episode 10 ひき子さん
星真一は東中学の一年生。
バスケ部の部活で帰りが遅くなってしまった。
ばんばんとボールを床にたたきつけた疲れがまだのこっている。
黒川にかかった朝日橋までさしかかっていた。
そろそろ9時なる。
お腹がすいていたので、少しでも早く家に帰りたくて、この橋を渡ることにしたのだが。
こわかった。
怖いというより悲しかった。
ここは小学校のときつきあっていた恵子ちゃんがバイクにはねられて死んだところだ。
あんなことがなければ中学生になってもずっと一緒でいられたのに。
幼馴染で、幼稚園のころから仲良しだった。
いつも一緒にあそんだ。
よくこの川岸で砂遊びをしたものだった。
ああ、恵子ちゃん、いまごろ東中学ふたりでかよえたのに――。
バイクにのっていたのは暴走族化沼連合の沢木だった。
星は沢木をいまでも恨んでいた。
恵子はバイクにひきずられて血だらけの肉団子みたいになって息絶えていた。
大人たちがそうはなしていた。
あの日のことはいまでも忘れない。
忘れるわけがない。
恵子の母親はそのために神経を病みいまでも上都賀病院の精神科に入退院を繰り返している。
ふいに河川敷でバイクのエンジン音がした。
こりもせず暴走族の連中が河川敷公園をわがもの顔にのりまわしている。
――すこしおかしい。
バイクの後ろになにかひきずっている。
夜目でよくわからないが、どうやら猫らしい。
猫をロープでくくってひきずっているのだ。
「ひどいことをする」
真一は怒りがこみあげてきた。
恵子のことをいま思い出していたばかりだ。
河川敷にかけおりた。
「やめろ。やめろ。猫をひきずるなんて、やめるんだ」
「なにイキガッテルンダ」
男はまちがいなく沢木だった。
「なんなら、おまえをひきずってやろうか」
真一は怒りで体があつくなった。
こいつが、恵子をひきずって殺してしまつたのだ。
事故とうことで処理されてしまったが、こいつに殺意はなかったのか?
沢木はバイクからおりようとした。
ギョッとした顔になった。
「おまえ、だれだ」
真一の背後をみて震え声でいった。
たしかにうしろから呼吸音がする。
うしろに、だれかいるようだ。
「だれなんだよ」
沢木はおびえている。
バイクにまたがると、フルスピードで逃げ出した。
うしろにひきずられているのは、まちがいなく猫の死骸だった。
わあっと、沢木の絶叫が前方の闇の中でした。
ころころと沢木の首がころがってきた。
真一は沢木を追いかけるのをやめて、その首をひろいあげた。
あとになって、朝日橋の下の段ボールの家に住んでいるホームレスが証言した。
男の目撃証言は――。
沢木の首をバスケのボールのようにはずませていた少年がいた。
バンバンと公園の道に丸い肉団子のような首をたたきつけていた。
ということだった。
人の首が弾むわけがない。
置き去りにされていたスコップに激突したからといって。
人の首がすっぱりと切り落とされるわけがない。
そのへんのところは――。
田舎町の都市伝説ですからあまりつきつめてリアルにかんがえないでください。
もうひとつ。
蛇足。つけたしです。
上都賀病院の病室でこのころ恵子の母親が、ふいに正気にもどりました。
「恵子が、あいにきてくれた。恵子がわたしにあいにきてくれた」
とくりかえしいって、涙をこぼしていたそうです。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
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星真一は東中学の一年生。
バスケ部の部活で帰りが遅くなってしまった。
ばんばんとボールを床にたたきつけた疲れがまだのこっている。
黒川にかかった朝日橋までさしかかっていた。
そろそろ9時なる。
お腹がすいていたので、少しでも早く家に帰りたくて、この橋を渡ることにしたのだが。
こわかった。
怖いというより悲しかった。
ここは小学校のときつきあっていた恵子ちゃんがバイクにはねられて死んだところだ。
あんなことがなければ中学生になってもずっと一緒でいられたのに。
幼馴染で、幼稚園のころから仲良しだった。
いつも一緒にあそんだ。
よくこの川岸で砂遊びをしたものだった。
ああ、恵子ちゃん、いまごろ東中学ふたりでかよえたのに――。
バイクにのっていたのは暴走族化沼連合の沢木だった。
星は沢木をいまでも恨んでいた。
恵子はバイクにひきずられて血だらけの肉団子みたいになって息絶えていた。
大人たちがそうはなしていた。
あの日のことはいまでも忘れない。
忘れるわけがない。
恵子の母親はそのために神経を病みいまでも上都賀病院の精神科に入退院を繰り返している。
ふいに河川敷でバイクのエンジン音がした。
こりもせず暴走族の連中が河川敷公園をわがもの顔にのりまわしている。
――すこしおかしい。
バイクの後ろになにかひきずっている。
夜目でよくわからないが、どうやら猫らしい。
猫をロープでくくってひきずっているのだ。
「ひどいことをする」
真一は怒りがこみあげてきた。
恵子のことをいま思い出していたばかりだ。
河川敷にかけおりた。
「やめろ。やめろ。猫をひきずるなんて、やめるんだ」
「なにイキガッテルンダ」
男はまちがいなく沢木だった。
「なんなら、おまえをひきずってやろうか」
真一は怒りで体があつくなった。
こいつが、恵子をひきずって殺してしまつたのだ。
事故とうことで処理されてしまったが、こいつに殺意はなかったのか?
沢木はバイクからおりようとした。
ギョッとした顔になった。
「おまえ、だれだ」
真一の背後をみて震え声でいった。
たしかにうしろから呼吸音がする。
うしろに、だれかいるようだ。
「だれなんだよ」
沢木はおびえている。
バイクにまたがると、フルスピードで逃げ出した。
うしろにひきずられているのは、まちがいなく猫の死骸だった。
わあっと、沢木の絶叫が前方の闇の中でした。
ころころと沢木の首がころがってきた。
真一は沢木を追いかけるのをやめて、その首をひろいあげた。
あとになって、朝日橋の下の段ボールの家に住んでいるホームレスが証言した。
男の目撃証言は――。
沢木の首をバスケのボールのようにはずませていた少年がいた。
バンバンと公園の道に丸い肉団子のような首をたたきつけていた。
ということだった。
人の首が弾むわけがない。
置き去りにされていたスコップに激突したからといって。
人の首がすっぱりと切り落とされるわけがない。
そのへんのところは――。
田舎町の都市伝説ですからあまりつきつめてリアルにかんがえないでください。
もうひとつ。
蛇足。つけたしです。
上都賀病院の病室でこのころ恵子の母親が、ふいに正気にもどりました。
「恵子が、あいにきてくれた。恵子がわたしにあいにきてくれた」
とくりかえしいって、涙をこぼしていたそうです。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
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