スケルツォ 変イ長調D566/3 は、第3楽章か? 第2楽章か?
本日はこの問題を追う。
シューベルトは「変イ長調の舞踏楽章」が好きな作曲家だった。
- ソナタ第6番 ホ短調D566 スケルツォ(=D566/3)1817.06
- 楽興の時第6番 変イ長調(D780/6)1824秋以前
- ソナタ第15番 ハ長調D840「レリーク」 メヌエット(=D840/3)1825.04
- 即興曲集第2集 ヘ短調D935 アレグレット(=D935/2)1827.12
完成したD935の位置も変わっており、楽興の時では、明らかに舞踏楽章なのに終楽章にもなっている。「変則的な時」に使われることが多いように見える。
ホ短調ソナタD566 の構成は
- モデラート ホ短調 D566/1 ソナタ形式
- アレグレット ホ長調 D566/2 ソナタ形式
- スケルツォとトリオ 変イ長調 D566/3 3部形式
となっている。「2番目に終楽章が書かれた楽譜」はいくつもあり
- 弦楽四重奏曲変ロ長調 D68
- ピアノソナタ嬰ヘ短調 D571+D570
- ピアノソナタ ハ長調 D613+D612
などは、第1楽章 → 終楽章 が続けて書かれたソナタ楽曲である。
スケルツォD566/3 を「第3楽章だ!」と固定観念を持つから、無理矢理終楽章を付けようとする
これは、昨日号をお読み頂ければ、アホな顛末を理解して頂けることだろう。
ホ短調ソナタ D566 の楽章順
- 第1楽章 モデラート ホ短調 D566/1 第2稿 ソナタ形式
- 第2楽章 スケルツォとトリオ 変イ長調 D566/3 3部形式
- 第3楽章 アレグレット ホ長調 D566/2 ソナタ形式(← おそらく他のソナタの終楽章を流用)
である。 スケルツォ変イ長調D566/3 も「ソナタ ホ短調D566/1 第1稿」のために作曲されたのか? 「ソナタ 変イ長調? D557」のために作曲されたのか? これも何ともわからない。調性的には D557 に属した方が自然であるから。D557 の第1楽章と第2楽章の間、または第2楽章と第3楽章の間に挿入して聴いても、何も不自然な感じはしないだろう。(調性的には主調で終結しない違和感は相変わらず残るが)
もし、D566/2 も D566/3 も他のソナタから流用したとするならば、何をそんなに急いだのか? D571+D570 の時と同じく
次ソナタ 変ニ長調D567 が頭に浮かんで離れなかった
と推察する。「Sonate X」と誇らしげに書き、死ぬ間際には「第3大ソナタ」として大改作した上に出版にまで漕ぎ着けた自信作である。
シューベルトは後世の私たちからすると、時々とんでもないほど執着した曲がある。いくつか挙げると
- ミサ曲ハ長調 作品48 D452(第1稿1816.06-07作曲、1825.09.03出版、第2稿1828.10作曲)
- ピアノソナタ変ニ長調D567&変ホ長調D568(第1稿1817.06作曲、第2稿おそらく1828作曲)
- ピアノソナタロ長調D575(1817.08作曲、コラー嬢に作曲年を偽って捧げる)
- ミサ曲変イ長調 D678(1819.11-1822.09作曲)
などなど。この辺りの心情はシューベルト自身に尋ねてみないとわからないような気がする(爆