田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

学校の古い校舎好きです  麻屋与志夫

2013-01-20 13:27:29 | ブログ
学校の古い校舎、すきです/麻屋与志夫
2011-07-12 08:11:16 | Weblog
7月12日 火曜日
episode8 「テケテケオバケ」の裏ネタです。
●古いものを情け容赦もなく壊してしまう。
この街にはそうした習癖があるようです。
悲しいことです。
そのてん、わが母校鹿沼北小学校の木造の古い校舎。
よくぞ修復しながら、残してくれたものです。
おおぜいのかたのご苦労があったはずです。
うれしいな。
いつまでもこのままの校舎を大切に使ってください。
いまは、鬼籍にはいてしまった中津博君と。
東京からもどると。
かならす北小の校舎を見に行ったものでした。

●北小学校の学区内が比較的むかしのおもかげをのこしていますね。
お千手山界隈。
上材木町の弁天池。
稲荷神社。

●わたしたちは、古い建物、樹木、通り、などに想いでがあります。
そのてん東京の下町はむかしのまま、
人情もむかしのまま、
ほのぼのとします。
むかしは、ヨカッタ。
などとなんでもかんでも古いものを賛美するわけではありません。
いいなぁとおもうものがあったらその風習とか、
建物とか、
街路樹などは残してもらいたいものです。
●「テケテケオバケ」を解体された校舎の恨みが、固まったオバケ。
ととらえたのはこうしたきもちからです。
●この学校の怪談。
Nちゃん、ツルちゃんからわたされたメモから始まったお話も、
これでおわります。
でも、これでもうかかない。
ということではありません。
どうぞおもしろいお話があったらコメント欄に寄せてください。
●「アサヤ塾」は裏路地に今時こんな家が。
とおもわせる昭和初期の古い家です。
隠れ家のような塾です。
教室だって古いんだから。
そこで教鞭をとるわたしたちも老いました。
でもまだまだがんばれます。
排除されないように、
新しいことに耳を傾ける、
柔軟なこころをもちつづけています。
テケテケテケ。


作者からのメッセージ。
●いままでお読みいただいた、とある田舎町の「学校の怪談」は2011年に書いたものです。
もちろん、足りない部分は書き改めました。
●そのころのブログも再録しました。ツルちゃんはこの春、中学二年生になります。月日の経つのははやいものですね。孫も二歳になり元気です。歳を取ってくると、時の流れがはやすぎます。時の流れを堰きとめることができればいいのになぁ。
●さて、これからはpart2をかきつぎます。Mちゃん。すばらしいネタありがとう。一生懸命かきます。楽しみにしていてください。


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とある田舎町の「学校の怪談」episode8 テケテケオバケ 麻屋与志夫

2013-01-20 00:03:13 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode8 テケテケオバケ

鈴木君はひとりで残ったことを後悔していた。

「どうせ、テケテケオバケなんてつくりごとだよ」
「でるわけないって!!」
ツトム君も学君も相手にしてくれない。
だってこれで一週間も張りこんでいるのだから。
ふたりとも、張り込みにあきて帰ってしまった。

お化けの名前は。
テケテケ。
放課後昇降口にでる。
上半身だけで。
右手に大きな鎌をもっている。
両手で走る。
テケテケとおとをたてて走る。
目があうと「殺すぞ」と鎌をふるう。
下半身をきられてしまう。
テケテケお化けのように上半身だけになってしまう。
そんなふうに怖い話だ。

いま、鈴木君はその昇降口の壁の陰に潜んでいる。
中央小学校の校舎はすでに、半分はきりはなされていた。
もうじき、この正面入り口のあたりも解体される。
そのころは、ぼくは中学生になっているだろう。
なつかしい小学校の校舎がなくなってしまう。
さびしいな。

夕暮れて男体山颪が吹きだした。
そのときです。
音がした。
なにかかすかに動く気配がする。
テケテケテケテケ。
話にきいて怖がっているのと、リアルに見るのとでは。
怖さがちがった。
オバケの〈出現〉の現場にたちあってしまった。
テケテケテケテケ……。
音はします。
姿は見えません。
テケテケテケテケテケ……………。
鈴木君はこわくなって校庭に飛びだしました。
テケテケ。
うしろから音が追いかけてくる。
こわくてふりかえることはできない。

