茜色(あかねいろ)
赤を指す茜色は、大昔から知られていた植物染料、アカネは赤い根ということで、アカネ草の根が茜染めに使われてきた。
アキアカネは、赤とんぼのこと。
秋空に飛ぶ赤とんぼ、日本の秋の風物詩。胴体の赤いトンボは、♂
「洞然(とうぜん)と大戦了(おわ)り赤蜻蛉」 瀧井孝作
焼け野原になった終戦の年の秋にも赤蜻蛉飛んでいたのであろう。
「赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり」 正岡子規
「肩に来て人懐かしや赤蜻蛉」 夏目漱石
赤蜻蛉を秋茜というくらいだから、日本の赤の原点は茜色か。
日本の基本色名は、茜からきた赤で、漢字の国の中国では、赤は紅(ホン)になる。
アカネの根の染汁に糸を染めて赤くするには、くり返し染める手間が大変だったらしい。茜よりももっと赤く染められる紅花(べにばな)からとられた植物染料の色が、紅の字で表され「くれない」と呼んだ。
韓紅、唐紅と「からくれない」。呉の国の渡来染料「呉藍」(くれない)である。この場合の藍は藍色でなく、染料のことである。
この紅に対し、茜は藍と並んで人類最古の染料といわれてきている。
茜は日本の山野にも自生している蔓草で、その根は黄赤色している。この東洋茜に対しヨーロッパには西洋茜がある。英語でマダー、フランス語でガランスといわれ品種改良により綺麗な紫みの赤を18世紀になって染められるようになったそうだ。
「あかねさす紫野行き標野ゆき野守は見ずや君が袖振る」は、万葉集巻の1 額田王の歌はあまりにも有名で、いまさら引く事もないが、色づくさまや、「日」、「紫」にかかる枕詞である。