田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

とある田舎町の「学校の怪談」episode12 口裂け女2(第三稿) 麻屋与志夫

2013-01-30 08:00:59 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode12 口裂け女2

東武日光線の新鹿沼駅で降りた。
ここが、がわたしのhome townだ。
まだ宵の口なのに構内は暗かった。
浅草からの乗客が数人降りただけだった。
興奮して大声で話し合っていた。車内にひびきわたるような大声だ。
スカイツリーを見物してきたのがわかる。
「あんなに高いとはおもわなかったっぺ」
「二股山より高かっぺよ」
「それにひともぎょうさんいてよぉ」
U字工事のお笑いですっかり全国区となったなつかしい栃木弁だ。
にぎやかな御一行様が改札をぬけるともうあとはわしだけ。

下校時なので、それでも日光方面に帰る高校生はかなりいた。

わたしは白いマスクをして歩きだした。
母校の中央小学校が真新しくなっていた。
驚き――。でも、わたし的には、あの古びた校舎のほうが好きだ。
いろいろな思い出がいっぱいつまっていた木造の校舎。
わたしはたちどまって感傷にふけっていた。
クラブ活動でおそくなった小学生が新しい校門からどっとはきだされた。
わたしを見てギョッと男の子がたちどまった。
わたしはマスクに手をやった。
並んで歩いていた少女も青白い顔をしている。
わたしはマスクをとった。
そして「ワタシキレイ」定番のことばをささやく。
男の子は、アワアワとあわてふためいた。
あわくったように逃げ出した。
残された少女がほほ笑みながら話しかけてきた。
「おばさん、ありがとう。わたしぃ、告られていたんだけどね、あんな草食系の子とおもわなかった。つきあうの、やめた!!」
「口裂け女とまちがったのよ。おばさんがきゅうにマスクをとったから」
「怖がったから、みなくていいものが、見えてしまったのね」
口裂け女だ!
口裂け女だ!!
口裂け女だ!!!
離れたところでこちらを指さして少年が叫んでいる。
「ワー。ワー」
と、悲鳴を上げて小学生が「駅の街」の広場のほうへ逃げていく。
クモの子を散らすように逃げていく。
逃げていく。
「ワァー。ワァー。口裂け女だ。口裂け女が出たぞ」
ランドセルがガクガクと音をたてている。
ドタドタと靴音が響く。
夕暮れの街に恐怖のサプライズだ。

今宮神社の境内をぬけた。
大ケヤキが切られていた。
老樹なので幹に空洞ができて倒れる危険がある。
そのための処置。という立て札が設置されていた。
市役所前の十字路までさしかかった。
なつかしい安喜亭のラーメンの匂いがしてきた。
田舎町では、乗用車でラーメン店にやってくる。
広いのに、満車だった。
そして、その駐車場のむこうが「アサヤ塾」だ。

わたしは中学生になってから中途入塾した。
それまで、学校では陰湿ないじめにあっていた。
いじめられっ子だった。
ところが、同じ学年の塾のクラスの子がわたしを助けてくれた。
安生、星、神山、平山君たち。
わたしがいじめられていると、どこからともなく彼らが現れた。
わたしを助けてくれた。
たよりになるわたしの白馬の騎士。
仲良し4人組。
いまごろどうしているかしら? 
 
