過去最大の洪水となった重慶市では道路や商業施設などが水没した(20日)
【重慶=多部田俊輔】中国で大雨による洪水被害が拡大している。長江中流の三峡ダムは水位が22日にもピークに達する見通しで、当局や企業は警戒を強めている。上流の四川省や重慶市では洪水が過去最大規模となった。400万人近くが被災し、四川省の経済損失は2500億円に達した。日本通運は鉄道での代替輸送に切り替えた。
「困っていることがあれば言ってください。みんなで団結して天災に打ち勝ちましょう」。李克強(リー・クォーチャン)首相は重慶市中心部から車で北西に約2時間かかる潼南区の長江支流を視察し、被災者らに声をかけた。
長江中流は増水が続く。三峡ダムの入水量は毎秒7万5千立方メートルに達した。中国当局は19日時点で、22日に水位がピークの165メートルになると予測している。一段の水位上昇を避けるため、20日に従来より1カ所多い11カ所の水門から放水し、放水量も過去最大の毎秒4万9千立方メートルに引き上げた。
三峡ダムは2006年5月に完成し、上海市、浙江省、安徽省、広東省などに電力を幅広く提供している。ダムの高さは185メートルで、当局は警戒を強めている。李首相の重慶での被災地視察で、中国政府は被災者対応や三峡ダムの管理強化、経済復興を急ぐ姿勢を示した。
長江沿いには日本企業が多く進出し、上海や広東省などと部品や製品などの輸送が多い。日系企業などの輸送を手掛ける日本通運は「長江の河川輸送が一部区間で停止になったほか、一部で道路が水没したのを受け、鉄道などで代替輸送している」という。
一方、重慶などの自動車や電機の主力工場は長江から離れた高台に位置することが多いため、操業などに影響は出ていないもよう。日本企業では重慶に拠点を持ついすゞ自動車、川崎重工業、日鉄エンジニアリングは「生産などに影響は出ていない」としている。
冠水した道路の上を走るモノレール(重慶市、20日)
長江上流の重慶は1981年を上回る史上最高水位の洪水となり、26万人余りが被災した。長江などに面する道路が浸水し、商業施設など2万店舗が被害にあった。ただ、20日午前をピークに水位は下がり始めている。
四川省では成都市や楽山市など20近くの市や自治州で341万人が被災し、農作物や商業施設などの直接的な経済損失は164億元(2500億円)に達した。甘粛省でも12万人以上が被災し、3億元以上の経済損失が出たという。