校庭にたおれている鈴木君を発見したのは父親でした。
帰りの遅い息子を心配してさがしにきたのです。
鈴木君はオバケを見たといいました。
テケテケテケという音まできいた。
追いかけられた。
怖かった。
と泣きだした。

校舎半分は解体された。
建物の嘆きじゃないかな。
そんなことをいう先生もいた。
古い建物には霊がやどっている。
校舎のお化けだよ。
この怪談に結論が出されました。
でも、鈴木君はたしかに追いかけてくるお化けの気配を感じました。
あのとき勇気をだしてたちどまり、ふりかえっていれば――。

……目があってしまったら。
大きな鎌で下半身をきられていたでしょう。
やはりふりかえらないで逃げて正解だった。
鈴木君はそうおもいました。

テケテケテケテケテケテケ。

中央小学校は新校舎が落成しました。
いまは、テケテケお化けの話はだれもしません。
やはり、あれは古い校舎に棲みついていたい霊だったのでしょうか。
だとしたら、今はどこに移転したのでしょう。
あなたの学校で。
放課後薄暗い教室に居残りしていると……。
どこからともなく。
耳にテケテケテケテケというかすかな音がきこえてきませんか。
ほら……あなたの後ろから。


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とある田舎町の「学校の怪談」 pisode7 階段は何段あるの? 麻屋与志夫

2013-01-19 00:53:37 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode7 階段は何段あるの?

1

夜更けです。
午前2時です。
ふつうだったらだれもいない昇降口。
6年生が6人。
階段の下に集まっていました。
学校のお化け階段。
この時間に挑戦すれば――。
正確に何段あるかわかる。
そういう学校怪談のある階段。
怪談と階段。
すこしややこしいですね。

「じゃ、はじめるね」
クラス委員長の中島翔太君。
おびえたような、元気のない声を精一杯はりあげた。
委員長だって、怖いものは怖いのです。

「60段あったよ」
さいしょに三階までのぼったタケシがもどってきました。
「ぼくも60段」
そのあとの金田も同じ。
二階の踊り場までもどってきた博。
三人が60段あったといいます。

たったひとりの女の子、詩織だけは59段。
そのすぐ後から降りてきた伸二も59段だった。

「委員長できまりだな」
三階にたどりついたはずの中島からは、連絡がありません。

「おうい!! 中島……。何段あった」
ピーっと詩織の携帯がなりました。
あたりが静かだったので、5人ともとびあがるほどおどろきました。

「59段だったよ」
詩織はまちがいなくそうききました。
「でも……おかしいな。60段あったような気もするんだ」
「しつかりしてよ。翔太ちゃん。戻りにも数えてみたら」
そういって詩織は携帯をきりました。

大声で数を叫びながら中島が階段を下りてきます。
「22……。あっ」
悲鳴。
「どうした。中島」
5人がいっせいに階段をかけあがりました。
いません。
二階の上の方にいるはずの中島がいません。
階段をダダッと踏みならしてかけつけた5人は――。
ふるえだしました。
真っ青な顔で泣きだしました。

夢中でそとにはしりでた5人の前に――。
パトカーがとまりました。
「明かりが見えると近所住民から通報があった」
5人はがくがくふるえています。
すぐには応えることができませんでした。

「そうだわ。GPS」
けっきょく、GPSをたどって――。
詩織たちがさがしあてた場所は上都賀病院だった。
そこのベットに翔太は収容されていた。
夜も白々とあけかけていた。

「裂け目があるんだよ。あの階段には次元の裂け目があるんだ」
さすが委員長の中島。
むずかしいことを――。
興奮からさめると詩織たちにいった。

「救急の女のひとがぼくをここへつれてきてくれたんだ」
「パトカーだけだよ。それにきみウソいってはいけない。女の救急隊員はこの町にはいない」

2

「あそこはね」
定年まじかだという婦長さんが教えてくれた。
「むかし、美術の女の先生が階段をふみはずし、打ち所が悪くて死んだところなの」 

退院する中島を詩織がむかえにきた。
「ぼくは小説家になれない。絵描きになっていた。そして……」
階段の裂け目におちたとき、パノラマ現象を体験したのだという。
中島はあとのことばを濁した。
じぶんのこれからの一生を逆パノラマというか、みてしまったのだろう。
翔太は未来をみてしまったのだ。
詩織にはわかっていた。
中島がいわなかったことばが。

