「それじゃ、私たちのカモの話に戻ろうか」と彼は続けた。「つまり、カジミールのことだ。私が立ち去った後、お前はあの馬鹿者に何をしてやった?」
「まず最初にですね、あの男の酔いを醒まさせました。けど、それが簡単じゃありませんでしたよ……あの野郎ったらもう、どんだけ酒を飲んだんだか……ようやく何とか普通に口がきけて、ちゃんと立てるようにしてから、ド・シャルース邸まで送って行きました……」
「ああ、そうか、それはよかった。しかし、お前、あのアホ男と何か仕事上の取り引きをしてたんじゃなかったのか?」
「その点なら抜かりはありません……契約書にはちゃんとサインがしてあります。伯爵のためには最高の葬式になりますよ。極上の霊柩車、六頭立て、半ズボンの葬祭委員、二十四台の馬車を連ねた葬列、そりゃもう夢のような景色ですよ。見物料を払っても人が見に来るような!」
フォルチュナ氏は人が好さそうにほほ笑んだ。
「ほう、そうなのか! それじゃ、お前の懐にもたんまり転がり込むんだろうな」と彼は言った。
シュパンは委託業務ごとに手数料を貰う方式で働いているので、自分の時間や能力をどういう仕事に使うかは自分で決められるのだったが、フォルチュナ氏は部下が自分の下以外で金を稼ぐことを快く思っていないことはよく知られていた。従って、彼がこのように寛大な態度を示すことにシュパンは大いに驚き、警戒心を目覚めさせた。
「そうっすね、何スーかの稼ぎにはなります」と彼は控え目に答えておいた。「そいでもって、うちのおっ母さんが鍋に入れる食物が多少は増える程度に」
「それはでかした!」フォルチュナ氏は尚も褒めそやした。「使い方を心得ている人たちの手にお金が渡るのを見るのは素敵なことだ……それでだ、お前のところに仕事を一つ持ってきたんだ。お前が引き受けてくれて、上手くやりおおせれば、かなりの金になるという仕事だ」
シュパンの目がパッと輝いたがすぐに消えた。一瞬の光に過ぎなかった。喜びのすぐ後に警戒心が生まれたのだ。彼の雇い主であるフォルチュナ氏は常に厳格で融通のきかない人間であるのに、わざわざ不便を圧して出向いてきて、七階までの階段を上ってきた目的が、彼に金を儲けさせるためというのは異様なことだと彼には思えた。これは怪しい。なにかが隠されているに違いないと彼は思った。よく注意して見極めねばならない。しかし彼は自分の感情を隠すすべを心得ていたので、この上なく嬉しそうに叫んだ。
「え? 何なんですか? 金が稼げるですって? 今ですか? で、一体何をすりゃいいんですか?」12.28