田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

香取俊介「望郷異聞」で文禄・慶長の役の勉強を  麻屋与志夫

2013-07-22 17:09:05 | ブログ
7月22日 月曜日
香取俊介「望郷異聞上、中、下」

●アマゾン 香取俊介で検索するとすぐにでます。
ぜひ、読んでください。
塾講師麻屋与志夫としての推薦図書です。

●上記の本。夏休みの自由研究の課題本としてもお薦めです。
●社会科でも、たった数行ですまされてしまう。豊臣秀吉の朝鮮出兵。文禄・慶長の役。
――ところがこの小説は鋳物師義造、加代夫婦のこの時代に翻弄される悲しい物語を中心に据えて、その時代に生きたひとびとが目前にうかびあがってくるように細かく書き込まれています。

●けっして教室では知ることのできない時代認識。
社会科の勉強が、こうした本を読むことによって深まり、興味をもつことができるようになりますよ。

●常日頃は、受験のための社会科勉強に精を出しているあなた。
夏休、イマデショウ、ぜひ「望郷異聞」を読んでください。

●GGはアマゾンのキンドルを購入して読んでいます。
寝室で明かりが暗くても楽に読めます。
そして本のようにページをめくる苦労もない。
タッチするだけ。
ものぐさになった、高齢者にも楽に操作できて、読書の快適空間を構築できます。
読書が習慣になります。
最高齢者のGGが見つけたキンドルは新しいオモチャです。
図書館をかかえて寝床にいるようなものです。
読書の楽しみを満喫できること請け合いです。

●老いも、若きも電子書籍を読もう!!

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超短編42 週末は日光で過ごしたいわ  麻屋与志夫

2013-07-22 08:46:35 | 超短編小説
42 週末は日光で過ごしたいわ

 元彼女の玲加から携帯がかかってきた。
「お久しぶり。翔平、元気だった。週末は日光で過ごしたいわ。いいかな」
 お久しぶりだなんて、イッタイナンネンブリダトイウノダ。
 あれから、5年はたっている。
 まったく、もう――まるで、昨日別れたばかりみたいな挨拶だ。
 
 彼女にはいつもおどろかされる。
「いまどこにいる」
 焦る心をおさえながら、翔平は、さっそく、ききたいことを声にだす。
 つもる恨みは会ってからにしょう。
「もう、日光駅に着いているの」
 背後で駅のアナウンスがかすにきこえている。
 日本に帰ってきていたのなら、もっと早く連絡をくれればいいものを――。
 駅には玲加が子どもといっしょにまっていた。
 五歳くらいのかわいい女の子だった。
「レイコ。あなたのパパよ」
「会いたかった。あいたかった……。パパ」
 さすが帰国子女。
 英語で挨拶されてあわてた。
 英語で「会えて、パパもうれしいよ」と応えてから……。
 ええ、いまなんていった。
 パパだって。
 あとのことばがつづかない。絶句してしまった。
 彼女にはいつもおどろかされる。
 
 レイコを膝のうえにかかえて、玲加は隣に乗り込んできた。
 女の子は玲加に似て日本人離れした色白だった。
 これだったらニューヨークで生活していても、白人の子でとおるだろう。
 玲加は黙って、レイコの襟を開けて鎖骨のあたりを見せる。
 首筋の下部にほんのりと三日月がたの痣がうきでていた。
 まちがいなく、あなたの子よ。と目が笑っている。

「なぜ知らせてくれなかった」
「ほんとうに、愛しあっていると120%自信がもてたら5年後に結婚しょう。そういったのは、あなたよ」
 幼くして愛を知らず。
 どこかで、そんなタイトルの小説をよんだ記憶がある。
 玲加は大学をでたばかりの新任の英語教師。
 翔平はその生徒。18歳。高校の三年生だった。
 春にある文学賞をとった。賞金で霧降高原に家を買った。
 ここで玲加と暮らしながら小説をかく予定だった。
 あんな負け惜しみはいうべきではなかった。
 ただでさえ、教師と生徒。
 年齢差をきにしていた玲加が翔平のことばに敏感に反応した。
 そして出した決論が5年間の仮初の別離だった。
 離れてから、いかに玲加を愛していたか、翔平にはすぐにわかった。
 心を傷つけたことをあやまり、すぐにでも結婚したい。
 まいにち玲加とこの日光の霧降ですごしたい。夢中で、玲加の消息をたずねまわった。
 アメリカに渡航したとしかわからなかった。

「一人住まいなの」
 雑然とした部屋をみて玲加が翔平にきく。
 あたりまえだろう。ぼくには玲加しかいない。
 もっと早く、帰ってきてくれればよかったのに。
 ぼくが、ほかの、誰かと結婚しているとでもおもっていたのか。

「会いたかった。玲加。ぼくはあのあとすぐに……とんでもないことをいって、玲加を傷つけたと理解した。反省した、……ところが連絡のしょうもなかった」
「携帯もすてた。下宿もすぐにでて成田からニューヨークにいったの。友だちがいたから」
「子どもができたのなら、どうしてすぐに帰国しなかった」
「わからない。年上の女の意地かしらね。妊娠したから、子どもを産んだから、結婚できた。……なんておもわれたくなかったのよ。きっと、そうよ」
 おもいでの戦場ヶ原にドライブした。
 玲加の希望だつた。
 レイコははじめての木道を歩いてよろこんでいる。
 とびはねている。
「パパとママ、ここでファストキスしたんでしょう」
「ああそうだよ。レイコ、これからは三人いっしょだ」
「わぁい。うれしいな。うれしいな」
 日本語も歳のわりに達者だ。
 玲加に似て、言語能力がすぐれているのだろう。
 将来は、外交官にでも通訳にでもなれるだろう。
 さつそく、親バカぶり。
 いいきなもんだ。
 あんなに玲加が別れたまま連絡を断ったことを恨んでいたのに。

「愛している。玲加。スゴクさびしかった」
「わたしもよ」
 つないだ手をぐっとにぎってきた。
「すぐ結婚しょう」
「いいわよ」
 五年の歳月が、ふたりを素直にしていた。
「パパ。ママにキスしたら」
 そうした。
 レイコにいわれたとうりにした。

 玲加の唇はひえてつめたかった。
「愛している。玲加」
 玲加が情熱的なキスをかえしてきた。
 それでも、唇はつめたかった。
 日光は愛を育む場所にはことかかない。
 帰りに中禅寺湖。
 華厳の滝。裏見の滝。
 お化け地蔵。東照宮。そして霧降の滝。

「日本ワンダフル。日光ワンダフル」
 レイコは英語と日本語で感動を表現している。
 家に戻る。
 玲加がげんなりしている。
 元気がない。
 やっぱりすこしおかしい。
 むりに健康を装っていたのだ。
 顔から冷や汗が流れている。
 青白い肌の色。
「どうしたんだ。どこか悪いのか」
「イイ週末をありがとう」
 翔平このとき不意に悟った。
 彼女のいう週末は、終末なのだ。
 彼女は病んでいる。

「終末は日光で過ごしたいわ」
 


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