ぼくらは大人になっても結婚していなかった。

わたしたちいとこ同志だから、
翔太のかんがえていることくらいわかっている。

美術の女教師は失われた夢。
死によって中断された夢。
画家になる夢。
を、翔太に託した。
教師の霊が翔太に憑依したのだ。
彼女の夢を翔太がかなえてくれるように、

翔太を改造してしまった。
だから翔太は生きてこの世にもどれたのかもしれない。
翔太はいままでの翔太ではない。
詩織はさびしくそうおもった。



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とある田舎町の「学校の怪談」 episode 6 二階の窓に人影が

2013-01-17 22:28:42 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode6 二階の窓に人影が


蒸し暑い夜。

「お父さん、車止めて!!」
「どうした。塾にわすれものか?」
「二階の窓に人影が見えた」

小学校の二階の窓。
たしかに人影を見た。
橋本修はこの小学校を去年卒業している。

「ぼくの一級センパイが東中の三年生のとき、あそこから飛び降り自殺してるんだよ」
「そんなこともあったな」

父親の修三も覚えている。
やはりこの小学校の卒業生です。
小さな田舎町だ。
何代にもわたって、同じ学校の卒業生。
そんな家庭がおおい。
それにしても、かわったものだ。
門扉は固く閉ざされている。
外部からの侵入を拒んでいる。
昔のように学校が安全な場所ではなくなってしまった。
たしかに修がいうように。
人影が見えたようなきがする。
息子は不満らしかった。
修三は校門から離れた。
このさきでは、クリーンセンターの所長が拉致され、殺されてしまった。
街灯もなく闇が支配している。

それからまもなく、銀輪のかすかなおとがした。
タケシと文彦のふたりずれだ。
修とおなじ塾からのかえりだ。
東京に本部のある大きな塾だ。
東京だったら、この時間でも人通りは途絶えません。
ここは田舎街。
ほとんど真っ暗です。
自転車のライトが闇をきりさいている。

かれらは、校門をのりこえました。
高校一年生。自殺した生徒とは中学で同級生だった。
怖いもの知らずのとしごろです。
幽霊が出るという「噂」を聞いて、校舎に忍び込んだのでしょう。
黒い影が教室の机にすわっていた。

「ぼくも進学したいよ」
幽霊がいいました。
その声は。たしかに聞きおぼえがある。
「おまえ、黒岩か?」
タケシがふるえながらききました。
ふりかえった顔は、崩れています。
「ぼくも宇都宮高校を受験したいよ」
「ああ、黒岩なら宇高なんがチョロいよ」
「これ、やってみるか?」
文彦はふるえながら、数学の問題をわたしました。
幽霊は問題を解くことに熱中している。
数学の得意だった黒岩。
幽霊になっても数学の問題を解くことに熱中している。
文彦はタケシの腕をつついた。
ふたりはそっと階段をおりた。
校門でふりかえった。
幽霊はまだ机にむかっていた。

それからまもなく、マサキと健が教室にはいた。

「ぼくも進学したいよ」
黒岩の幽霊がそっとつぶやいた。
マサキも健も恐怖のあまり腰をぬかしてしまった。
崩れた顔がせまってきます。
ウジが顔からはいだしている。
吐き気をもよおかような、腐ったにおい。
はって逃げた。
でも、幽霊のほうがはやく移動でる。

「ぼくも受験勉強したいよ」

そういって、ふたりの上におおいかぶさった。
ピチャピチャ。
ズルズル。
ふたりとも体液のすべてをぬきとられてしまった。

「ぼくも宇高へ進学したいよ」
幽霊が、まだつぶやいていた。

翌日校門の前で、マサキと健の、ふたりの自転車が発見された。
マサキと健がどこにいったのか、だれも知りません。

ただ、そのご、窓に映る影は三つになりました。

でも夜校舎に入ろうとする少年はいまのところ、いません。
 


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とある田舎町の「学校の怪談」 episode5 図書室の二宮金次郎。 麻屋与志夫

2013-01-17 09:59:55 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode5 図書室の二宮金次郎。

