田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

幻覚/夕日の中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-01-06 10:07:32 | Weblog
幻覚だった。

また幻覚をみていたわけではない。

いや、みていたのだ。

錯覚なんかじゃない。

あの六本木のジャズクラブで歌ってからだ。

大麻タバコの副煙をすったからだ。

タバコだって副煙のほうが害があると最近いわれはじめた。

タバコを吸う夫の妻は非喫煙者の妻より肺ガンの死亡率が高い。

そんなことが週刊誌にのっていた。

いま検査をうけたら大麻をやったと判定されてしまうのだろうか。

「あんたはもう落ち目だな」

わたしの顔に大麻のきつい臭いを含んだ煙を吹きかけて男はいいはなった。

尊大ぶったチビ。

ふいにとなりのスタンドからはなしかけてきた。

蝶ネクタイなんかしていた。目はずるそうだった。

昼間の喧躁が、夜のにぎわいに変わる時間だ。

玲菜はオリオン通りをはじからはじまて二往復した。

誰も声をかけてくれなかった。

誰もふりかえらなかった。

(わたしも人気が落ちたものね。アラフオの人気下降中のジャズスィンガー。ジャズ

がわるいのではない。売れてる人は売れているのだから)

「あなたが、わるいのではない」

理沙子と名乗ったひとが、並んであるいていた。

「あなた狙われているのよ」

「どういうこと。理沙子さんがときどきぶれてみえる。そして消える」

玲菜はきく。

「それはあなたが、能力にめざめかけているからよ」

「能力……」

「そう。妖気をみる力」

「じゃ、わたしがみているものは、幻なんかじゃないわけ」

あたりをあらためて見回してみた。

オリオン通りの中央、野外ステージのあるイベント広場の近くに立っていた。

ここは……。

数年前にガソリンを浴びせられ宝石店の女子店員が焼死したところだ。

白い煙の渦の中に何人もの女性がもがいていた。

「あのひとたちは……」

「そう。浮遊霊。わたしも初めておかしなものをみたときには、気が狂ったかとお

もった」

「こわいわ。こちらむいてわらっている」

「彼女たちには、わたしたちがみているのが、わかっているの」

「いやあ、近づいてくる」

「能力に目覚めたとき、わたしは、こわくて、死のうとおもった」





one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
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ああ、快感。






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