わたしがキレイだと認めてくれたのは、アサヤ先生だった。
わたしは自信をもった。みごと進学した宇都宮女子高校では演劇部で活躍した。
全国高校演劇大会で優勝した。
そのとき主役をこなした。
東京の向日葵劇団の人の目にとまった。
その劇団に研究生としはいった。
そのまま演劇をずっとつづけた。
テレビの連ドラにもでるようになっていた。
ところが、秋葉の通り魔事件にまきこまれてしまった。
いや、あれはわたしのストーカーがやったことだ。
わたしは両耳にたっする傷をおった。
悲鳴をあげだが口が裂かれていた。
声にならなかった。
もうこれで、わたしの演劇人生はおわりだ。
声のでない女優ななんて……。
わたしは母を呼んだ。母に助けを求めた。
「お母さんたすけて。まだお芝居止めたくない――」
どうしてこんなことが、起きたの。
こんなことになったの。
どうしてこうなの?
ナゼ。
ナゼなの。
こたえは、もどってこない。
ストーカーは白昼のアキバでナイフをきらめかせている。
こんなことって、あっていいの。
でも、すごくリアルな狂気の姿だ。
イタイ、いたい。
お母さん。助けて。
わたしは口裂け女なんかになりたくない。
ノロウ。のろう。呪う。
こんな運命を呪ってやる。
栄光の絶頂からの転落。
いやだぁ。
こんなのってひど過ぎる。
テッペンから地獄へ真っ逆さまだ。
天空から地獄へ投げ落とされた。
わたしは堕天使だ。
でも、わたしはなにも悪いことなんかしていない。
痛い。痛いよ。お母さん。助けて。
アサヤ先生タスケテ。
わたしの白馬の騎士。
タスケテ。
テレビドラマにだってでているのに。
まだまだこれからなのに……。
声が出ない。
口の中は血がいっぱい。
ゴボゴボと血があふれ出る。
口裂け女。
わたしは口裂け女。
わたしこんなところで口を裂かれるなんて。
いや。
これからなんだから。
これからまだまだいっぱい芝居をやりたい。
テレビにもでたい。
わたしきれい。
わたしはきれいなの。
 
掘りごたつの上は、あのころとおなじ。
乱雑。まるであのころと同じだ。
本、雑誌、原稿のやまだ。
アサヤ先生はコタツで原稿を書いている。
もちろんパソコンだ。
先生の視線の先に――わたしがいた。
先生の正面の仏壇に――わたしの写真がかざられていた。
先生はわたしの遺影をみながらブラインドタッチで打ち出した。 

episode12口裂け女2
東武日光線の新鹿沼駅で降りた。
ここが、わたしの hometownだ。

わたしはふいに気づいた。
ストーカーの二突き目は、わたしの心臓につきたった。
わたしは死んでいる。
わたし亡霊だ。
みえるひとにしか、見えないのだ。
「先生。わたしきれいだった?」
わたしは昔ながらの、すこしも変わっていない教室にいた。
わたしの白馬の騎士の声がする。
すごくきれいだよ。
美香ちゃんのことはぼくらが守るから。
守るから。
「先生。アサヤ先生。その「怪談」が打ち終わるまでココにいていいかしら」



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とある田舎町の「学校の怪談」episode12 口裂け女2(第二稿) 麻屋与志夫

2013-01-30 05:38:18 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode12 口裂け女2

東武日光線の新鹿沼駅で降りた。
ここが、がわたしのhome townだ。
まだ宵の口なのに構内は暗かった。
浅草からの乗客が数人降りただけだった。
興奮して大声で話し合っていた。車内にひびきわたるような大声だ。
スカイツリーを見物してきたのがわかる。
「あんなに高いとはおもわなかったっぺ」
「二股山より高かっぺよ」
「それにひともぎょうさんいてよぉ」
U字工事のお笑いですっかり全国区となったなつかしい栃木弁だ。
にぎやかな御一行様が改札をぬけるともうあとはわしだけ。
下校時なので、それでも日光方面に帰る高校生はかなりいた。
わたしは白いマスクをして歩きだした。
母校の中央小学校が真新しくなっている。
驚き――。でも、わたし的には、あの古びた校舎のほうが好きだ。
いろいろな思い出がいっぱいつまっていた木造の校舎。
わたしはたちどまって感傷にふけっていた。
クラブ活動でおそくなった小学生が新しい校門からどっとはきだされた。
わたしを見てギョッと男の子がたちどまった。
わたしはマスクに手をやった。
並んで歩いていた少女も青白い顔をしている。
わたしはマスクをとった。
そして「ワタシキレイ」定番のことばをささやく。
男の子は、アワアワとあわてふためいた。
あわくったように逃げ出した。
残された少女がほほ笑みながら話しかけてきた。
「おばさん、ありがとう。わたしぃ、告られていたんだけどね、あんな草食系の子とおもわなかった。つきあうの、やめた!!」
「口裂け女とまちがったのよ。おばさんがきゅうにマスクをとったから」
「怖がったから、みなくていいものが、見えてしまったのね」
口裂け女だ!
口裂け女だ!!
口裂け女だ!!!
離れたところでこちらを指さして少年が叫んでいる。

