国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

女性の髪を隠すか隠さないか:トルコで起きている文明の衝突

2008年02月13日 | トルコ系民族地域及びモンゴル
女性の髪を隠すか隠さないかは欧米文明とイスラム文明の相違点の象徴である。現在トルコで起きているスカーフを巡る議論は、欧米文明の影響下に置かれ世俗化したトルコ支配階層と、イスラム文明に所属し世俗化していない一般住民(トルコ人+クルド人)の間の対立を深刻化させており、これは欧米とイスラムの二大文明の衝突に他ならない。具体的には、支配階層の多く居住するイスタンブール・イズミル・アンカラの三大都市とその他の地域の対立と言うことになるが、これらの大都市にもクルド人や一般のトルコ人が多数居住していることが問題を複雑化させている。世俗派と宗教原理派の混住というこの現状は、カトリック・セルビア正教・イスラム教の三宗教の教徒が混住していた内戦前のボスニア・ヘルツェゴビナに類似している様に思われる。 以前から述べているとおり、トルコの支配階層はトルコという国を複数(おそらく三つ)に分裂させることを狙っている様に思われる。分裂の理由は一つはクルド人かトルコ人か、そしてもう一つは世俗派か宗教原理派かである。トルコ政府はクルド民族を認めず分離運動を弾圧することで逆にクルド人の分離独立の意志を煽っている様に思われる。近未来にイラク北部に石油で潤う富裕なクルド国家が誕生すれば、トルコ国内のクルド人はその引力に引かれて分裂することだろう。そして、もう一つの分裂は世俗派トルコ人と宗教原理派トルコ人の間で煽られている。これによって、トルコの支配階層はクルド人と宗教原理派トルコ人という二つの不良資産をリストラして、富裕かつ世俗的な支配階層だけから成る小国を作り出すことを狙っているのだろう。 トルコの分裂は旧ソ連の中央アジアとも類似した状況を作り出すと思われる。最も奥地にありペルシャ系のタジキスタンに相当するのがクルド人国家であり、ロシアの影響が強く世俗的なカザフスタンに相当するのが世俗派トルコ人国家、ロシアの影響力が相対的に弱いウズベキスタンやトルクメニスタンに相当するのが宗教原理派トルコ人国家になる。このようにして生まれる複数の国家はキリスト教圏とアラブ圏・ペルシャ圏の間の緩衝国家として有効に機能することだろう。私は、トルコの分裂は欧州(独仏連合)が裏で筋書きを書いており、将来世俗派トルコ国家だけはEUに加盟させることでトルコ支配階層と話がついているのではないかと想像している。 . . . 本文を読む
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