 
図書室をのぞいてみました。
二宮金次郎のような正しい姿勢で、座っている生徒がいました。

図書室をのぞいてみました。
昼休みも終わった。
ちょうど、一時です。
二宮金次郎。
のような。
石像が本をよんでいます。
ええ!! どうしてぇ? 
なんでぇ、校庭に立っているはずなのに……。

図書室をのぞいてみました。
たしかにうわさどおり、二宮金次郎のような石像が本をよんでいました。

図書室をのぞいてみました。
二宮金次郎の石像が本をよんでいました。
これが最終バージョンです。

噂はうわさを呼び、いつか〈ような〉ということばが消えています。

そのころになってもうひとつ風評がひろがりました。
「本をよまない子は、石になるぞ」

なんだか……あやしい。
これは先生が風評にわるのりして、広げたようです。 

「あれ、本田君だ。あの本よんでいるの、まちがいない本田君だよ」
「そうよ。本田君よ」
図書室の怪談を、実体験しょうとこわごわのぞいた。
男女の生徒。
見てしまいました。
同じクラスの本田君。
もっとも図書室にふさわしくない少年。
いじめっ子。
ひとにらみされただけで。
石にされてしまうような。
鋭い眼差し。
ド迫力。
すごみのある顔のもちぬし。
ふたりはこっそりとあとずさりしました。
教室にもどる。
明るいふんいきだ。
本田君がいないからだ――。
ふたりは、いま見てきたことはだれにも話しませんでした。
だってそれっきり、本田君の姿は教室から消えてしまったからです。

でもふたりとも知らなかったことがあります。
ほかの学校でも、いじめっ子に同じことが起こっていました。
石にされた男のこたちがはこばれていく場所は――? 
市立図書館の地下室。
未公開図書保管室。
そこにはたくさんの石の少年像が保管されています。
勉強ぎらいの子。
ともだちをいじめる子。
ワルイコ。
吸血鬼ににらまれて石にされてしまったのです。
これは本当の話です。

メデゥサのような吸血鬼がいるんだぞ!!
えっ、メデゥサを知らない。
ゴルゴンのひとりであるメデゥサ。
髪が蛇だったかな。
ひとにらみされると、石にかえられちゃうんだよ。
たしかゲームにもなっていたよね。

えっ、あまり怖くない。
じゃ、これでどうだ。
この石像は吸血鬼のための食糧になるのだ。
ここはかれらの食糧保管庫でもある。
呪いからとかれた少年たちをまっている運命は。
そのときこそ、確実に死ぬことなんだよ。
そんなことも知らない。
石にされた悪ガキは。
動かずに。
動けないのだが。
血を吸われる。
時を。
待っているんだよ。   

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とある田舎町の「学校の怪談」 pisode4 体育館の天井に手形が……  麻屋与志夫

2013-01-16 06:44:15 | とある田舎町の「学校の怪談」
pisode4 体育館の天井に手形が……
 

「キャー」
六年生の夏未ちゃんが悲鳴を上げました。
マーチングの練習をしていたチームのみんながかけよってきました。
夏未ちゃんはバトンをとりおとしてふるえています。
真っ青です。
顔から冷や汗。
タラタラとたれています。

「どうしたの、ナッチャン」
「どうしたの」
みんなが心配しています。
夏未はがくがく歯をならしています。
歯と歯がかみ合ってカチカチ乾いた音がしています。
ブキミデス。
青い顔がケイレンしています。
ヒクヒク小刻みに動いています。
顔に小さなサザナミが立ったようです。
ただごとではありません。

「手のあとが。手のあとが天井についている」
ようやくそれだけいいました。
夏未がとびはねていた場所の上の方をさしました。
ゆびさすさきの天井には――。
みんながいっせいに叫びました。
こんどはチームの全員が怖くて泣きだしました。
「なによ? あれ?? こわいよ」

たしかに、みんなの見あげた天井に。
くっきりと手のひらのあとがみえます。
それは朱印をおしたようです。
赤い手形です。
それも大きさからいって。
見あげてふるえている少女たちくらいの。
としごろの。
子どもの手の形です。

「純くんがきたんだよ。純くんがナッチヤンにあいにきたんだよ」

中山純はこの学校から転校しました。
鹿沼のクレーン車事故でこの春なくなったばかりです。
マーチングのメンバとは仲良しでした。
野球部でピッャーでした。
女子生徒に人気がありました。
よく練習の合間にマーチングの。
とくに夏未のバトンの演技を見にきていました。

