日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎望郷(未来探偵ロクロ その6)

2024年03月24日 | ◎本日の想像話
 ミツオは窓ガラスを下げて須田に話しかける。
「ちょっと確認したいことがありまして。ちょうど近所を走っていたもので、もしかしたらいらっしゃるかなと思いまして」
「今日は妻と子供がいますので、家の中はご遠慮ねがいます。依頼の件は妻には内緒なのです」
「ですよね。ひとつだけお聞きしてもいいですか」
「なんでしょう」
「須田さんは、エンジニアとおっしゃていましたが、具体的にはどんな仕事になりますか」
「毎日ミツオさんは見ていますよ。はるか上空へと物資を運んでいるエレベーターの設計及び、運行の管理に携わっております」
「それは驚きました。では昨夜お聞きした日時と場所に、エリーと一緒に行きますので、どうぞよろしくお願いいたします」
 ミツオは偵察に来た事実を取り繕うことで精一杯だった。
「せっかく来ていただいたのに誠に恐縮です」
 須田は申し訳なさそうな素振りでミツオを見送った。
 ミツオが住居兼、事務所に戻るとエリーもメンテナンスを終えて帰宅していた。
「須田はいましたか」
「エリーは何でもお見通しだな。家にいたよ。でも奥さんには内緒の案件と言われた。仕事は軌道エレベーターの設計らしい」
「あれが出来て5年も経っていません。当時、ブレイクスルーの発明があって初めて完成にこじつけたと聞いています。もしかして、画期的な発明に関与しているかもしれませんね」
「そうだな。いずれにしても、ちゃちゃっとやっつけてしまおう。簡単な仕事だな」
 ミツオは夜のとばりが訪れるにつれてまた飲みに出かけようとしていた。しかし、エリーに首根っこをつかまれた。
「昨日飲んだでしょう。今夜はだめです。家で飲みましょう。何が食べたいですか」
「いたたた。分かりました。パスタでお願いします」
 ミツオはエリーにヘッドロックされながらかろうじて答えた。

コメント
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