日経の報道によると郵便局員1万人削減案 金融事業低迷で労使協議へ
新型コロナの影響ではないが、新型コロナによる世界経済減速と相まって、こういった大型人員削減は、より世界経済の減速を加速してしまう。
労使合意による配置基準を設けた2013年以降、初めての基準見直しとなる。日本郵政グループは全国の郵便局に配置する局員数の見直しに向けて労働組合と協議に入る。全体の5%にあたる1万人の削減案などが浮上している。低金利による運用難やかんぽ生命保険の不適切販売問題で金融事業の収益力が落ち、人件費を抑える必要があるためだ。人口減少やデジタル化も踏まえ、業務の省人化を進める。
日本郵政グループ労働組合(JP労組)との春季労使交渉で、地域ごとに必要な人数を盛り込んだ人員の配置基準の見直しに向けた協議に入ることで一致した。2021~23年度を対象とする次の中期経営計画の合理化策の柱としたい考えだ。
郵政の取締役会は19年から非公式に郵便局のコスト削減の議論を開始。採用抑制や早期退職による1万人の削減案などが挙がる。郵政グループ全体の従業員は民営化した07年度末から7%減にとどまっており、短期間で5%削減すれば大幅な加速となる。
これまで郵政グループは金融事業が収益の柱になってきたが、かんぽ問題や低金利による運用収入の減少で収益の先細りが避けられない。
全国2万4千局の郵便局網をゆうちょ銀行、かんぽ生命の金融2社からの年1兆円の委託手数料で維持しており、両社とも手数料の減額を求めて日本郵便と交渉している。かんぽからの手数料は20年度、ゆうちょは21年度から大きく減る可能性がある。郵政の増田寛也社長は郵便局網を維持する方針で、人員削減によるコスト抑制が急務だ。
手紙やはがきなどの郵便物は減少が続く。デジタル化や人口減で窓口に来る顧客も減った。全体の業務量も減る傾向にあり、会社側は業務を効率化すれば人数を絞っても事業運営に支障は出ないとみている。
アルバイトなどの臨時従業員を除く日本郵便の18年度末の従業員は19万2889人。持ち株会社の郵政、ゆうちょ銀、かんぽ生命を合わせた21万5412人のグループ全体の9割を占める。現在の従業員数はほぼ配置基準通りだという。
郵政は07年に民営化し、13年に労使合意による配置基準を設けた。保険や貯金の取扱額、郵便物数といった業務量をもとに地域ごとに必要な人数をはじいたもので、基準に沿って採用や希望退職で人数を調整する。見直しは初めてとなる。
配置基準ができた13年度以降は1%しか減っていない。年2.6兆円の人件費が重くのしかかる。NTTグループは1985年の民営化から20年間で3分の1にあたる10万人程度を減らした。郵政グループ幹部は「民営企業らしく合理化する必要がある」と語る。
協議の行方はみえないが、JP労組もこのままでは郵政グループの全国一律サービスが立ち行かなくなるという危機感を会社側と共有している。