「ナッチャンのことラブラブなんだよ」

みんながいっていました。
夏未は、ははずかしくてなにもいえませんでした。

「夏の少年野球大会みにきてくれよ」
転校するとき、いわれました。
夏未はただうなづくだけでした。
でも胸がどきどきしました。
すごくうれしかったのです。

それが鹿沼のクレーン車事故で死んでしまいました。

「肢体不自由で生きるより、これでよかったべよ」

と純のお父さんは葬式の席で泣いていたそうです。

下半身グシャっとつぶされた純は逆立ちしてわたしに会いに来た。
血をながしながら、逆立ちで近寄ってくる純のイメージ。
いや。
両手で歩いてきたのだ。
夏未にはその気配がわかりました。
オバケに成っても、純ちゃんはわたしに会いにきた。
夏の大会にはでられない。
かわいそうな純ちゃん。
下半身から血をながしている。
歩けないので、両手で逆立ちしてわたしを見ていてくれた。
いや。
両手を使ってあるいてきたのだろう。
逆立ちしているのではない。
あそこに、立っているのだ。
両手で。
上半身だけの体。
両手で支えている。
だから天井に手形が――。

そうだ。
まちがいない。
純ちゃんだ。
純ちゃんが会いにきた。

みんなもあれが純の手形とみとめた。
だれも、もうふるえていなかった。
オバケだっていい。
あれは純ちゃんの手形なんだ。
「純ちゃん。すきよ」
夏未はだれにも聞こえないように心の声で純に呼びかけました。
ヒタヒタと床に足音? がします。
両手で逆立ちしても、足音というのかしら。
と夏未はふと思いました。
天井からおりて純が近寄ってくるようです。
床に赤い手形がついています。
でもそれはみんなには、見えないようです。
手形が夏未の前でとまりました。
「純ちゃん。すきよ」
だれにも聞こえないように。
そっと……夏未はつぶやきました。




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とある田舎町の「学校の怪談」 episode3 音楽室から

2013-01-15 07:20:22 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode3 音楽室から……

1

音楽室からピアノの音が……もれてくる。
あたりまえのことですよね。
では……誰もいない音楽室からピアノの音がもれてくる。
となると、どうでしょうか?
さらに、誰もいないはずの音楽室で女のヒトが12時になるとピアノをひいている。
だいぶ怪談らしくなってきました。
それでは、きいてください。
いまはむかし、この小学校の音楽の女教師の初恋のはなしを――。

寺沢カナは出身校に音楽教師として赴任した。
夏休がもうはじまる。アブラゼミが校庭の樹木で鳴いていた。
前任者が精神を病んで宇都宮の滝沢病院に入院した。
彼女が回復するまで、という要請をことわるわけにはいかなかった。

音楽室から誰もいないのにピアノの音がながれてくる。
その風評の、彼女の前任者は被害者なのですよ。
その怪談を気に病んでノイローゼになってしまったのです。
校長先生がカナに説明した。
この校長はK県議の娘婿なので昇進が速かったのだ。
と……これも風評なのだが。
好男子の若い校長だ。

カナは人目もかまわず、早めに昼食を5ふんですませた。
ちょうど正午の時報を職員室の古時計がかなでている。
二階の角の音楽室にカナはいそいだ。

「カナちゃん。まっていたわよ」

音楽室のまえで女子生徒とすれちがった。
おもわぬことばがささやかれた。
カナはあわててふりかえった。
そこには生徒の姿はなかった。

赴任したばかりのわたしの名前をしっている子がいる。
おかしいわ。
とカナはゾクっとふるえた。
ふりかえった。
誰もいない。
幻聴だったのかしら?

