疲れはてた時に
誰もが帰りたいという場所がある
ぼくにとってのそのひとつが
「リトル・トリー」(めるくまーる)という本
強制移住を拒否して山へと逃げたチェロキー族の末裔たちの物語。
(↓の日記で書いた合衆国の先住民抹殺政策で犠牲になった一アメリカ大陸先住民部族)
日本でいうと
山野を漂泊の民のサンカや
浜での強制奴隷労働を拒否して山奥へと逃げ延びていった
アイヌ民族の一部かもしれない
まだ子供の頃
一家揃って明治末期に北海道の山奥へと開拓に入り
もう食べるものがなくなって後は死を待つだけという祖母の家へと
干魚やらを持ってきて助けてくれたアイヌの老夫婦のおかげという
ずっと後に十何番目の末っ子として生まれた父が
子供の頃に祖母から何度も聞いた話しだという。
《やがてお父さんが口を開いた。「おまえに残してやれるものはなんにもねえ」そして低く笑った。「あの小屋はおまえにやろう。せいぜい手を温めるたきぎぐらいにしかならんじゃろうがな」息子は山に目をむけたまま答えた。「いいんだよ」
「おまえは立派なおとなじゃ。家族もおる。ああしろ、こうしろとは言わん・・・・・ただ、ご先祖から伝わった教えをしっかり守ること。それと、助けを求める人があったら、ぐずぐずせんと手を差し伸べることじゃ・・・・・
わしの時代は終った。これからはおまえの時代じゃが、どんなものにやら、わしにはわからない。どう生きたらいいか、わしにはさっぱり予想できんよ・・・・・
じゃがな、山だけはおまえに対していつまでも変わらん。そしておまえも山を愛するじゃろう。その気持ちさえありゃ、真っ正直に生きていける」
「覚えておくよ」息子は答えた。」弱々しい冬の太陽は尾根の向こうに沈み、肌を刺すような風が吹きはじめた。老人は口をきくのがやっとだった。最後に彼はこう言った。「わしは・・・・・おまえを愛しとるよ」
息子は黙ったまま腕を伸ばし、老人のやせこけた肩を抱いた・・・・・これが、祖父とお父さんといっしょに散歩して、言葉を交わした最後となった。》
誰もが帰りたいという場所がある
ぼくにとってのそのひとつが
「リトル・トリー」(めるくまーる)という本
強制移住を拒否して山へと逃げたチェロキー族の末裔たちの物語。
(↓の日記で書いた合衆国の先住民抹殺政策で犠牲になった一アメリカ大陸先住民部族)
日本でいうと
山野を漂泊の民のサンカや
浜での強制奴隷労働を拒否して山奥へと逃げ延びていった
アイヌ民族の一部かもしれない
まだ子供の頃
一家揃って明治末期に北海道の山奥へと開拓に入り
もう食べるものがなくなって後は死を待つだけという祖母の家へと
干魚やらを持ってきて助けてくれたアイヌの老夫婦のおかげという
ずっと後に十何番目の末っ子として生まれた父が
子供の頃に祖母から何度も聞いた話しだという。
《やがてお父さんが口を開いた。「おまえに残してやれるものはなんにもねえ」そして低く笑った。「あの小屋はおまえにやろう。せいぜい手を温めるたきぎぐらいにしかならんじゃろうがな」息子は山に目をむけたまま答えた。「いいんだよ」
「おまえは立派なおとなじゃ。家族もおる。ああしろ、こうしろとは言わん・・・・・ただ、ご先祖から伝わった教えをしっかり守ること。それと、助けを求める人があったら、ぐずぐずせんと手を差し伸べることじゃ・・・・・
わしの時代は終った。これからはおまえの時代じゃが、どんなものにやら、わしにはわからない。どう生きたらいいか、わしにはさっぱり予想できんよ・・・・・
じゃがな、山だけはおまえに対していつまでも変わらん。そしておまえも山を愛するじゃろう。その気持ちさえありゃ、真っ正直に生きていける」
「覚えておくよ」息子は答えた。」弱々しい冬の太陽は尾根の向こうに沈み、肌を刺すような風が吹きはじめた。老人は口をきくのがやっとだった。最後に彼はこう言った。「わしは・・・・・おまえを愛しとるよ」
息子は黙ったまま腕を伸ばし、老人のやせこけた肩を抱いた・・・・・これが、祖父とお父さんといっしょに散歩して、言葉を交わした最後となった。》