今宮神社の境内をぬけた。
大ケヤキが切られていた。
老樹なので幹に空洞ができて倒れる危険がある。
そのための処置。という立て札が設置されていた。
市役所前の十字路までさしかかった。
なつかしい安喜亭のラーメンの匂いがしてきてた。
田舎町では、乗用車でラーメン店にやってくる。
広いのに、満車だった。
そして、その駐車場のむこうが「アサヤ塾」だ。

わたしは中学生になってから中途入塾した。
それまで、学校では陰湿ないじめにあっていた。
いじめられっ子だった。
ところが、同じ学年の塾のクラスの子がわたしを助けてくれた。
安生、星、神山、平山君たち。
わたしがいじめられていると、どこからともなく彼らが現れた。
わたしを助けてくれた。
たよりになるわたしの白馬の騎士。
仲良し4人組。
いまごろどうしているかしら? 
 
わたしがキレイだと認めてくれたのは、アサヤ先生だった。
わたしは自信をもった。みごと進学した宇都宮女子高校では演劇部で活躍した。
全国高校演劇大会で優勝した。
そのとき主役をこなした。
東京の劇団の人の目にとまった。
その劇団に研究生としはいった。
そのまま演劇をずっとつづけた。
テレビの連ドラにもでるようになっていた。
ところが、秋葉の通り魔事件にまきこまれてしまった。
いや、あれはわたしのストーカーがやったことだ。
わたしは両耳にたっする傷をおった。
悲鳴をあげだが口が裂かれていた。
声にならなかった。
もうこれで、わたしの演劇人生はおわりだ。
声のでない女優ななんて……。
わたしは母を呼んだ。母に助けを求めた。
「お母さんたすけて。まだお芝居止めたくない――」
アサヤ先生たすけて。
わたしの白馬の騎士。
たすけて。
テレビドラマにだってでているのに。
まだまだこれからなのに……。
声が出ない。
口の中は血がいっぱい。
ゴボゴボと血があふれ出る。
口裂け女。
わたしは口裂け女。
わたしきれい。
わたしはきれいなの。
 
掘りごたつの上は、昔とおなじ。
乱雑。まるであのころと同じだ。
本、雑誌、原稿のやまだ。
アサヤ先生はコタツで原稿を書いている。
もちろんパソコンだ。
先生の視線の先に――わたしがいた。
先生の正面の仏壇に――わたしの写真がかざられていた。
先生はわたしの遺影をみながらブラインドタッチで打ち出した。 

episode12口裂け女2
東武日光線の新鹿沼駅で降りた。
ここが、わたしのhome hometown だ。

わたしはふいに気づいた。
ストーカーの二突き目は、わたしの心臓につきたった。
わたしは死んでいる。
わたし亡霊だ。
みえるひとにしか、見えないのだ。
「先生。わたしきれいだった?」
わたしは昔ながらの、すこしも変わっていない教室にいた。
わたしの白馬の騎士のこえがする。
すごくきれいだよ。
美香ちゃんのことはぼくらが守るから。
守るから。
「先生。アサヤ先生。その「怪談」が打ち終わるまでココにいていいかしら」

●第二稿です。すきなテーマなのでなんどでも書き改めたいと思います。コメントお願いします。


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