いのち
いつだったか
深夜の山道で
危うく鹿をひき殺すところだった
急ブレーキで止まった車の前を
ゆうゆうと歩いてゆく母鹿と
そのあとを
安心しきってゆく二頭の仔鹿たち
そのふんわりとこげ茶色の毛並みをみてたら
はるか遠い昔
ガラス窓に何度もぶつかって
窓の外の青空へと
戻ろうとしていた小鳥を思い出してしまった
その小鳥を
両手で抱きかかえると
なんてふかふかのコーヒー色の
なんて柔らかな柔毛
「もうガラス窓なんかに騙されるなよ」と
高く 高く
放り投げたあとに
涙ぐんでいる自分がいた
窓
これまで
色んな雨に打たれてきた
色んな雨をみてきた
森が国ならば
一本の樹として
労災隠し事故や
トレーナーに激突事故以来
遠い連山を望む病室や
いつも湿気で曇った窓から
空ばかりを見上げてきた数年間
窓へと近寄れば
そこには蝿や蚊の多くの死があり
まるで死者の目をした
自分がガラス窓に映る
もうあれから
いくど目の秋風
窓枠に置かれたままの
窓ガラスへ激突を繰り返していた
小鳥の感触が蘇る
その小鳥が落としていった
一枚の柔毛の感触を
そっと手のひらで確かめる
いつだったか
深夜の山道で
危うく鹿をひき殺すところだった
急ブレーキで止まった車の前を
ゆうゆうと歩いてゆく母鹿と
そのあとを
安心しきってゆく二頭の仔鹿たち
そのふんわりとこげ茶色の毛並みをみてたら
はるか遠い昔
ガラス窓に何度もぶつかって
窓の外の青空へと
戻ろうとしていた小鳥を思い出してしまった
その小鳥を
両手で抱きかかえると
なんてふかふかのコーヒー色の
なんて柔らかな柔毛
「もうガラス窓なんかに騙されるなよ」と
高く 高く
放り投げたあとに
涙ぐんでいる自分がいた
窓
これまで
色んな雨に打たれてきた
色んな雨をみてきた
森が国ならば
一本の樹として
労災隠し事故や
トレーナーに激突事故以来
遠い連山を望む病室や
いつも湿気で曇った窓から
空ばかりを見上げてきた数年間
窓へと近寄れば
そこには蝿や蚊の多くの死があり
まるで死者の目をした
自分がガラス窓に映る
もうあれから
いくど目の秋風
窓枠に置かれたままの
窓ガラスへ激突を繰り返していた
小鳥の感触が蘇る
その小鳥が落としていった
一枚の柔毛の感触を
そっと手のひらで確かめる