田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

探し物

2007-09-11 15:11:43 | Weblog
9月10日 月曜日 晴れ
●カミサンがそわそわと部屋から部屋へと歩きまわっている。
「なんですか。お探し物は……」
「図書券。手に持っていたはずなのに。見つからないの」
しょぼんとしている。屑かごを探し、いくつもある財布をあけてカードをなんまいも確かめている。
わたしはあわてない。いつものことだから、心配はしない。なにかみつからなくなる。忘れ物をする。慣れているからあわてないのだ。これが、きゅうに年取ってから忘れっぽくなったのだと、みんなに心配してもらえるのだろうが。お母さんはわかいときからだか。と娘たちに相談しても、テンデ相手にしてくれない。

●スーパーに自転車を置いてきてしまう。それをとりにいき、ついでに買い物をする。間違いなく自転車にはのってくる。                         
「あれ、買い物かごは? 」
「あっ、忘れた」

●「お母さんは人生の半分はさがしものしている人だわね」
娘たちが詠嘆まじりにいったものだ。
あなたが、やっとさがしあてたわたし。丈夫でながもちしなきゃね。

●図書券は黒井千次の「群棲」の上にあるのをわたしがみつけた。半日にわたる捜索はあっけなくおわった。

●ブラッキーは、猫ちゃんは、忘れ物をするだろうか。わたしたちが、部屋のすみずみまで探し物をしている間もながながとソファで袋のようになって寝ていた。

チョウ

2007-09-10 11:32:03 | Weblog
9月9日 日曜日 晴れ
●天理教の教会の生垣にチョウがいた。カミサンにあわてて携帯を渡す。シャカ。シャカ。これがその写真です。わたしたちは、チョウの種類にはうとい。ともかくきれいなチョウだった。

●赤とんぼもぼつぼつ見かける。季節は移り変わりつつある。庭のアンジェラの色が鮮やかな紅色にはえている。湿度と温度の関係なのだろうか。今頃になると庭の花が美しい。

●ブラッキーも気持ちよさそうに長く袋のようになって昼寝をしている。

●カミサンは間近に控えた倅の結婚式に何を着ていくかまだ悩んでいる。娘たちや息子や嫁にメールで相談している。悩め。なやめ。ナヤメ。着ていくもので悩むなんてたのしいことだ。それも倅の結婚式だ。

納得がいかない

2007-09-08 21:22:12 | Weblog
9月8日 土曜日 晴れ
●納得のいかないことがおおすぎる。
朝早く起きて、というよりもとなりでねていたブラッキーに起こされ、階段を下りて彼女の餌皿までつれていかれる。猫は飼い主に似るというがブラッキーもいつもお腹をすかしている。朝がまちどおしいのだ。皿にナメクジがいた。ぬらぬらして気持ちが悪い。「スラッグス」というショーン・ハトスンの小説を読んだことがあった。あれも読後感の悪い作品だった。だいたい、わたしはぬらぬらしたものがきらいなのだ。しかし、このナメクジがどこから皿に入り込んでくるのかわからない。初めのうちはテッシュでとって捨てていた。ところが毎朝皿に這い込んでくる。どこかでナメクジが大量発生しているのだ。ナメクジはどのようにして発生し、成長してどうなるのかわからない。納得のいかない、わからないことがおおすぎるな。床を剝してみたらナメクジが重なりあって蠢いている。古い民家だからなにが起きても不思議はない。ナメクジの大群が床下でひっそりと潜んでいて、いつかこの皿にもりあがる。そんなことになったらと不安だ。

●ひさしぶりで一人で上京した。用事をすませて飯田橋の駅前に出店したというブックオフに寄った。というわけにはいかなかった。

●納得のいかないことがありすぎる。駅の構内で迷子になったのだ。後楽出口という長い気傾斜のエスカレーターに乗って出たところは見覚えのない街だった。こういうことを恐れて前もって一度先月きて土地勘をつけておいたのに。どうなっているのだ。わたしの勘にも狂いがでたのだろうか。ワカリマセーン!! いつもはそばにいるカミサンがいないからだということにした。田舎住まいが長すぎたこともあるのだろう。

●これからフルタイムの作家になろうとしているのにこんなことではだめだ。自己叱責。それにしても都会は暑い。あしもとから熱気が吹きあがってくる。ほうほうの体たらくで帰宅した。

●なんだか、納得のいかない一日だった。



手燭台

2007-09-07 18:54:32 | Weblog
9月7日 金曜日 雨、曇り、晴れ
●珍しいものが食卓に出ていた。手燭台だ。ローソクを立てた燭台を手にもち移動できる。現代風にいえば、懐中電灯だ。いや、このことばもすでに死語。ハンドライト。あるいはフラッシュライト。というのだろうか。

●河田町の「備後屋」で買ったものだ。手で握る所に、わたしが野州麻を細く撚り合わせた縄を巻きつけた。麻縄を握りに巻きつけたことによって他に類のない民芸品となった。と、まあ本人は自画自賛。