カナは内田麗子先生との想い出のピアノの蓋をあけた。
あのころとなにもかわっていない。
連弾でよく弾いたものだった。
「上原ゆかりのようなジャズピアニストになれるわよ」
と麗子先生はキラキラした瞳でカナをはげましてくれた。

この季節だとガーシュウインの「サマータイム」をよく弾いた。
それは子守歌だった。
いつかこの学校をでていくわたしに。
麗子先生がたむけてくれるような歌詞。
 
 ある朝、お前は立ち上がって歌う、
 そして羽根を広げて飛んでいく……

 One of these mornings
 Youre goin to rise up singing
 Then youll spread your wings
 And youll take the sky

カナはそっと鍵盤に指をのせた。
弾きだした。
麗子先生の悲しみをおもうと涙がこぼれおちた。

麗子先生はいつもわたしが大空高くとびたっことをねがってはげましてくれた。

「第二の上原ゆかりになれるわよ。がんばってね」

2

「わたしはきみが職員室にはいってきたときから、わかっていた」
校長先生の声がした。
がピアノの向こう側に立っていた。
いつのまに入ってきたのだろうか。
ドアの開く音はしなかった。
「麗子さんの隣で小学生のきみが、ピアノを弾いていたのをいちどみたことがある」

えっ、ではこのひとが、
いまは校長先生の、このひとが麗子先生のすきな彼だったの。
片思いのままでおわった麗子先生の初恋の男のひと。
麗子先生が恋い焦がれた彼。死ぬほどすきだった彼。

「麗子のお弟子さんのきみがひくと、まつたく麗子がひいているようにきこえる」

校長先生はピアノの向こう側からはなしかけていた。
カナの指の動きは見えなかった。
ピアノを弾いているのはカナではなかった。
カナの指はピアノの鍵盤にふれていなかった。
自働ピアノのようだった。
鍵盤のうえに細くしなやかな麗子先生の指をカナは感じていた。
いや、麗子先生が隣に座っている。
あのころのままだ。
なにもかわっていない。
先生は暗譜した曲をわすれないように。
いつか彼にきかせたくて。
ひとりでこの音楽室でピアノをひいていたのだ。
それが怪談となったのだろう。

曲はショパンの「別れの曲」だった。
麗子先生は愛する彼のために霊力をふりしぼって弾いている。
生涯でいちどのおもいをこめて「別れの曲」を。
だが恨みがこもっていた。だからこそ、悲しい調べ。

「ぼくがもっと早く麗子の気持ちに気づいてあげれば……」

そんなことはいいわけだとカナおもった。

「ぼくらはむすばれていた……」

だったら県議の娘婿なんかにならなければよかったのだ。

「毎日、気苦労が絶えない。学校というところはいろんなことが起こるから」

じぶんから選んだ道だろうに。
胸がくるしいのか。
校長は呼吸がみだれていた。
麗子先生の怨霊がピアノを弾いているからだろう。

麗子先生は美しく発狂した。
恋狂い。
なんてロマンチックなことばだろう。
雨季で増水していた黒川に身を投げた。
彼の結婚式の日だったという。
カナは留学していたアメリカでその知らせをきいた。

3

「別れの曲」も終わりに近づいていた。
校長が胸をかきむしっている。
「ニトロが、ニトロの舌下錠が胸のポケットに……ある……」
「だめ」
という激しい麗子先生の声が耳もとでした。
幻聴ではない。
麗子先生の声がした。
たしかにきこえた。
カナは舌下錠をとりだせなかった。
「だめ。そんなことしないで」
カナは金縛りにかかった。
動けなかった。
目の前で、校長が苦しんでいる。
終曲。
さいごのピアの音が部屋のすみずみに消えていった。
校長も静かになった。
苦しそうな顔だ。
死んでいた。
麗子先生の気配も、消えた。

窓のそとは夏の日。
照りつける太陽のもとで、赤いカンナの花が咲いていた。



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とある田舎町の「学校の怪談」 episode2 トイレの太郎

2013-01-14 03:36:20 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode2 トイレの太郎

小学校の六年生のクラス。
ひとりの転校生が受け持ちのMs田中の隣に立っていた。
先生とでは身長差がガチ凄い。
田中先生が女教師にしては上背がありすぎるからだ。
バレーの選手だったからだ。
転校生の背が低かったからだ。
その差30センチはありそうだ。

「一宮和成くんです」
都会的な気の弱そうな顔。
「センセイ、二宮和也のまちがいじゃないですか」
「ほんとよくにてるね」
「わぁ!! 嵐の二宮和也のそっくりさんだ」

