音声にも情報が記録されている。
こう感じたのはいつからだろう。
あれは高校生の頃だったろう。
CDを聞いていて目を閉じると歌っているボーカル男性の映像が見えた。
レコーディングなのに、舌を出し、片目を閉じ、観客がいるかのようにパフォーマンスをしていた。
極めつけは逆立ちだ。
なんだ、これは・・・
後日、その男性ボーカルのアルバム制作記事を読んで理解した。
「この曲の録音の時は悪ノリがすぎて、スタジオで暴れ回ってスタッフに怒られたんですよ。逆立ちなんかもしてね(笑)」
録音音声からその時の画像が見える。
そう確信した。
目を閉じてCDでもラジオ放送でも音声を聞くと状況が見えた。
縁あって、現在、スタジオスタッフとして働いている。
そんなある日、中古CDショップでたまたま購入したCD「根絶」
ジャケットはリンゴ。
再生する。
歌いながら首を絞めている男の映像が見えた。
奇妙なことに首を絞められている男は透明の箱に入れられている。
透明の箱に手を突っ込んで首を絞めている。
曲が終わると同時に男はぐったりと倒れた。
アーチスト名は「君島輝」
発表時期は約20年前。
今月のスタジオスケジュールに同じ名前が書かれていた。
2週間後、君島がやってきた。
「よろしくお願いします。」
白髪交じりの短髪、開襟シャツ、麻のパンツ。
表情が無い。
どこかハニワみたいな男だった。
ジャケットの写真よりも当たり前だが老いていた。
11曲入りのアルバム、タイトル「再生」の制作。
音楽的には好きでも嫌いでもない。
仕事だ。
それよりもあの光景が頭を離れない。
2週間後アルバムが完成し、打ち上げがあった。
その席で君島に聞いた。
「アルバム「根絶」を持っています。」
「そう・・・」
「レコーディングの時、何かありませんでしたか?」
「えっ・・・」
表情のない君島の顔が一瞬崩れた。
「例えば、録音しながら・・・歌いながら・・・」
「な、なにを言っている。なにも無い。ちょっと用事を思い出したので、今日は失礼するよ」
君島はスタッフを残して帰っていった。
そんなこともあったが、基本的にはどうこうしようという気もなく、淡々と時間はすぎていった。
そんなある休日、運転席に乗り込む。
と同時に後部ドアが空き、誰かが乗り込んできた。
「えっ、なに?」
振り返ると同時に首にショックを感じ気を失う。
気づくと手足は固定され透明の箱に入れられていた。
部屋は見たことがある。
あの君島のCDで見た録音スタジオだ。
ドアが開き、男が入ってきた。
君島だ。
「どうして分かった。
20年も前なのに。
ここは僕の自宅の録音スタジオだ。
その箱は完全防音になっている。
君がいくら騒いでも大丈夫だ。
何が大丈夫だって?
ふふ・・
傑作が生まれるのだよ。
人を殺しながら歌うと。
まあ、こんな説明をしたところで君には箱のせいで何も聞こえていないだろう。
さあ、始めようか」
こう感じたのはいつからだろう。
あれは高校生の頃だったろう。
CDを聞いていて目を閉じると歌っているボーカル男性の映像が見えた。
レコーディングなのに、舌を出し、片目を閉じ、観客がいるかのようにパフォーマンスをしていた。
極めつけは逆立ちだ。
なんだ、これは・・・
後日、その男性ボーカルのアルバム制作記事を読んで理解した。
「この曲の録音の時は悪ノリがすぎて、スタジオで暴れ回ってスタッフに怒られたんですよ。逆立ちなんかもしてね(笑)」
録音音声からその時の画像が見える。
そう確信した。
目を閉じてCDでもラジオ放送でも音声を聞くと状況が見えた。
縁あって、現在、スタジオスタッフとして働いている。
そんなある日、中古CDショップでたまたま購入したCD「根絶」
ジャケットはリンゴ。
再生する。
歌いながら首を絞めている男の映像が見えた。
奇妙なことに首を絞められている男は透明の箱に入れられている。
透明の箱に手を突っ込んで首を絞めている。
曲が終わると同時に男はぐったりと倒れた。
アーチスト名は「君島輝」
発表時期は約20年前。
今月のスタジオスケジュールに同じ名前が書かれていた。
2週間後、君島がやってきた。
「よろしくお願いします。」
白髪交じりの短髪、開襟シャツ、麻のパンツ。
表情が無い。
どこかハニワみたいな男だった。
ジャケットの写真よりも当たり前だが老いていた。
11曲入りのアルバム、タイトル「再生」の制作。
音楽的には好きでも嫌いでもない。
仕事だ。
それよりもあの光景が頭を離れない。
2週間後アルバムが完成し、打ち上げがあった。
その席で君島に聞いた。
「アルバム「根絶」を持っています。」
「そう・・・」
「レコーディングの時、何かありませんでしたか?」
「えっ・・・」
表情のない君島の顔が一瞬崩れた。
「例えば、録音しながら・・・歌いながら・・・」
「な、なにを言っている。なにも無い。ちょっと用事を思い出したので、今日は失礼するよ」
君島はスタッフを残して帰っていった。
そんなこともあったが、基本的にはどうこうしようという気もなく、淡々と時間はすぎていった。
そんなある休日、運転席に乗り込む。
と同時に後部ドアが空き、誰かが乗り込んできた。
「えっ、なに?」
振り返ると同時に首にショックを感じ気を失う。
気づくと手足は固定され透明の箱に入れられていた。
部屋は見たことがある。
あの君島のCDで見た録音スタジオだ。
ドアが開き、男が入ってきた。
君島だ。
「どうして分かった。
20年も前なのに。
ここは僕の自宅の録音スタジオだ。
その箱は完全防音になっている。
君がいくら騒いでも大丈夫だ。
何が大丈夫だって?
ふふ・・
傑作が生まれるのだよ。
人を殺しながら歌うと。
まあ、こんな説明をしたところで君には箱のせいで何も聞こえていないだろう。
さあ、始めようか」