「静」
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「靜如林」(静かなること林の如し)
静寂の境地。何が静かか。
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「閑(しず)かさや岩にしみいる蝉の声」 芭蕉
芭蕉ならではのこの一句。「奥の細道」の旅で、初案から三案の推敲を経てこの句に行きついたと言う。
①「山寺や石にしみつく蝉の声」
②「さびしさの岩にしみこむ蝉の声」
③「さびしさや岩にしみこむ蝉の声」
そして完成したのが、「閑(しず)かさや岩にしみ入る蝉の声」
我ら凡人ならば、一句目で良しとするところ。
染み入るとは、色がしみこむ、かおりがうつるで、心にまで深く感じ入る世界。
一方、薄い蝉の羽の連想から「衣」の仕事に携わるものは、「夏衣」の、「絽」や、「紗」の薄絹に心をはせる。(無粋な職業意識か)
「蝉の羽のひとえに薄き夏衣なればよりなむものにやはあらむ」
凡河内自躬恒 (『古今集』巻十九雑体、一〇三五)
拾っては見たが、浅学の身でよくわからん。(無責任)(各自自習せよ)
ようは、「蝉の羽」は、「薄し」、「衣」、「一重」にかかる枕詞として用いられるということじゃテ。
さてさて。
このうだるような暑さ、せめて「涼」の字の入った句を探そう。
「蝉涼し朴の広葉に風の吹く」 河東碧梧桐
「蝉涼し絵馬の天神身を横に」 松本たかし