「サンシローはこのままでは死ぬ。俺は、かすかな望みをかけて篠田に弱りつつあるサンシローを預けた」
佐々木は浮遊している墓標に手を添える。墓標がかすかに輝く。直後、元気に動き回るサンシローの姿が空中に浮かび上がる。その姿を遠い目で見ている。
「手術が終わり、篠田の手に抱かれた姿を見たときには、うれしくて震えたよ。でも名前を呼んでもサンシローは無反応だった。手術は成功したと篠田は言っているがどうしてもそうは思えなかった。俺の事が分からない……。記憶は引き継がれていない。その疑心はいつしか親分への恨みへと変化していった」
「やはり、ここにいたな……」
その場にいた全員が振り返った。そこには子分を引き連れた山岡がいた。腕にはサンシローが抱かれている。サンシローは眠っている。
佐々木は涙を拭う。その姿を見た山岡は重い沈黙の後、決心したように口を開いた。
「佐々木よ、俺は決めたよ。俺は引退する。すべての権限をお前に託す」
引き連れた子分に諭すように山岡は言った。
佐々木は浮遊している墓標に手を添える。墓標がかすかに輝く。直後、元気に動き回るサンシローの姿が空中に浮かび上がる。その姿を遠い目で見ている。
「手術が終わり、篠田の手に抱かれた姿を見たときには、うれしくて震えたよ。でも名前を呼んでもサンシローは無反応だった。手術は成功したと篠田は言っているがどうしてもそうは思えなかった。俺の事が分からない……。記憶は引き継がれていない。その疑心はいつしか親分への恨みへと変化していった」
「やはり、ここにいたな……」
その場にいた全員が振り返った。そこには子分を引き連れた山岡がいた。腕にはサンシローが抱かれている。サンシローは眠っている。
佐々木は涙を拭う。その姿を見た山岡は重い沈黙の後、決心したように口を開いた。
「佐々木よ、俺は決めたよ。俺は引退する。すべての権限をお前に託す」
引き連れた子分に諭すように山岡は言った。