この女子生徒のなにげない発言に。
男子生徒の目が緑色になった。
男子生徒はジェラシーに狂った。

「おい、トイレまで顔をかせ!!」
放課後。
ヤンキーの定番の文句。
和成に声かけたのは佐々木剛。
小学生なのに中学の柔道部の生徒もかなわない。
身長165。
体重70キロ。
スリムな和成は逆らえない。
和成はぶるぶるふるえていた。
なにもされないのに真っ青になっていた。
剛をとめるものはいない。

「一宮!! すこしくらいメンがいいとおもってのぼせるなよ」
「ゆるしてください。ぼくはなにもしていません」
涙声で和成は訴えた。
「なんだ。はりあいのないヤツだな」
バンとほほを張られた。
和成はトイレのドアにふっとばされた。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
ドアにたたきつけられた反動だった。
和成はまえにつんのめった。
コンクリートの床に顔をおしつけて、倒れた。
鼻血だろうか。
唇でも切ったのだろうか。
口の中からあふれでたのだろうか。
その全部かもしれない。
顔が血だらけだった。
真っ赤な血で顔がクシャクシャになってしまった。

「顔をあらってこい。このままじゃ目立ち過ぎるからな」

剛にいわれて和成はトイレにはいった。
手洗い場でみんなに見られるのがいやだったのか。
みんなに見られながら顔の血をぬぐうのが、いやだったのか。

トイレの前にある水槽の上部に突き出ている ? マークのようなパイプから水でる。
水槽いっぱいになると止まる。
旧式のベンザだった。
ところが、いつになっても水流の音がやまない。
和成もでてこない。

「あいつ、女みたいにお化粧してるのかよ」

にやっと笑いながら剛がトイレに入った。
すさまじい、剛の絶叫があがった。
仲間があわてて、トイレのドアをあけると――。
ベンザのなかは赤い血。
血はベンザから床にまでながれでていた。
剛の足が穴に吸いこまれている。

「足がぬけない。ぬけない。吸いこまれる」

真っ赤な血はさらに水流をました。
ベンザのなかで渦をまいている。
床から外になかれだした。
剛の足はその水流にのみこまれていく。
剛は気をうしなった。

救急車で上都賀病院にはこばれた。
剛は翌日もういちど絶叫する運命がまっていた。

見舞いの花束に「トイレの太郎」と書かれたネイム札がついていたのだ。
剛は失心した。
そのままぼんやりとしていた。

退院した剛はそのご、和成にはちかよらなかった。
女の子たちは、和成を太郎、太郎と呼んでいる。

その理由を知っているものはいない。
剛はよほど怖いことがあったのだろう。
剛は太郎をさけつづけている。
これでオワリ――では気になるひとに。
一つだけヒントをあげるね。
剛は見たのだとおもうんだ。
和成が太郎に化粧した顔を。
だって……化粧の〈化〉はお化けの〈化〉だよ。


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とある田舎町の「学校の怪談」episode 1 トイレの花子さん

2013-01-13 07:16:40 | とある田舎町の「学校の怪談」
とある田舎町の「学校の怪談」
episode 1 トイレの花子さん

さあ、こわがりの女の子はいないかな?
こわいはなしのすきな男の子は――キミかな。
 
放課後もだいぶおそくなった。
あすは学校祭。
演劇部のH子たちは、暗くなるまで小道具の点検をしていた。
練習のほうはもうOK。
H子は準主役のクララ。
「アルプスの少女ハイジ」がその演目だ。
H子は車いすのにあいそうな、おとなしい子だった。

H子は六年生のトイレにかけこんだ。
「ヤダァ。だれがはいっているの」
どのトイレもノブの下が使用中の赤マークになっていた。
いちばん奥なら……あいている。
だって、あそこは開かずのトイレ。
オバケトイレ。
花子さんの呪いがかかっているというトイレだ。

足踏みしながら、だれかでてくれないかな、とまった。
どのドアも赤のままだ。
だれもでてこない。
おかしいなとはおもった。
でもオシッコもれそう。
もうがまんできない。

勇気をだして奥のトイレへ進んだ。
渡り廊下がギシギシと音をたてた。
きしんだ。
わたしふとったのかな?  
少女はふとおもった。
そろそろじぶんの姿が気になるとしごろだ。
花子さんのトイレのノブにふれた。
ひんやりとした。
つめたかった。
手が凍ってしまうほどの冷気だ。
少女はブルッとふるえた。
それでも勇気をだして、おもいきってノブをひいた。
だってここまできてオシッコをもらすわけにはいかない。