●カミサンにはコレクター的な性癖がある。なにか一つのものに凝ると、もういけない。無性にその品を集める。かわいそうに貧乏書生の妻だ。あまり値のはるものは収集出来ない。ある時は、ピエロ人形でありまたある時は器であったりした。器は「広永窯」の土平さんのものが好きで神楽坂の「釉」さんにはずいぶんと通った。

●西早稲田に長いこと住んでいた。あの近辺には知り合いが多い。椿山荘で友だちと会食した時のことをよく話題にする。「こんどは、パパといきたいわ」いつになっても、子供を育てていた頃についた口癖で、このGGをパパという。「パパ」などと澄んだ艶のある声でスーパーの店内などでよびかけられると、珍事が起きる。わたしとカミサンを見比べて「このふたりどういう関係なの」と疑惑の目が集中する。カミサンは自称52歳。声だけ聞けば娘のようだ。のろけているうちに、手燭台から話題が遠ざかってしまった。

●台風で停電でもあったらと、カミサンが心積もりで準備した手燭台。思い出のある品だ。人は物にとりかこまれて生きている。物には記憶がついてまわる。そうなるとわたしたちの体の一部のようなものだ。


バラの名前

2007-09-06 21:55:37 | Weblog
9月6日 木曜日 夕刻より雨
●台風が来るというので、バラの鉢を部屋にこむ。そのうちのいく鉢かはリルケのバラだ。このバラはいまだに名前がわからない。カミサンが30年くらい前に買った。初めて買ったバラだ。カミサンが植えたバラを見て「その辺にあるのバラだ」といった男がいた。ところが咲いてみると見事な大輪のバラだった。よろこんでカミサンは挿木でこのリルケのバラを増やした。いい匂いもする。いろいろな思い出のあるバラだ。

●そのころは、忙しくてカミサンの園芸には興味がもてなかった。
K川の河畔で青い可憐な水草をみつけた。その可憐さがカミサンごのみだ。わたしははじめてのことをした。かがみこみ数本の水草を引き抜いた。散歩はそうそうにきりあげた。かみさんは笑顔でよろこびながら、そつと庭の一隅をゆびさした。そこには一面に水草が咲いていた。いままでこの水草の群落に気づかなかったのだ。わたしははずかしかった。カミサンの庭いじりに無関心だった報いだ。それからだ。わたしが花々の名前を覚え、めでるようになったのは。

●田舎住まいだから、少し歩けば野の草とのであいがある。去年はスミレを野べで摘み庭に植えた。いまではだいぶふえている。ふえすぎてほかの草花が遠慮して咲かないほどになってしまった。


秋の愁い

2007-09-06 07:03:26 | Weblog
9月5日 水曜日 晴れ
●HALを背負って街に出ようとした。お腹の具合が悪いので体に力が入らない。お粥ばかり食べていた。体重が2キロも減った。明日あたりから、普通食に戻そうと思う。お酒も一週間ぶりで飲むことになるだろう。がまんすればいいのに。もっとも1合ていどの酒飲みだ。それでもお酒を飲むと気が大きくなる。おつまみを食べ過ぎる。せっかく減った体重はもとにもどってしまうだろう。カミサンがHALの入ったリックを持ってくれた。
「このさいだから、お酒やめたら」
「おれの理想はアル中で死ぬことだ。でも小説が前みたいにバンバン売れるようになったらな」
「だったら小説がうれないほうがいいわ」
カミサンがしらっといった。

●台風がくる。台風一過。秋晴れの空が見られる。紺碧に晴れ上がった秋空。気温がいますこし下がれば体もらくだ。今年は高温に耐えるだけでもかなりしんどかった。

●雨後の秋海どうの、さらにふかくうなだれた様子がいい。秋の愁いには秋海どうがふさわしい。縁側に腰をおろした。秋海どうをなんとなく感傷的な気分で眺めた。いくつまで、小説を書き続けられるのだろう。長生きしても健康でなかったら悲しい。宵のひとときを秋海どうをみつめて過ごした。
はかなく咲いた秋海どうには水玉の一滴は重そうだった。


猫とナスとジャズ

2007-09-05 16:34:51 | Weblog
9 月4日 火曜日 晴れ
●外猫チビとブラッキーが鼻をつきあわせて挨拶をしていた。玄関のコンクリートの床にならんでじっとしている。つくづく猫はおだやかな動物だと思う。たまにはなにが気にくわないのか豹変することもあるが。

●ブラッキーはわたしのおっかけだ。食事のときはわたしの膝の間に座る。なにか食べられるものをわたしがくれないかと鼻をひくひくさせている。おトイレまでついてくる。ジイット憧れのまなざしでみあげてくる。でも、これだけは困ってしまう。ブラッキーは猫でわたしはまちがいなく人間だから。

