国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

中東TODAYの佐々木良昭氏の分析から考えるトルコ情勢の今後

2007年06月14日 | トルコ系民族地域及びモンゴル
中東TODAYの佐々木良昭氏が最近、緊迫の度合いを深めたトルコ情勢を頻繁に取り上げている。陰謀論を幾つか取り上げていること、トルコにとってのハッピーエンドシナリオを取り上げていることが注目される。ただ、彼は名のある中東専門家であるが故に、トルコでこれから起きようとしているシナリオの真実を全て書き記すことは許されていないだろう。 かつてクルディスタンがオットマン皇帝の個人資産であったことを理由にトルコが領有権を主張しても国際社会は絶対に受け入れないだろう。佐々木氏の発言は全くの空想論であるが、これはトルコがイラク北部を占領し併合する根拠の乏しさを示していると思われる。 また、米国やイラクがトルコの派兵を望むことはあり得ない。派兵があり得るとすれば、サウジアラビアを中心とするスンニ派アラブ諸国と、イランを中心とするシーア派勢力であろう。佐々木氏は専門家とは思えない杜撰なコメントを行っているが、これはトルコ軍が自重しても北イラクのクルド人の独立は阻止できないことを言いたいのではないか。 「宗教国家化という間違ったトルコのイメージを世界に伝えることで誰が利益を得るのか」という問いについては、これはEU市民へのメッセージだと思う。つまり、大部分のトルコ人は非世俗的でありEU加盟の資格はないとEU市民に訴えて、将来人口が一億を越える大国トルコ全体がEUに加盟する可能性をなくす目的だろう。その一方で、イスタンブールやイズミルなどの一部地域に限定して宗教国家化反対のデモ活動が政府によって計画され、ウクライナのオレンジ革命に類似した国内対立が来るべき7月22日のトルコの総選挙前後に演出されるシナリオを想像する。 「トルコ側にクルド人のテロの支援者がいるのではないか」という陰謀論に私は同意する。しかし、「トルコはイラクと本格的戦争をやる気はない」という分析には同意しない。私の予想は、以前から述べている様に、イスタンブールやイズミルに住む西洋的顔貌を持ち世俗的で所得の高いトルコの中核階層をトルコから切り離してEUに加盟させるという陰謀シナリオだ。そしてその為に、トルコがクルド人問題で破滅的な戦争に突入しわざと敗北して滅亡するという戦略が準備されていると予想する。 . . . 本文を読む
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