を並べますと、保坂氏86才、藤岡氏82才です。共産主義者から変節して保守論客となり、東大教授をしていたという経歴はどことなく西部邁氏に似ています。

 「新しい教科書を作る会」の活動は話題が多く、沢山の人が知っています。藤岡氏の著作も売れています。同じ北海道の出身者ですが、保坂氏は氏を知らないらしくて『汚辱の近現代史』について言及しません。

 (9)読書に勝る良薬はない、という氏の言葉を「嘘」だと言った理由がここにあります。昭和史の研究者が、藤岡氏の著作を読んでいないというのではお話になりません。

 重要なのは、藤岡氏の次の説明です。

  ・アメリカとソ連は、日本弱体化のための工作活動を役割分担した。

  ・日本国内での軍部批判、軍国主義否定、平和活動に関する浸透活動はソ連に任せる。( コミンテルン史観を活用 )

  ・アメリカは、国際的な日本への批判攻撃、例えば国連、中国、韓国・北朝鮮等の反日活動への支援に力を入れる。( 東京裁判史観を活用 )

 信じる信じないは別として、保坂氏がこういう意見もあったと言及しないのが不思議です。だから「ねこ庭」は、今でも、

 (9)読書に勝る良薬はない、という氏の言葉を「嘘」だと言いたくなります。

 「憎しみと恨み」のない氏に対し、ここまでする必要があったのか、なかったのか。ためらいが残りますが、卑怯な「変節漢」たちの言説の悪影響を思うと、致し方なしという気がします。

 後味の悪い「ねこ庭」になりましたが、本日で「溜まっている千葉日報新聞」のシリーズを終わりとします。おつき合いに感謝いたします。

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