episode12 口裂け女2
東武日光線の新鹿沼駅で降りた。ここが、がわたしのhome townだ。まだ宵の口なのに構内は暗かった。浅草からの乗客が数人降りた。こうふんして大声で話し合っていた。スカイツリーをみてきたのがわかる。その人たちが改札をぬけるともうあとはわしだけ。下校時なので、それでも日光方面に帰る高校生はかなりいた。わたしは白いマスクをして歩きだした。母校の中央小学校が真新しくなっている。でも、わたし的には、あの古びた校舎がすきだった。いろいろな思い出がいっぱいつまっていた木造の校舎。わたしはたちどまって感傷にふけっていた。クラブ活動でおそくなった小学生が新しい校門からどっとでてきた。わたしを見てギョッと男の子がたちどまった。わたしはマスクに手をやった。並んで歩いていた少女も青白い顔をしている。わたしはマスクをとった。そして「ワタシキレイ」定番のことばをささやく。男の子は、アワアワとあわてふためいた。あわくったように逃げ出した。
「おばさん、ありがとう。わたしぃ、告られていたんだけどね、あんな草食系の子とおもわなかった。つきあうの、やめた!!」
「口裂け女とまちがったのよ。おばさんがきゅうにマスクをとったから」
「怖がったから、みなくていいものが、見えてしまったのね」
今宮神社の境内をぬけた。大ケヤキが切られていた。老樹なので幹に空洞ができて倒れる危険があるためのやむを得ない処置と立て札が設置されていた。
市役所前の十字路までさしかかった。なつかしい安喜亭のラーメンの匂いがしてきてた。そして、駐車場のむこうが「アサヤ塾」だ。わたしは中学生になってから中途入塾した。それまで、いじめられっ子だった。ところが、同じ学年の塾のクラスの子がわたしを助けてくれた。安生、星、神山、平山君。わたしがいじめられていると、どこからともなく彼らが現れた。わたしを助けてくれた。たよりになるわたしの白馬の騎士。仲良し4人組。いまごろどうしているかしら?
わたしがキレイだと認めてくれたのは、アサヤ先生だった。わたしは自信をもった。高校では演劇部で活躍した。全国高校演劇大会で優勝した。そのとき主役をこなしたのが東京の劇団の人の目にとまり、そのまま演劇をずっとつづけた。ところが、秋葉の通り魔事件にまきこまれてしまった。いや、あれはわたしのストーカーがやったことだ。わたしは両耳にたっする傷をおった。悲鳴をあげだが口が裂かれていた。声にならなかった。もうこれで、わたしの演劇人生はおわりだ。テレビドラマにだってでているのに。まだまだこれからなのに……。
掘りごたつのうえは、昔とおなじ。乱雑。本、雑誌、原稿のやまだ。アサヤ先生はコタツで原稿を書いている。もちろんパソコンだ。先生の視線の先に――わたしがいた。先生の正面に仏壇に――わたしの写真がかざられていた。先生はわたしの遺影をみながらブラインドタッチで打ち出した。
口裂け女2
東武日光線の新鹿沼駅で降りた。ここが、わたしのちhome hometown だ。
わたしはふいに気づいた。ストーカーの二突き目は、わたしの心臓につきたった。即死だった。
「先生。わたしきれいだった?」
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東武日光線の新鹿沼駅で降りた。ここが、がわたしのhome townだ。まだ宵の口なのに構内は暗かった。浅草からの乗客が数人降りた。こうふんして大声で話し合っていた。スカイツリーをみてきたのがわかる。その人たちが改札をぬけるともうあとはわしだけ。下校時なので、それでも日光方面に帰る高校生はかなりいた。わたしは白いマスクをして歩きだした。母校の中央小学校が真新しくなっている。でも、わたし的には、あの古びた校舎がすきだった。いろいろな思い出がいっぱいつまっていた木造の校舎。わたしはたちどまって感傷にふけっていた。クラブ活動でおそくなった小学生が新しい校門からどっとでてきた。わたしを見てギョッと男の子がたちどまった。わたしはマスクに手をやった。並んで歩いていた少女も青白い顔をしている。わたしはマスクをとった。そして「ワタシキレイ」定番のことばをささやく。男の子は、アワアワとあわてふためいた。あわくったように逃げ出した。
「おばさん、ありがとう。わたしぃ、告られていたんだけどね、あんな草食系の子とおもわなかった。つきあうの、やめた!!」
「口裂け女とまちがったのよ。おばさんがきゅうにマスクをとったから」
「怖がったから、みなくていいものが、見えてしまったのね」
今宮神社の境内をぬけた。大ケヤキが切られていた。老樹なので幹に空洞ができて倒れる危険があるためのやむを得ない処置と立て札が設置されていた。
市役所前の十字路までさしかかった。なつかしい安喜亭のラーメンの匂いがしてきてた。そして、駐車場のむこうが「アサヤ塾」だ。わたしは中学生になってから中途入塾した。それまで、いじめられっ子だった。ところが、同じ学年の塾のクラスの子がわたしを助けてくれた。安生、星、神山、平山君。わたしがいじめられていると、どこからともなく彼らが現れた。わたしを助けてくれた。たよりになるわたしの白馬の騎士。仲良し4人組。いまごろどうしているかしら?
わたしがキレイだと認めてくれたのは、アサヤ先生だった。わたしは自信をもった。高校では演劇部で活躍した。全国高校演劇大会で優勝した。そのとき主役をこなしたのが東京の劇団の人の目にとまり、そのまま演劇をずっとつづけた。ところが、秋葉の通り魔事件にまきこまれてしまった。いや、あれはわたしのストーカーがやったことだ。わたしは両耳にたっする傷をおった。悲鳴をあげだが口が裂かれていた。声にならなかった。もうこれで、わたしの演劇人生はおわりだ。テレビドラマにだってでているのに。まだまだこれからなのに……。
掘りごたつのうえは、昔とおなじ。乱雑。本、雑誌、原稿のやまだ。アサヤ先生はコタツで原稿を書いている。もちろんパソコンだ。先生の視線の先に――わたしがいた。先生の正面に仏壇に――わたしの写真がかざられていた。先生はわたしの遺影をみながらブラインドタッチで打ち出した。
口裂け女2
東武日光線の新鹿沼駅で降りた。ここが、わたしのちhome hometown だ。
わたしはふいに気づいた。ストーカーの二突き目は、わたしの心臓につきたった。即死だった。
「先生。わたしきれいだった?」
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