あなたは僕のお母さんなんでしょ? お母さんが何をしてきたか、そんなこと僕には関係ありません。僕はね、人の意見なんて気にしないんです。僕はまず自分の好きなようにやる。その後で他の人に相談するんです。それじゃ気に入らないっていう人にはこう言うんです。いいから黙っててくれないか、ってね」
マダム・ダルジュレは喜びにうっとりしながら息子の言葉を聴いていた。彼の言葉遣いの奇妙さに違和感を覚え、なにか気がついてもよさそうなものだったが、残念ながらそうはならなかった。彼女の目は何も見ず、ただ一つのことしか頭になかった。息子が自分を撥ねつけたりせず、立派に自分を受け入れてくれたということ、自分のために身を捧げてくれるのだということしか……。
「ああ神様!」と彼女は呟いていた。「これは本当に現実のことでしょうか? ……私はこれからあなたと一緒に生きていっていいの? ああ、急いで答えなくていいのよ。そのためにどんな犠牲を払わなくてはいけないか、よくよく考えてからでいいのよ……」
「すべて考えた上でのことです、お母さん!」
彼女は感激と希望で身体を震わせながら立ち上がった。
「それなら私たちは救われたのね!」と彼女は叫んだ。「あなたに私の秘密を教えた人に幸あれと祈るわ! それなのに私ったらあなたの勇気を疑っていたのよ、ウィルキー! これで私の地獄が終わるわ! 早速今夜にでも私たち二人でこの舘を出ましょう。そして二度と振り返らないのよ。私はもう二度とこの自分のサロンには足を踏み入れないわ。あの嫌な賭け事師たちはもう私を見ることはない。リア・ダルジュレは死んだのよ」
ウィルキー氏は甘い夢から突然現実に突き戻されたような顔になった。
「え、なん、何ですって、ここを出るって!」彼はどもりながら言った。「で、どこへ行くっていうんです?」
「誰も私たちのことを知らない国に行くのよ、ウィルキー、私のことであなたが恥ずかしい思いをすることのない場所へ……」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ……僕が言ったのは……」
「私にお任せなさい、息子よ……ロンドンの郊外にとても気持ちの良い村があるのを知っているの。そこに住む家を見つけましょう。私にはイギリスにたくさん知り合いがいるから、よそ者には冷たいと言われるイギリスでも何も心配することはないわ。2.26
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