●HALに向ってブログや原稿を書いていると、かたわらにすり寄ってくる。遊んでもらいたいだ。

●さっとブラッキーを抱えあげる。しっかりと胸に抱きしめて部屋を移動する。ブラッキーは遊んでもらえるのがわかって喉をごろごろさせはじめた。
「こんなすばらしいナスをいただいたわ」カミサンが葉のついているナスをもっておいかけてくる。農家から通ってくる塾生たちがいる。いつも農作物をいただいて恐縮している。ともかく取れたて、畑からの直行だからすごく新鮮だ。ナスもキュウリもとれたてだとこんなにおいしいのかと驚いてしまう。田舎住まいのわたしたちにはこんなよろこびもある。

●カミサンが算数の授業で二階の教室にもどっていった。わたしはビル・エバンスの「枯葉」をききだした。ブラッキーが小さな雷を喉元で発生させてよろこんでいる。わたしの授業まではまだ45ふんある。



秋海どう

2007-09-04 08:33:23 | Weblog
9月3日 月曜日 曇り
●秋海どうは裏庭の手洗い場のまわりにも咲いている。この手洗い場にはむかしレストランを経営していたときの営業用の大型の流しが置いてある。ステンレスだからさびがでない。さびがでて、古びてくれればいいのにと思う。記憶、とくに失敗した挫折の記憶は早く忘れてしまいたいのに、レストランで使っていた厨房器具がピカピカの真新しいままで存在している。だから、わたしは裏庭にでることをあまり好まない。いろいろな不愉快であったことが思い出されて悲しくなる。そうしたとき、半日陰で、秋海どうが秋風にゆらぐのをみていると心がなごんでくる。淡い紅色の花が風にそよぐ風情をみていると「わすれること、わすれること。いやな思い出は一日も早くわすれること」とささやきかけてくる。そうだよな、うまくいかなかったことをくよくよといつまでも覚えていてもしかたがないよな。とわたしはじぶんを納得させる。

●そこで一句。
うなだれて風になびけと秋海どう 
                   


小説書くぞ

2007-09-03 13:15:46 | Weblog
9月2日 日曜日 曇り
●朝の室温が22度。すこし涼し過ぎはしませんか。残暑が厳しいとの予報だったからこんなものですむわけがない。と、まぁ、わたし的には思っている。でもこのくらいの気温は大歓迎だ。さいきん勉強の根気が暑いと持続しなくなった。気持ち良い汗をかいたあとは、仕事がはかどったのに。疲れがさきにでて、机に向かえない。こともある。うかうか散歩にもでられない。体調をととのえるのに苦労している。気力が先走るのでどうしても無理をしている。                              

●惰眠を貪ることを覚えた。眠りは貧者の楽しみ。なるほど。体が十分睡眠をとると軽くなる。でも仕事が遅れる。ストレスがたまる。どうしたらいいのだ。

●『いろいろなものと戦ってきた』テレビからそんなことばがきこえてきた。さっそく本歌取り。すみません。無断でモジリました。

●いろいろな人のために戦ってきた。母の、父の、妻の、二人の娘の、倅のために。そして、ラストランは、じぶんのために。文学のために戦うのだ。

●定年で安穏な生活を送ろうとしているあなた。人生これからだとは思いませんか。なにかやりたかったことがあるはずです。挑戦してみてください。わたしは倅がこの秋結婚するので、堂々とこれら文学人生をつらぬきます。

●いくら夏の疲れがのこっているからといって、惰眠をむさぼっているわけにはいきません。これからのわたしのブログは田舎住まいの楽しさ+文学、とくに小説を書く悩みや喜び、迷いなどが混入するはずです。いままでどおりご愛読のほどおねがいします。

●写真はわが庭の秋海どうです。花言葉は片思い。わたしの文学への片思いを象徴しているような言葉だ。雌雄の花が同じ株にひらく。カミサンべったり。夫べったり。わたしたち夫婦を具象化しているような花だ。半日蔭に咲き、清楚、優艶。ここのところはカミサンに似ている。

初秋

2007-09-02 05:35:41 | Weblog
9月1日 土曜日 晴れ
●カミサンがうれしそうに庭を歩いている。いわゆる、ウナギの寝床という横に長い庭だ。その東の隅に挿木でふやしたリルケのバラがいく株も見事に咲きだした。花の色や花弁の美しさはもちろんだが、香りがとてもいい。部屋の中まで漂ってくる。涼しくなってきたので香りがよく感じらける。カミサンもミツバチのように花にちかより花弁のなかに潜り込みそうな風情をみせいている。花がすきでたまらない。そうしたこころが離れていても感じられる。

●わたしは窓越しにそうしたカミサンの所作を眺めている。
部屋ではジャズの「枯葉」がかかっている。

●緑の群葉にだきしめられたような家に住み、平凡な日々が過ぎていく。

●やがて、庭も紅葉がはじまる。おやおや、秋祭りのお囃しもきこえてくる。どこかの町内ではやばやと稽古をはじめたのだろう。

●今朝は散歩に出かけるのはあきらめた。HALと向いあった。このところしばらくストップしていた「巣鴨通りのイカ面GG」を書きだした。