シューベルトピアノソナタ ハ長調D613補筆完成版詳細
本日号から、シューベルト誕生日コンサート = 1/31 に 佐伯周子 が演奏する『ソナタ ハ長調D613』を題材に「補筆完成版」の裏舞台を詳述する。
基本事項:ハ長調ソナタD613 は、1818年4月の作曲で、第1楽章ソナタ形式展開部終了(or 間際)と 終楽章ソナタ形式展開部終了まで作曲されているが、再現部とコーダが放棄されている。緩徐楽章は アダージオ ホ長調D612
第1楽章ハ長調 :呈示部「第1主題:第1-40小節 ハ長調」「第2主題:第41-86小節 変ホ長調で開始され第78小節でト長調確立」、展開部「第87-121小節 ホ長調の属七和音で終わっている」
終楽章ハ長調 :呈示部「第1主題:第1-31小節3拍目まで ハ長調」「第2主題:第31-46小節 ハ短調で開始され変イ短調へ」「第3主題:第47-92小節 ホ長調で開始され第73小節でト長調確立」、展開部「第93-125小節 ハ長調行き」
作曲順は、第1楽章 → 終楽章 → 緩徐楽章
以上が基本事項である。これまで存在した、バドゥラ=スコダ、ティリモ、バール の3名の補筆完成版の中で、抜群に出来の良い バドゥラ=スコダ補筆完成版を詳細に分析しよう。
シューベルトピアノソナタ ハ長調D613 バドゥラ=スコダ補筆完成版分析
「3楽章ソナタ」と判断した。
第1楽章:「展開部末尾6小節」「第1主題ハ長調で入り、呈示部第38小節で転調の為変化させる」「第2主題変イ長調で入り、呈示部と同じく3度上のハ長調に解決、第86小節までそのまま使用」「コーダ2小節」
終楽章:「第1主題ハ長調でそのまま使用」「第2主題ハ短調で呈示部と同じに入り、変ニ短調へ」「第3主題イ長調で開始され第73小節相当でハ長調確立」「第1主題が26小節分そのままハ長調で回帰」「コーダ13小節」
「骨格作り」については「終楽章で第1主題が最後に回帰する必要性が希薄」「終楽章コーダが長い」と感じる以外は「全てシューベルト設計通り」と感じる。つまり『シューベルト通りの方向性』なのだ。だが、実際に演奏しているCDを聴くと「ラッツ補筆完成版のD625」の出来に至っていない。なぜか? 解き明かして行く。