ロマン派大作曲家を鼓舞した シューベルト「即興曲集」第2集
シューベルト「即興曲集第2集」は、多くの作曲家に影響を与えた。最も有名なのは、シューマン。「第3番を除外した3曲でピアノソナタを構築する」と明言した。これ、ってフライングだったんだよね(爆
この曲集は、「即興曲集第1集」の初稿(D899/1,D916B,D916C)や、最終稿(D899 普通皆さんが知ってる稿)が出版とは違って、
「展開部の繰り返し」が出版されたのが、1973年の「ウィーン原典版」バドゥラ=スコダ校訂版」
である。
「ソナタ形式を自由自在に駆使する」は、ロマン派作曲家の「大テーマ」の1つ
シューベルトは、「さすらい人」幻想曲作品15D760 と 即興曲集第1集D899 で試して来たが、即興曲集第1集は「第1稿(D899/1,D916B,D916C)」は出版を拒絶されてしまった。
即興曲集第2集では、両端の曲に「ソナタ楽曲とは見抜かれないような自由なソナタ形式」を配置。出版社は見抜けなかったが、作曲家ロベルト・シューマンは「シューベルトの魔術」を見抜き、「隠されたソナタ」と評論した。
第1曲と第4曲は「自由なソナタ楽曲」で共にヘ短調。第1曲は「展開部を繰り返し無しにして再現部の後に移調して演奏するソナタ形式」、第4曲は「第2主題の再現が無いソナタ形式」。シューマンはこれを見抜き、平行調=変イ長調の第2曲と併せて「隠されたソナタ」と評論した訳である。
同じ1827年12月には、「ピアノとヴァイオリンのための幻想曲ハ長調D934」も作曲しており、幻想曲では第2楽章相当が「再現部の無いソナタ形式」、第3楽章相当が「変奏曲」、第5楽章相当が「変奏曲の第5変奏曲」になっており、第4楽章が第1楽章の再現である。全く違う感触だが、「自由なソナタ形式」を様々な方向から照らし出していたことが判る。
D935 は、第1曲は短調ながら、伸びやかな楽想が滔々と流れる大規模な曲。第2曲はトリオを持ったメヌエット。第3曲は「劇音楽ロザムンデ(1823年12月20日初演)の間奏曲第3番D797/5」を主題とする5つの変奏曲。この主題はシューベルト自身がとても気に入っており、1824年2~3月作曲の 弦楽四重奏曲第13番イ短調作品29D804 の第2楽章のロンド主題にも用いられているが、その最終曲に当たる。第4曲はヘ短調の少しおどけた曲想の第1主題と、対照的なヴァイオリンを思わせる右手の単旋律音階の変イ長調第2主題によるソナタ形式。展開部は第2主題のみが無限かと感じられるほど変容して行く。再現部は第1主題が型通り戻って来た後、第2主題が再現されずに2音づつが飛び跳ねるコーダとなり、最後にテンポを上げて終曲する。