さて、それからどうなったと思うかな。
トイレの内側にはノブがなかったのだよ。
少女はとじこめられてしまった。
そとに出られない。
そんなことは、きいていなかった。
ノブがないなんて……。
だれも知らなかった。
「センセイ。タスケテ」
「おかあさん。タスケテ」
「アカリちゃん。たすけて」
「絵美ちゃん。たすけて。クララの役、ゆずってもいいから」

絵美ちゃんはクラらの役、とてもやりたがっていた。
少女はいっしょに残っていた演劇部員の名前をつぎつぎに呼んだ。

そのころになって少女は気がついていた。
トイレは全部ふさがっていた。
その数は、演劇部員の員数だった。
イジワルサレテいる。
イジメだ。

……タスケテ。タスケテ。タス……ケテ。

トイレの周囲のタイルの壁に花子、花子、花子。
という文字がうかびあがった。
文字は、タイル張りの壁をながれだした。
花子。
……真っ赤な血で書いたような文字。
ながれては消えた。
消えてはまた花子、とさらにおおきな字となってうかびあがってきた。
不気味な血の色が明滅していた。

それでも、だれも助けにはきてくれなかった。

少女の声はひくくかすれてしまった。

そのあとね、少女を見た人はいない。

翌日。
クララの役をやった絵美ちゃんが――幕が下りてから叫んだ。
真っ青な顔をして。

「ごめなんさい花田さん。ごめんなさい。わたしがわるかった」

でも、絵美ちゃんはそれからずっといまでも、車いすの生活をしているんだよ。
うしろから花田さんに抱きしめられている。
悲しそうにそういっている。

少女の名前はね。花田花子というんだよ。


● 2011年の7月から連載したものです。このたび、第二部を書くにあたり、とりあえず、前作をのせます。
●第二部を楽しみに待っていてください。


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あけましておめでとう。GGの人生はバラ色。

2013-01-01 08:49:58 | ブログ
1月1日 月曜日

あけましておめでとうございます。

●ことしも妻の美智子、愛猫のブラッキともども元気に生き、笑い、嘆きながら郷里鹿沼と東京の間をいったりきたりしながら暮らしていきたと思います。

●こうして文章をかきはじめてみると、気がつくのですが常にGGの場合並列的なものの考え方をしているようです。ひとつのことにこだわっていられない性格らしいです。らしいのではなく、まったくそのまんまの生き方をしてきています。

●生活を支えてくれる軸足は主宰する「アサヤ塾」のある鹿沼にあります。でもGGはいつでもここにいるとはかぎりません。物書きとしての取材で――仕事関係で東京と郷里のあいだをあいかわらずあたふたと行き来しています。二足わらじです。

●小説もことしはひさしぶりで純文学に挑戦します。題だけはきまっています。「老いたる芸術家の肖像」です。いよいよ作家として過ごす時間が長くなりそうです。いままでどおり、ブログにも「学校の怪談」をかきはじめたいし、いそがしくなりそうです。

●だいたい、エンターテイメントとしての小説と純文学、仕事を広げすぎますよね。二股のかけすぎだ。こういうのなんて言うんだったかな。そうだ。二股膏薬だ。

●ライフワークとしての吸血鬼小説はもちろんかきつづけます。吸血鬼といえば、コウモリ。
あれっ。コウモリって鳥なの獣なの? ここでも、二者択一に迷います。

●もう、こうかんがえてくると、どうやらGGはもともと精神分裂、シツチャカメッチャカナな性格、今風の言葉では、統合性失調症なのでしょうかね。

●アワタダシク、迷走して、混沌のなかに生き甲斐を見出していきたいな。ホラ……「美は乱調にあり」なんて言葉もありますものね。乱れに、乱れたGGの仕事と生きざま。

●でも、わたしの人生は迷彩に満ちた多色刷りですが、こころはバラ色です。だって――ご存知のようにカミサンはバラの愛好家。です。

●美智子さん……。カミサン命、これだけはただ一つの道をわき目もふらず生きてきています。

●GGの手放しオノロケで新年の挨拶をシメマシタ。


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